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2026.07.16

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〝長距離ランナーの聖地〟水上村(熊本県) 『O2Room®』の導入でさらにパワーアップ、人口1800人の村にひと夏で1万人のアスリートがやってくる
〝長距離ランナーの聖地〟水上村(熊本県) 『O2Room®』の導入でさらにパワーアップ、人口1800人の村にひと夏で1万人のアスリートがやってくる

標高約1000mの場所にある「水上スカイヴィレッジ」は2017年5月にオープン。夏場は多くの長距離ランナーがトレーニングに訪れる

夏場に長距離ランナーが集まる九州の〝聖地〟がある。それが熊本県の水上村だ。クロスカントリーコースなどがある「水上スカイヴィレッジ」と、日本気圧バルク工業の『O2Room®』2台(低圧低酸素ルーム、高気圧酸素ルーム)を擁するトレーニング場の「水上サクラヴィレッジ」があり、夏合宿のメッカになっている。この8月にはスポーツサイエンスセンター「KMバイオロジクス RUNNEST」がオープン予定。新たに『O2Room®』2台を導入した。地方創生で注目の水上村がさらに脚光を浴びそうだ。

自然豊かな熊本の山里に1万人のアスリートが集まる

学生駅伝界の雄・青山学院大学のユニフォームにロゴが入っていたこともあり、「水上村」を知っている長距離ファンは少なくないだろう。水上村は熊本県南部の球くま磨郡に位置し、日本三急流「球磨川」の源流がある自然豊かな山里だ。

以前は農林業が盛んで、ピーク時には約7400人の村民が生活していた。しかし過疎化が進んで現在の人口は1800人ほどだが、近年は長距離ランナーの新たな〝聖地〟として注目されている。

熊本県の南東部に位置する水上村は、宮崎県との県境にある

村で開催していた公認奥球磨ロードレース大会に参加したランナーたちが、水上村の澄んだ空気や自然環境に感動し、「こんな場所でトレーニングができれば最高だ」という声を上げたのがきっかけだった。

村は「地方創生」の柱として「スポーツ合宿の郷づくり」に注力。国や県の補助金も利用しながら約5億円を投じ、2017年5月にクロスカントリーコースなどがある「水上スカイヴィレッジ」をオープンさせた。

2021年3月にはトレーニング施設のある「水上サクラヴィレッジ」も完成。村内の旅館や民宿に呼びかけて合宿の誘致活動を本格化させた。

車で福岡市から約3時間、熊本市から約2時間、鹿児島市から約2時間と九州全土からアクセスできることもあり、実業団、大学、高校の強豪チームが合宿地として水上村を選ぶようになった。今では、ひと夏で1万人ものアスリートが訪れる〝スポーツ合宿のメッカ〟になっているのだ。

標高1000mにあるクロカンコース「水上スカイヴィレッジ」が最大の魅力

最初に完成した「水上スカイヴィレッジ」は、ホテルや民宿が集まる湯山温泉郷から約8km離れた場所にある。

バルセロナ五輪男子マラソン銀メダリストでトヨタ自動車九州陸上部監督の森下広一氏や九州の駅伝強豪校の監督が監修を務めており、専門家の知見と抜群の環境を生かした魅力的な〝コース〟が充実している。

まず標高約1000mという高地の利点を最大限に引き出した本格的なクロスカントリーコースだ。自然豊かな高原内に1周2㎞~0.5㎞のコースが4つあり、最大42mの高低差がある。「選手ファーストのクロスカントリーを作ったかたちです」と水上村役場地方創生推進課の担当者も胸を張る完成度だ。

4つのコースでクロスカントリーが実施でき、夏場の走り込みでの〝脚作り〟に最適な場所だ

他にも全天候型300mトラック、クラブハウス、更衣棟、アイシングプールを完備。近くの市いちふさ房ダムの湖畔には13.4kmの周回コースもあり、多様なトレーニングを行うことができる。

300mの全天候トラックでスピード練習が行えるのも魅力

クロスカントリーコース場の8月の平均気温は22.0度(最高気温30.5度、最低気温13.5度)。午前中や夕方は非常に涼しい。標高約1000mの場所で走り込むことで「準高地トレーニング」の効果も期待できる。

また、熊本県で唯一の「森林セラピー基地」にも認定されており、新鮮な空気がランナーたちの癒しになっているようだ。

水上村の中心部に近い市房ダムの湖畔は、1周13.4kmのランニングコースとしても活用できる

トレーニング施設「サクラヴィレッジ」に『O2Room®』を導入

湯山温泉郷内にある「水上サクラヴィレッジ」はアスリートのためだけでなく、村民の健康・体力増進を目的にオープン。新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用して整備された。

日本家屋の母屋が印象的で、本格的なトレーニングジムと25m温泉プール、それから低圧低酸素ルームと高気圧酸素ルームが完備されている。室内施設のため、夏の日中でも快適にトレーニングやケアができると好評だ。

2021年3月にオープンしたトレーニング施設「水上サクラヴィレッジ」は日本家屋の母屋が印象的

「水上サクラヴィレッジ」は最新のトレーニングマシーンがずらりと揃い、2台の『O2Room®』は奥に設置されている(左)。屋根付きの25m温泉プールも完備。脚を故障しているランナーがここで水中ウォーキングに励むこともしばしば

低圧低酸素ルームと高気圧酸素ルームは、酸素ルーム業界のパイオニアである日本気圧バルク工業の『O2Room®』を導入している。水上村の担当者は、「似たような商品が多くあるなかで悩んだ」そうだが、熊本保健科学大学の教授や理学療法士などからもヒアリング。

トヨタ自動車、旭化成、資生堂、東洋大学、創価大学などの長距離強豪チームが導入している日本気圧バルク工業を選定した。そして、同社代理店である株式会社MLT(宮崎県宮崎市)の榎木祐介社長を通じて、具体的なタイプを決めたという。

「低圧低酸素ルームは故障した選手もバイクを漕ぐなど、持久力が落ちないようにトレーニングを積むことができます。また、低圧低酸素という〝本当の高地環境〟でトレーニングできるのもメリットです」(榎木氏)

(左写真)「水上サクラヴィレッジ」で活用されている低圧低酸素ルーム(右側)と高気圧酸素ルーム。いずれも内部にはエアコンが設置されていて快適な環境だ。/(右写真)今年8月にオープンするスポーツサイエンスセンター「KMバイオロジクスRUNNEST」に2台導入された高気圧酸素ルーム

常圧低酸素は低圧低酸素と比較してヘモグロビンの増加に影響しないという報告があり、「自然界にない環境で心配だ」という声もある。一方、低圧低酸素ルームを活用することで、標高3000mまでの環境下での本格的な高地トレーニングが可能になるのだ。

高気圧酸素ルームに関しては、「一番は疲労回復がキーポイントです。しっかりトレーニングをして、酸素ルームでしっかり回復させる。そして、翌日もしっかりトレーニングできるという好循環が生まれます」と榎木氏は話す。

高気圧酸素には疲労回復だけでなく、睡眠の質の向上、自律神経の安定、ケガの治癒促進などもある。ハードなメニューが続く夏合宿には欠かせないものになっているようだ。

『O2Room®』は中学生から高齢者も活用

水上村としては「アスリートだけでなく、住民にもいいのか?」をポイントにしていたが、導入した『O2Room®』は村民の評判も良好のようだ。

「住民の中でもスポーツをされている方が多いんです。低圧低酸素ルームは20~30代の市民ランナーの方がトレッドミルでトレーニングをしています。高気圧酸素ルームは疲労回復の目的で使われている方が多いですね。中学生から高齢者まで幅広い年齢層の方に使っていただいています」(水上村役場地方創生推進課の担当者)

「水上サクラヴィレッジ」には大型の低圧低酸素ルーム(手前)と中型の高気圧酸素ルーム(奥)が並んでいる

低圧低酸素ルームはアスリート向けだが、標高の高いところに住む高地民族は長寿者が多く、血管が拡張して血圧上昇が抑制され、基礎代謝の亢進につながると考えられている。高気圧酸素ルームはアンチエイジングにも効果的だ。『O2Room®』は市民の健康増進にも寄与しており、特に高齢者の多い地域にはピッタリの健康器具と言えるかもしれない。

低圧低酸素ルームは高さ2300mm、幅2000mm、奥行き3000mmの「フリータイプ」で、同時に10~20人が使用できる広さ。中にはトレッドミルと固定式バイクがあり、自然界の高地と同じ環境で持久力強化ができる

「日本気圧バルク工業は数々の大学や病院と共同研究によって得た多くのエビデンスを基に製品を造っていることで高い信頼を得ており、これらの機器があることでスポーツ合宿施設としての価値が高まっていくはずです。それに『O2Room®』は自社開発・自社製造しています。他社製はメンテナンスが大変で、追加費用がとてもかかるという話を聞いていますが、日本気圧バルク工業の『O2Room®』は販売開始から30年以上、事故や大きな故障もなく、安心・安全なところが持ち味です。納品してからのサポート体制も非常に優れています」(榎木氏)

『O2Room®』は大型タイプも含めたすべてのラインナップが家電製品と同じ100V電圧で動き、ランニングコストがとても低いのも魅力になっている。

高気圧酸素ルームは高さ1800mm、幅1200mm、奥行き2250mmの「ブレッドA-タイプM」で、同時に5~6人で入れる広さ。中ではテレビを見ながらくつろぐことができ、トレーニングの疲労回復や睡眠の質の向上のために利用する人が多い

スポーツサイエンスセンターが今年8月にオープン

充実のスポーツ環境を整えている水上村だが、近年は「宿舎不足」が課題になっていた。

そこで、新たな施設を計画している。水上サクラヴィレッジから1kmほど離れた場所にスポーツサイエンスセンター「KMバイオロジクス RUNNEST」を今年の8月上旬にオープンさせる予定なのだ。

「スポーツ環境整備プロジェクト」の一環で、廃校となった小学校を活用。アスリート向けの合宿施設に転換する。最大150人が滞在できる宿泊所があるだけでなく、「スポーツサイエンス事業」、「食育事業」、「健康睡眠事業」も展開。アスリートの健康増進やコンディショニングを強力にサポートしていくのだ。

廃校となった小学校の校舎をリニューアルしたスポーツサイエンスセンター「KMバイオロジクス RUNNEST」が今年8月にオープン。熊本保健科学大学の研究者の協力を受けながら運営していく

「KMバイオロジクス RUNNEST」を上空から見た様子。白いタマゴ型の建物は体育館。右側のグラウンドが来年、400m全天候型トラックになる

選手のフォームを解析する機器、骨密度や乳酸値の計測器など、熊本保健科学大学の研究者が合宿で訪れた選手を計測。

そのデータを解析して、選手へのフィードバックを実施していくという。また、マッサージ器や整骨院などリカバリーを目的にした部屋もあり、日本気圧バルク工業の高気圧酸素ルームも2台導入する。

「KMバイオロジクス RUNNEST」に設置された2台の高気圧酸素ルームは合宿に訪れるスポーツ選手だけでなく、地域住民の健康増進のためにも利用していく。こちらも「水上サクラヴィレッジ」にあるものと同じ「ブレッドA-タイプM」で、同時に5~6人で入ることができる

「夏合宿中は1日に40~50km走るチームも少なくありません。日々、しっかり疲労回復をし、故障なく練習を継続して結果を出してほしいと思っています」(榎木氏)

これらの施設は地域住民も対象にしており、「水上村の全住人を年1回計測するなど、住民のデータ解析もしていきたい」と担当者は話している。

他にも広々とした体育館があり、隣接する敷地内には全天候型400mトラックが2027年中にオープン予定で、今後は陸上の短距離やサッカーだけでなく、バスケットボールや卓球など室内競技チームの合宿誘致も進めていく方針だ。

「KMバイオロジクス RUNNEST」の敷地内に来年完成予定の400m全天候型トラックのイメージ図。このトラックができることで陸上の短距離選手や他のスポーツの合宿誘致が加速していきそうだ

合宿誘致やアスリート支援などスポーツを通じた地方創生に取り組んできた水上村。昨夏は約1万人ものアスリートが水上村を訪れているが、さらに充実した施設の完成を契機に「2~3倍に増やしていきたい」と担当者は意気込んでいる。

地方創生を加速させるだけでなく、アスリートたちの「水上村から世界へ」という大きな夢が実現するかもしれない。

※この記事は『月刊陸上競技』2026年8月号に掲載しています

※タイトルに誤りがありましたため、修正しました。

夏場に長距離ランナーが集まる九州の〝聖地〟がある。それが熊本県の水上村だ。クロスカントリーコースなどがある「水上スカイヴィレッジ」と、日本気圧バルク工業の『O2Room®』2台(低圧低酸素ルーム、高気圧酸素ルーム)を擁するトレーニング場の「水上サクラヴィレッジ」があり、夏合宿のメッカになっている。この8月にはスポーツサイエンスセンター「KMバイオロジクス RUNNEST」がオープン予定。新たに『O2Room®』2台を導入した。地方創生で注目の水上村がさらに脚光を浴びそうだ。 自然豊かな熊本の山里に1万人のアスリートが集まる 学生駅伝界の雄・青山学院大学のユニフォームにロゴが入っていたこともあり、「水上村」を知っている長距離ファンは少なくないだろう。水上村は熊本県南部の球くま磨郡に位置し、日本三急流「球磨川」の源流がある自然豊かな山里だ。 以前は農林業が盛んで、ピーク時には約7400人の村民が生活していた。しかし過疎化が進んで現在の人口は1800人ほどだが、近年は長距離ランナーの新たな〝聖地〟として注目されている。 [caption id="attachment_211958" align="alignnone" width="800"] 熊本県の南東部に位置する水上村は、宮崎県との県境にある[/caption] 村で開催していた公認奥球磨ロードレース大会に参加したランナーたちが、水上村の澄んだ空気や自然環境に感動し、「こんな場所でトレーニングができれば最高だ」という声を上げたのがきっかけだった。 村は「地方創生」の柱として「スポーツ合宿の郷づくり」に注力。国や県の補助金も利用しながら約5億円を投じ、2017年5月にクロスカントリーコースなどがある「水上スカイヴィレッジ」をオープンさせた。 2021年3月にはトレーニング施設のある「水上サクラヴィレッジ」も完成。村内の旅館や民宿に呼びかけて合宿の誘致活動を本格化させた。 車で福岡市から約3時間、熊本市から約2時間、鹿児島市から約2時間と九州全土からアクセスできることもあり、実業団、大学、高校の強豪チームが合宿地として水上村を選ぶようになった。今では、ひと夏で1万人ものアスリートが訪れる〝スポーツ合宿のメッカ〟になっているのだ。 標高1000mにあるクロカンコース「水上スカイヴィレッジ」が最大の魅力 最初に完成した「水上スカイヴィレッジ」は、ホテルや民宿が集まる湯山温泉郷から約8km離れた場所にある。 バルセロナ五輪男子マラソン銀メダリストでトヨタ自動車九州陸上部監督の森下広一氏や九州の駅伝強豪校の監督が監修を務めており、専門家の知見と抜群の環境を生かした魅力的な〝コース〟が充実している。 まず標高約1000mという高地の利点を最大限に引き出した本格的なクロスカントリーコースだ。自然豊かな高原内に1周2㎞~0.5㎞のコースが4つあり、最大42mの高低差がある。「選手ファーストのクロスカントリーを作ったかたちです」と水上村役場地方創生推進課の担当者も胸を張る完成度だ。 [caption id="attachment_211962" align="alignnone" width="800"] 4つのコースでクロスカントリーが実施でき、夏場の走り込みでの〝脚作り〟に最適な場所だ[/caption] 他にも全天候型300mトラック、クラブハウス、更衣棟、アイシングプールを完備。近くの市いちふさ房ダムの湖畔には13.4kmの周回コースもあり、多様なトレーニングを行うことができる。 [caption id="attachment_211964" align="alignnone" width="800"] 300mの全天候トラックでスピード練習が行えるのも魅力[/caption] クロスカントリーコース場の8月の平均気温は22.0度(最高気温30.5度、最低気温13.5度)。午前中や夕方は非常に涼しい。標高約1000mの場所で走り込むことで「準高地トレーニング」の効果も期待できる。 また、熊本県で唯一の「森林セラピー基地」にも認定されており、新鮮な空気がランナーたちの癒しになっているようだ。 [caption id="attachment_211960" align="alignnone" width="800"] 水上村の中心部に近い市房ダムの湖畔は、1周13.4kmのランニングコースとしても活用できる[/caption] トレーニング施設「サクラヴィレッジ」に『O2Room®』を導入 湯山温泉郷内にある「水上サクラヴィレッジ」はアスリートのためだけでなく、村民の健康・体力増進を目的にオープン。新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用して整備された。 日本家屋の母屋が印象的で、本格的なトレーニングジムと25m温泉プール、それから低圧低酸素ルームと高気圧酸素ルームが完備されている。室内施設のため、夏の日中でも快適にトレーニングやケアができると好評だ。 [caption id="attachment_211650" align="alignnone" width="800"] 2021年3月にオープンしたトレーニング施設「水上サクラヴィレッジ」は日本家屋の母屋が印象的[/caption] [caption id="attachment_211652" align="alignnone" width="800"] 「水上サクラヴィレッジ」は最新のトレーニングマシーンがずらりと揃い、2台の『O2Room®』は奥に設置されている(左)。屋根付きの25m温泉プールも完備。脚を故障しているランナーがここで水中ウォーキングに励むこともしばしば[/caption] 低圧低酸素ルームと高気圧酸素ルームは、酸素ルーム業界のパイオニアである日本気圧バルク工業の『O2Room®』を導入している。水上村の担当者は、「似たような商品が多くあるなかで悩んだ」そうだが、熊本保健科学大学の教授や理学療法士などからもヒアリング。 トヨタ自動車、旭化成、資生堂、東洋大学、創価大学などの長距離強豪チームが導入している日本気圧バルク工業を選定した。そして、同社代理店である株式会社MLT(宮崎県宮崎市)の榎木祐介社長を通じて、具体的なタイプを決めたという。 「低圧低酸素ルームは故障した選手もバイクを漕ぐなど、持久力が落ちないようにトレーニングを積むことができます。また、低圧低酸素という〝本当の高地環境〟でトレーニングできるのもメリットです」(榎木氏) [caption id="attachment_211654" align="alignnone" width="800"] (左写真)「水上サクラヴィレッジ」で活用されている低圧低酸素ルーム(右側)と高気圧酸素ルーム。いずれも内部にはエアコンが設置されていて快適な環境だ。/(右写真)今年8月にオープンするスポーツサイエンスセンター「KMバイオロジクスRUNNEST」に2台導入された高気圧酸素ルーム[/caption] 常圧低酸素は低圧低酸素と比較してヘモグロビンの増加に影響しないという報告があり、「自然界にない環境で心配だ」という声もある。一方、低圧低酸素ルームを活用することで、標高3000mまでの環境下での本格的な高地トレーニングが可能になるのだ。 高気圧酸素ルームに関しては、「一番は疲労回復がキーポイントです。しっかりトレーニングをして、酸素ルームでしっかり回復させる。そして、翌日もしっかりトレーニングできるという好循環が生まれます」と榎木氏は話す。 高気圧酸素には疲労回復だけでなく、睡眠の質の向上、自律神経の安定、ケガの治癒促進などもある。ハードなメニューが続く夏合宿には欠かせないものになっているようだ。 『O2Room®』は中学生から高齢者も活用 水上村としては「アスリートだけでなく、住民にもいいのか?」をポイントにしていたが、導入した『O2Room®』は村民の評判も良好のようだ。 「住民の中でもスポーツをされている方が多いんです。低圧低酸素ルームは20~30代の市民ランナーの方がトレッドミルでトレーニングをしています。高気圧酸素ルームは疲労回復の目的で使われている方が多いですね。中学生から高齢者まで幅広い年齢層の方に使っていただいています」(水上村役場地方創生推進課の担当者) [caption id="attachment_211967" align="alignnone" width="800"] 「水上サクラヴィレッジ」には大型の低圧低酸素ルーム(手前)と中型の高気圧酸素ルーム(奥)が並んでいる[/caption] 低圧低酸素ルームはアスリート向けだが、標高の高いところに住む高地民族は長寿者が多く、血管が拡張して血圧上昇が抑制され、基礎代謝の亢進につながると考えられている。高気圧酸素ルームはアンチエイジングにも効果的だ。『O2Room®』は市民の健康増進にも寄与しており、特に高齢者の多い地域にはピッタリの健康器具と言えるかもしれない。 [caption id="attachment_211968" align="alignnone" width="800"] 低圧低酸素ルームは高さ2300mm、幅2000mm、奥行き3000mmの「フリータイプ」で、同時に10~20人が使用できる広さ。中にはトレッドミルと固定式バイクがあり、自然界の高地と同じ環境で持久力強化ができる[/caption] 「日本気圧バルク工業は数々の大学や病院と共同研究によって得た多くのエビデンスを基に製品を造っていることで高い信頼を得ており、これらの機器があることでスポーツ合宿施設としての価値が高まっていくはずです。それに『O2Room®』は自社開発・自社製造しています。他社製はメンテナンスが大変で、追加費用がとてもかかるという話を聞いていますが、日本気圧バルク工業の『O2Room®』は販売開始から30年以上、事故や大きな故障もなく、安心・安全なところが持ち味です。納品してからのサポート体制も非常に優れています」(榎木氏) 『O2Room®』は大型タイプも含めたすべてのラインナップが家電製品と同じ100V電圧で動き、ランニングコストがとても低いのも魅力になっている。 [caption id="attachment_211656" align="alignnone" width="800"] 高気圧酸素ルームは高さ1800mm、幅1200mm、奥行き2250mmの「ブレッドA-タイプM」で、同時に5~6人で入れる広さ。中ではテレビを見ながらくつろぐことができ、トレーニングの疲労回復や睡眠の質の向上のために利用する人が多い[/caption] スポーツサイエンスセンターが今年8月にオープン 充実のスポーツ環境を整えている水上村だが、近年は「宿舎不足」が課題になっていた。 そこで、新たな施設を計画している。水上サクラヴィレッジから1kmほど離れた場所にスポーツサイエンスセンター「KMバイオロジクス RUNNEST」を今年の8月上旬にオープンさせる予定なのだ。 「スポーツ環境整備プロジェクト」の一環で、廃校となった小学校を活用。アスリート向けの合宿施設に転換する。最大150人が滞在できる宿泊所があるだけでなく、「スポーツサイエンス事業」、「食育事業」、「健康睡眠事業」も展開。アスリートの健康増進やコンディショニングを強力にサポートしていくのだ。 [caption id="attachment_211970" align="alignnone" width="800"] 廃校となった小学校の校舎をリニューアルしたスポーツサイエンスセンター「KMバイオロジクス RUNNEST」が今年8月にオープン。熊本保健科学大学の研究者の協力を受けながら運営していく[/caption] [caption id="attachment_211971" align="alignnone" width="800"] 「KMバイオロジクス RUNNEST」を上空から見た様子。白いタマゴ型の建物は体育館。右側のグラウンドが来年、400m全天候型トラックになる[/caption] 選手のフォームを解析する機器、骨密度や乳酸値の計測器など、熊本保健科学大学の研究者が合宿で訪れた選手を計測。 そのデータを解析して、選手へのフィードバックを実施していくという。また、マッサージ器や整骨院などリカバリーを目的にした部屋もあり、日本気圧バルク工業の高気圧酸素ルームも2台導入する。 [caption id="attachment_211666" align="alignnone" width="800"] 「KMバイオロジクス RUNNEST」に設置された2台の高気圧酸素ルームは合宿に訪れるスポーツ選手だけでなく、地域住民の健康増進のためにも利用していく。こちらも「水上サクラヴィレッジ」にあるものと同じ「ブレッドA-タイプM」で、同時に5~6人で入ることができる[/caption] 「夏合宿中は1日に40~50km走るチームも少なくありません。日々、しっかり疲労回復をし、故障なく練習を継続して結果を出してほしいと思っています」(榎木氏) これらの施設は地域住民も対象にしており、「水上村の全住人を年1回計測するなど、住民のデータ解析もしていきたい」と担当者は話している。 他にも広々とした体育館があり、隣接する敷地内には全天候型400mトラックが2027年中にオープン予定で、今後は陸上の短距離やサッカーだけでなく、バスケットボールや卓球など室内競技チームの合宿誘致も進めていく方針だ。 [caption id="attachment_211669" align="alignnone" width="1158"] 「KMバイオロジクス RUNNEST」の敷地内に来年完成予定の400m全天候型トラックのイメージ図。このトラックができることで陸上の短距離選手や他のスポーツの合宿誘致が加速していきそうだ[/caption] 合宿誘致やアスリート支援などスポーツを通じた地方創生に取り組んできた水上村。昨夏は約1万人ものアスリートが水上村を訪れているが、さらに充実した施設の完成を契機に「2~3倍に増やしていきたい」と担当者は意気込んでいる。 地方創生を加速させるだけでなく、アスリートたちの「水上村から世界へ」という大きな夢が実現するかもしれない。 ※この記事は『月刊陸上競技』2026年8月号に掲載しています ※タイトルに誤りがありましたため、修正しました。

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