HOME バックナンバー
追跡 箱根駅伝/青学大・原晋監督が振り返る 「箱根王座」奪還に挑んだ1年間
追跡 箱根駅伝/青学大・原晋監督が振り返る 「箱根王座」奪還に挑んだ1年間

青学大・原晋監督が振り返る
「箱根王座」奪還に挑んだ1年間

独自の〝アオガク・メソッド〟で2年ぶり5度目の箱根駅伝総合優勝に導いた原晋監督。1月25日に相模原市で開催された優勝パレードの報告会にて

まさかの敗戦から1年。箱根路に、強い青学大が帰ってきた。戦力低下も囁かれ、チーム運営に苦慮したシーズン前半からのV字回復。わずか1年で箱根王者に返り咲いた秘訣、その舞台裏を知将・原晋監督に振り返ってもらうとともに、黄金期を迎えつつある今後のチーム像を語ってもらった。
●文/田中 葵
●撮影/加藤成一

徹底した「意識改革」で組織を再建

昨年の箱根駅伝では「5連覇確実」と言われながら、敗戦を喫した。5年ぶりに「王者」の肩書きが外れたチームを再建するために、原晋監督が重点を置いたのは「精神面での強化」。〝チーム青山〟の組織力再構築に向けた選手の意識改革にメスを入れた。

「学生には『理念を持つ』『傍観者主義にならない』『他者責任にしない』という、組織発展に必要な三要素をいろんな事例を踏まえながら伝えていきました。あとは『覚悟』。これは主に4年生に伝えたことです。結果は問わないとまでは言いませんが、卒業しても『自分たちの代はがんばった』と胸を張れるOBになれるよう、プロセスを大切に、覚悟を持って取り組みなさいと言ってきました」

その進化の過程で、今季新たに実施した5月のゴールデンウィーク合宿で大きな出来事が起きた。無記名の忘れ物が見つかるという些細なことだったが、それを原監督は大きな問題だと察知したという。

「本当にしょうもないことですよ。合宿中に名前のない忘れ物があって、持ち主が名乗り出なかったんです。そんなわけない。君たち以外いないでしょ、と」

チーム内では同じウェアを着用することは日常茶飯事のため、支給されたら名前を書くことが決められていたが、それが徹底されていなかった。何度も注意をしたにもかわらず、状況が改善しない。それが指揮官はどうしても許せなかった。

「実は同じようなことが1~4月にもあったんです。これは犯人捜しをしているわけではない。その背景が大事で、まずは決められたことができなかったこと。そして、それを誰も注意できないことが大きな問題です。傍観者になっているんです。そんな状況で『次からは気をつけましょう。解散』では何も解決していませんし、終わらせられません。そこは指揮官としてこだわりました」

原監督の厳しい指導で意識改革をして箱根路優勝へたどり着いた青学大の選手たち

その日、夕食後から行われたミーティングは長時間に及び、終了は「24時を回っていたんじゃないかな」(原監督)。翌日にポイント練習が予定されていたこともあり、主務からは終了を打診されたが、「こういった思いを駅伝シーズンまで持ち込みたくないと、ここで意識の共有を図らないといけないと伝えました。『こんなこと……』と思うかもしれませんが、決められたルールも守れないで強くなれるはずがない。練習より大切なことなんだと教え込みました」と指揮官は決して妥協することはなかった。

今季は大黒柱が不在で、総合力で戦っていくためにも、こうした徹底が不可欠。「傍観者とならず、全員がリーダ―意識を持つチームにならないといけない」。そう何度も言い続けた結果、4年生が朝練習で一番最後まで残ってケアやコアトレを行うなど、下級生を引っ張っていく姿を見せるようになっていく。チーム全体の雰囲気も変わる転機となった。

精神面で成長した選手たちは、走りでも戦う集団へ変貌を遂げた。出雲、全日本では5位、2位と優勝こそ逃したものの、「いずれも優勝争いに加わることができ、決して悲観するものではなかった」と原監督。11月の世田谷246ハーフと関東学連主催の10000m記録挑戦競技会、そして12月上旬に千葉県富津市で実施した選抜強化合宿を経て、王座奪還への確固たる手応えをつかんでいった。

「夏合宿後の学内5000mタイムトライアルでは、過去5年と遜色のないデータが出てきて、『もしかしたら強いのではないか?』と思い始めました。箱根では特殊区間もあるので、そこを含めて戦える感触はありましたし、12月の強化合宿で過去と変わらぬ練習を消化していました。12月10日のエントリー段階では『これは勝てるな』と思っていましたね」

※この続きは2020年2月14日発売の『月刊陸上競技3月号』をご覧ください。

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する
定期購読はこちらから

青学大・原晋監督が振り返る 「箱根王座」奪還に挑んだ1年間

独自の〝アオガク・メソッド〟で2年ぶり5度目の箱根駅伝総合優勝に導いた原晋監督。1月25日に相模原市で開催された優勝パレードの報告会にて まさかの敗戦から1年。箱根路に、強い青学大が帰ってきた。戦力低下も囁かれ、チーム運営に苦慮したシーズン前半からのV字回復。わずか1年で箱根王者に返り咲いた秘訣、その舞台裏を知将・原晋監督に振り返ってもらうとともに、黄金期を迎えつつある今後のチーム像を語ってもらった。 ●文/田中 葵 ●撮影/加藤成一

徹底した「意識改革」で組織を再建

昨年の箱根駅伝では「5連覇確実」と言われながら、敗戦を喫した。5年ぶりに「王者」の肩書きが外れたチームを再建するために、原晋監督が重点を置いたのは「精神面での強化」。〝チーム青山〟の組織力再構築に向けた選手の意識改革にメスを入れた。 「学生には『理念を持つ』『傍観者主義にならない』『他者責任にしない』という、組織発展に必要な三要素をいろんな事例を踏まえながら伝えていきました。あとは『覚悟』。これは主に4年生に伝えたことです。結果は問わないとまでは言いませんが、卒業しても『自分たちの代はがんばった』と胸を張れるOBになれるよう、プロセスを大切に、覚悟を持って取り組みなさいと言ってきました」 その進化の過程で、今季新たに実施した5月のゴールデンウィーク合宿で大きな出来事が起きた。無記名の忘れ物が見つかるという些細なことだったが、それを原監督は大きな問題だと察知したという。 「本当にしょうもないことですよ。合宿中に名前のない忘れ物があって、持ち主が名乗り出なかったんです。そんなわけない。君たち以外いないでしょ、と」 チーム内では同じウェアを着用することは日常茶飯事のため、支給されたら名前を書くことが決められていたが、それが徹底されていなかった。何度も注意をしたにもかわらず、状況が改善しない。それが指揮官はどうしても許せなかった。 「実は同じようなことが1~4月にもあったんです。これは犯人捜しをしているわけではない。その背景が大事で、まずは決められたことができなかったこと。そして、それを誰も注意できないことが大きな問題です。傍観者になっているんです。そんな状況で『次からは気をつけましょう。解散』では何も解決していませんし、終わらせられません。そこは指揮官としてこだわりました」 原監督の厳しい指導で意識改革をして箱根路優勝へたどり着いた青学大の選手たち その日、夕食後から行われたミーティングは長時間に及び、終了は「24時を回っていたんじゃないかな」(原監督)。翌日にポイント練習が予定されていたこともあり、主務からは終了を打診されたが、「こういった思いを駅伝シーズンまで持ち込みたくないと、ここで意識の共有を図らないといけないと伝えました。『こんなこと……』と思うかもしれませんが、決められたルールも守れないで強くなれるはずがない。練習より大切なことなんだと教え込みました」と指揮官は決して妥協することはなかった。 今季は大黒柱が不在で、総合力で戦っていくためにも、こうした徹底が不可欠。「傍観者とならず、全員がリーダ―意識を持つチームにならないといけない」。そう何度も言い続けた結果、4年生が朝練習で一番最後まで残ってケアやコアトレを行うなど、下級生を引っ張っていく姿を見せるようになっていく。チーム全体の雰囲気も変わる転機となった。 精神面で成長した選手たちは、走りでも戦う集団へ変貌を遂げた。出雲、全日本では5位、2位と優勝こそ逃したものの、「いずれも優勝争いに加わることができ、決して悲観するものではなかった」と原監督。11月の世田谷246ハーフと関東学連主催の10000m記録挑戦競技会、そして12月上旬に千葉県富津市で実施した選抜強化合宿を経て、王座奪還への確固たる手応えをつかんでいった。 「夏合宿後の学内5000mタイムトライアルでは、過去5年と遜色のないデータが出てきて、『もしかしたら強いのではないか?』と思い始めました。箱根では特殊区間もあるので、そこを含めて戦える感触はありましたし、12月の強化合宿で過去と変わらぬ練習を消化していました。12月10日のエントリー段階では『これは勝てるな』と思っていましたね」 ※この続きは2020年2月14日発売の『月刊陸上競技3月号』をご覧ください。
※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する 定期購読はこちらから

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.07.27

女子競歩の岡田久美子は調整順調「メダルを狙える位置。新たな挑戦でワクワクしている」/パリ五輪

パリ五輪・陸上競技に向けて日本代表選手団が7月27日午前、出国前に羽田空港で会見を行い、意気込みを語った。 2016年リオ、21年東京に続く3大会連続の五輪代表となる女子競歩の岡田久美子(富士通)は「いよいよだなという気 […]

NEWS 女子走幅跳日本記録保持者・秦澄美鈴 目標は決勝進出「自己ベストを狙っていきたい」/パリ五輪

2024.07.27

女子走幅跳日本記録保持者・秦澄美鈴 目標は決勝進出「自己ベストを狙っていきたい」/パリ五輪

パリ五輪・陸上競技に向けて日本代表選手団が7月27日午前、出国前に羽田空港で会見を行い、意気込みを語った。 女子走幅跳に出場する秦澄美鈴(住友電工)は「緊張しています」と言いながらも「シーズン初めに比べて調子が上がってい […]

NEWS 混合競歩代表の川野将虎「自分らしい粘り強い歩きで上位を目指したい」/パリ五輪

2024.07.27

混合競歩代表の川野将虎「自分らしい粘り強い歩きで上位を目指したい」/パリ五輪

パリ五輪・陸上競技に向けて日本代表選手団が7月27日午前、出国前に羽田空港で会見を行い、意気込みを語った。 男女混合競歩リレー代表の川野将虎(旭化成)は前回の東京大会に続くオリンピック。「前回から3年間。一つの集大成」と […]

NEWS 北口榛花「新たな歴史を作れるよう」田中希実「それではみんなで、よーいどん!」日本代表コメント集/パリ五輪

2024.07.27

北口榛花「新たな歴史を作れるよう」田中希実「それではみんなで、よーいどん!」日本代表コメント集/パリ五輪

100年ぶりにフランス・パリを舞台に五輪が開幕した。陸上競技は8月1日から11日までの日程で行われる。開幕に合わせて日本オリンピック委員会(JOC)は日本代表の意気込みコメントを発表した。 2大会連続出場で女子主将を務め […]

NEWS 中大ルーキー・岡田開成が3000m7分55秒41! U20歴代4位の好タイム

2024.07.27

中大ルーキー・岡田開成が3000m7分55秒41! U20歴代4位の好タイム

7月26日、中大多摩キャンパス競技場で「Summer Night Run Festival in CHUO」が行われ、男子3000mで岡田開成(中大1)が7分55秒41とU20歴代4位のタイムをマークした。 同大会はこれ […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年8月号 (7月12日発売)

2024年8月号 (7月12日発売)

W別冊付録
パリ五輪観戦ガイド&福岡インターハイ完全ガイド

page top