◇織田記念(4月29日/広島・エディオンスタジアム)
アジア大会選考会を兼ねた日本グランプリシリーズ広島大会の「第56回織田記念」が4月29日に行われ、女子100mハードルは地元・広島出身の福部真子(日本建設工業)が好走した。
強みの前半から鋭く加速すると、最後はセレスト・ムッチ(豪州)と並ぶようにフィニッシュ。向かい風2.8mを突いて13秒21で、同タイムながら着差ありの2位だった。「勝ちたかったし、12秒台を狙っていたので13秒2はうれしくないです」と話すも、「やっと笑顔で取材エリアに来られました」と笑みを浮かべる。それだけ、苦しい時を過ごした。
広島皆実高時代、2011~13年までインターハイ100mハードルを3連覇。寺田明日香(恵庭北工、現・ジャパンクリエイト)以来の快挙を果たしているのが福部真子だった。日体大時代も苦しみ3年目まで自己ベストは更新できず。卒業後は練習環境を変え、ようやく軌道に乗って2019年に13秒13まで一気に成長を遂げた。
しかし、東京五輪を目指している中でコロナ禍が始まり、再び練習環境を変えなければいけない状況となる。精神的に追い込まれた福部は、「応援してくれる家族の近くで走りたい」と2020年12月に関東から地元・広島に戻る選択をした。
「走るのが嫌いになった」ところから、広島の空気を吸って福部は息を吹き返す。現在は週2回、広島大のコーチにハードル練習を見てもらい、それ以外は市内の競技場を活用しつつ低酸素トレーニングルームのあるジムにも通っている。課題であり「逃げていた部分があった」というスピード強化に励み、100mでは11秒96に突入。それでも「寺田さんや、青木(益未、七十七銀行)さんに比べたら全然」だという。
12秒台は「条件が整えばいつでも出せる」と手応えをつかむ一方、「12秒8になるとまだまだ難しい」と自覚している。目標とする2年後のパリ五輪に向けて、12秒8を出して、「参加標準記録を突破して出場したい」と語る福部。「ただ、出たいだけ」だった東京五輪への道のりが終わり、次のオリンピックロードは「出て予選、準決勝で戦う」ことを見据えて進んでいる。
かつて類い稀なセンスで世代をリードした“天才ハードラー”が、苦難のハードルを乗り越えて地元・広島から「世界を目指すトップハードラー」へと変貌を遂げた。
◇青木益未は3位
日本記録保持者の青木益未(七十七銀行)は13秒25で3位。北陸実業団で12秒84の日本記録をマークしたあと、「身体に負荷がかかって少し脚に違和感が出た」と話すも、「今日は残念でしたが、スプリントは上がっています」と、世界選手権の参加標準記録12秒84の突破へ手応えをつかんでいる様子だった。
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