HOME ニュース、国内

2022.04.10

伊藤達彦 参加標準記録に届かずも「余裕を持って」27分42秒48 ラスト1周は圧巻の55秒/金栗記念
伊藤達彦 参加標準記録に届かずも「余裕を持って」27分42秒48 ラスト1周は圧巻の55秒/金栗記念


◇第30回金栗記念選抜中長距離2022(4月9日/熊本・えがお健康スタジアム)

日本グランプリシリーズの第30回金栗記念選抜が4月8日、熊本・えがお健康スタジアムにて開催された。男子10000mには、昨夏の東京五輪代表の伊藤達彦(Honda)と相澤晃(旭化成)がそろって出場した。

この種目の今夏のオレゴン世界選手権の参加標準記録(27分28秒00)を対象期間内に突破しているのは田澤廉(駒大4年※今回は5000mに出場)のみ。伊藤と相澤は標準記録突破を視野に入れて今回のレースに臨んだ。

外国人選手が先頭集団を牽引し、入りの1000mは2分45秒と、標準記録を狙えるペースで入った。このペースを刻めば27分30秒。ラストスパートで切り替えれば、なんとか届く。しかし、その後ペースは落ちて、5000mは13分54秒で通過した。後半に入ると、伊藤がペースメーカーの前に出る場面もあった。伊藤と相澤は共に余裕を持ってレースを進め、終盤まで先頭集団に位置取る。この2人に市田孝(旭化成)を加えた3人が日本人トップ争いを繰り広げた。

最初に仕掛けたのは相澤だった。

広告の下にコンテンツが続きます

「ラスト1周の前で、伊藤君よりも前にいないとダメだと思ったので、その前に行こうと思った」

残り2周を切って、相澤はするすると前方にポジションを上げていき、チームメイトのキプランガット・デービスと並ぶように先頭に立った。しかし、伊藤も負けじと食い下がる。

「標準記録を切れそうになかったので、日本選手権のために脚をとっておこうと思ったんですが。相澤君はライバルなので、負けたくないのでついついムキになってしまいました」

ラスト1周の鐘が鳴ると、すかさず猛烈なスパートを炸裂させる。伊藤は、「スピード強化を1月から始めてきた」と言い、ラスト1周をなんと55秒でカバー。最後は100分の2秒差でエバンス・ケイタニー(トヨタ紡織)に敗れたものの、昨年11月の八王子ロングディスタンスに続き相澤に先着し、27分42秒48で日本人トップの2位に入った。

ラストスパートで敗れたことと、世界選手権の標準記録には届かなかったことには悔しさを口にしたが、「全体的にスピードがついたお陰で、途中のペースの上げ下げにも対応できたし、余裕を持って27分40秒台で走ることができた」と収穫も多かった。

一方の相澤は27分45秒26で5位(日本人2位)。「かなり余裕があって、本当にきつかったのはラスト1周ぐらい。現時点ではまずまずの走りができたと思っています」と、こちらも手応えを口にした。

相澤は2月後半までなかなか調子が上がらない日々を送っており、2月26日の日本選手権クロスカントリーを欠場。「良い練習ができたのはこの1カ月ぐらい」。短期間で仕上げて、このレースに臨んだだけに、好感触を得ることができた。

世界選手権の標準記録を狙う機会は、おそらく5月7日の日本選手権か、ホクレン・ディスタンスチャレンジ2022の20周年記念大会(6月22日・深川)あたり。限られたチャンスしか残されていないが、伊藤と相澤は共に世界選手権出場への自信を覗かせていた。まずは日本選手権。田澤も交えて、3者によるハイレベルなレースが繰り広げられることになりそうだ。

文/福本ケイヤ


◇第30回金栗記念選抜中長距離2022(4月9日/熊本・えがお健康スタジアム)

日本グランプリシリーズの第30回金栗記念選抜が4月8日、熊本・えがお健康スタジアムにて開催された。男子10000mには、昨夏の東京五輪代表の伊藤達彦(Honda)と相澤晃(旭化成)がそろって出場した。

この種目の今夏のオレゴン世界選手権の参加標準記録(27分28秒00)を対象期間内に突破しているのは田澤廉(駒大4年※今回は5000mに出場)のみ。伊藤と相澤は標準記録突破を視野に入れて今回のレースに臨んだ。

外国人選手が先頭集団を牽引し、入りの1000mは2分45秒と、標準記録を狙えるペースで入った。このペースを刻めば27分30秒。ラストスパートで切り替えれば、なんとか届く。しかし、その後ペースは落ちて、5000mは13分54秒で通過した。後半に入ると、伊藤がペースメーカーの前に出る場面もあった。伊藤と相澤は共に余裕を持ってレースを進め、終盤まで先頭集団に位置取る。この2人に市田孝(旭化成)を加えた3人が日本人トップ争いを繰り広げた。

最初に仕掛けたのは相澤だった。

「ラスト1周の前で、伊藤君よりも前にいないとダメだと思ったので、その前に行こうと思った」

残り2周を切って、相澤はするすると前方にポジションを上げていき、チームメイトのキプランガット・デービスと並ぶように先頭に立った。しかし、伊藤も負けじと食い下がる。

「標準記録を切れそうになかったので、日本選手権のために脚をとっておこうと思ったんですが。相澤君はライバルなので、負けたくないのでついついムキになってしまいました」

ラスト1周の鐘が鳴ると、すかさず猛烈なスパートを炸裂させる。伊藤は、「スピード強化を1月から始めてきた」と言い、ラスト1周をなんと55秒でカバー。最後は100分の2秒差でエバンス・ケイタニー(トヨタ紡織)に敗れたものの、昨年11月の八王子ロングディスタンスに続き相澤に先着し、27分42秒48で日本人トップの2位に入った。

ラストスパートで敗れたことと、世界選手権の標準記録には届かなかったことには悔しさを口にしたが、「全体的にスピードがついたお陰で、途中のペースの上げ下げにも対応できたし、余裕を持って27分40秒台で走ることができた」と収穫も多かった。

一方の相澤は27分45秒26で5位(日本人2位)。「かなり余裕があって、本当にきつかったのはラスト1周ぐらい。現時点ではまずまずの走りができたと思っています」と、こちらも手応えを口にした。

相澤は2月後半までなかなか調子が上がらない日々を送っており、2月26日の日本選手権クロスカントリーを欠場。「良い練習ができたのはこの1カ月ぐらい」。短期間で仕上げて、このレースに臨んだだけに、好感触を得ることができた。

世界選手権の標準記録を狙う機会は、おそらく5月7日の日本選手権か、ホクレン・ディスタンスチャレンジ2022の20周年記念大会(6月22日・深川)あたり。限られたチャンスしか残されていないが、伊藤と相澤は共に世界選手権出場への自信を覗かせていた。まずは日本選手権。田澤も交えて、3者によるハイレベルなレースが繰り広げられることになりそうだ。

文/福本ケイヤ

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.07.18

富士北麓ワールドトライアル 100mに栁田大輝、桐生祥秀 ハードルに泉谷駿介、田中佑美がエントリー!

日本陸連は7月18日、日本グランプリシリーズの富士北麓ワールドトライアル2025のエントリーリストを発表した。 男子100mには日本選手権で優勝した桐生祥秀(日本生命)を筆頭に、関口裕太(早大)、小池祐貴(住友電工)、多 […]

NEWS 【世界陸上プレイバック】―13年モスクワ―棒高跳イシンバエワが地元で有終の美 福士加代子がマラソンで笑顔の銅メダル、桐生祥秀が世界デビュー

2025.07.18

【世界陸上プレイバック】―13年モスクワ―棒高跳イシンバエワが地元で有終の美 福士加代子がマラソンで笑顔の銅メダル、桐生祥秀が世界デビュー

今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。 これ […]

NEWS 100m栁田大輝60年ぶり“世界一”なるか!?落合晃、阿部竜希、柳井綾音らがドイツで勝負/ユニバ

2025.07.18

100m栁田大輝60年ぶり“世界一”なるか!?落合晃、阿部竜希、柳井綾音らがドイツで勝負/ユニバ

学生世界一を決めるFISUワールドユニバーシティゲームズの陸上競技が7月21日から27日まで、ドイツのライン・ルールで行われる。若き日本代表の注目選手を紹介する。 男子100mには栁田大輝(東洋大)が出場する。自己記録は […]

NEWS 王者・キプチョゲに加え、レゲセ、ウォルデらがエントリー! 日本から川内優輝、聞谷賢人らも出場予定/シドニーマラソン

2025.07.18

王者・キプチョゲに加え、レゲセ、ウォルデらがエントリー! 日本から川内優輝、聞谷賢人らも出場予定/シドニーマラソン

8月31日に豪州で開催されるシドニーマラソンの主催者は、男子エリート選手のエントリーを発表した。 すでに、前世界記録のE.キプチョゲ(ケニア)の参戦が3月中に発表されているが、新たに19年、20年の東京を制しているB.レ […]

NEWS チェプンゲティチ暫定的資格停止!女子マラソン初2時間10分切り、3月のドーピング検査陽性

2025.07.18

チェプンゲティチ暫定的資格停止!女子マラソン初2時間10分切り、3月のドーピング検査陽性

世界陸連の独立不正監査機関「アスリート・インテグリティー・ユニット」(AIU)は7月17日、女子マラソン世界記録(2時間9分56秒)保持者のルース・チェプンゲティチ(ケニア)に暫定的資格停止処分を科したことを発表した。 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年8月号 (7月14日発売)

2025年8月号 (7月14日発売)

詳報!日本選手権
IH地区大会

page top