2022.03.14
◇日本室内大阪大会(3月12、13日/大阪城ホール)
大きな可能性を感じさせるジャンプだった。U20男子棒高跳は、5m20を1回でクリアした原口篤志(王寺工高3奈良)が優勝。昨夏の福井インターハイ覇者・松井楓雅(南陽工高3山口)を10cm差で抑えて悲願の全国初タイトルを手にした。
前回2年生ながら5m10を跳んで2位になった原口。そのまま突入したトラックシーズンでは、11月に5m35の高校歴代5位、U20歴代6位タイをマークするも、6月のU20日本選手権、そしてインターハイといずれも2位だった。
昨年までは180cmを超える長身ながら線が細く、「風に左右されて助走が安定しなかったことに加えて、重いポールが持てず、柔らかいポールを使っていたこともあり肝心な場面で跳躍にムラが出てしまっていた」とタイトルに届かなった要因を口にする。その悔しさを糧に、この冬は課題だった体力強化に取り組み、上半身は一回り大きくなった印象を受ける。
これまでは試合で助走を途中で中断するシーンを何度となく見かけた。技術面でも「冬の間にしっかり跳躍練習を繰り返すことで必要な部分に筋力もついて自信を持って突っ込めるようになりました」。この日は、大会の1週間前の跳躍練習で左足の踵を痛めていたこともあり本来の18歩助走ではなく14歩の中助走で挑みながらも5m10、20の跳躍では5m50以上の高さを出すなど成長の跡が見て取れた。
「1週間前に足を痛める前までは調子もよく、ここで高校記録(5m51)に挑む自信がありました」ときっぱり。現在、屋外のシーズンインに向け、シニアのトップ級でもなかなか使うことのない17フィート(170ポンド)のポールを使いこなせるように取り組んでおり、「助走スピードも確実に上がっているので、突っ込み動作をもう少し高く力強く持っていければ……。3月末までに記録会が4試合あるので、早く足を治して高校記録を更新したい」と力を込めた。
4月からは東大阪大に進む。中学から棒高跳を始め高校で大きく成長した原口。「高校で強くしてもらったので、あまり環境を変えないように選択しました」と言い、卒業後も王寺工高を拠点に継続してトレーニングを積むこととなる。
2022年シーズンは、7月にユニバーシアード、8月にU20世界選手権が控える。「3月中に高校記録を更新し、大学では4月の学生個人選手権で5m50以上を跳んで優勝するのが目標です。その後の試合でも安定して5m50以上が跳べるよう練習を積んで世界大会で結果を残したい」と抱負を話す。
U20世界選手権は、東京五輪代表の江島雅紀(富士通)らが通ってきた、五輪や世界選手権で戦っていくための登竜門でもある。先日、東京五輪金メダリストのアルマンド・デュプランティス(スウェーデン)によって世界記録は6m19に引き上げられるなど、新時代に突入した棒高跳界。原口ら可能性を秘めたU20世代が今後、どんな成長曲線を描き、世界へ挑んでいくのか注目だ。
■日本室内大阪大会2日目の優勝者
●U20
・男子
60m 上新 魁(明中八王子高・東京) 6秒73
棒高跳 原口篤志(王子寺工高・奈良) 5m20
走幅跳 舞永夏稀(太成学院高・大阪) 7m49
三段跳 白濱稔也(板橋高・東京) 14m92
・女子
60m 樋口七海(四日市商高・三重) 7秒48
走幅跳 乙津美月(八王子高・東京) 5m98
文/花木 雫
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