【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!!
アシックス「METASPEED Sky(メタスピード スカイ)」
中学時代から陸上競技に取り組み、今も市民ランナーとして走り続けている月陸編集者(マラソンの自己ベストは2時間43分)が、注目のシューズをトライアル! 今回はアシックスの厚底レーシングシューズ「METASPEED Sky(メタスピード スカイ)」(税込27,500円)を紹介する。
アシックスが3月末に発売した厚底レーシングシューズ「METASPEED Sky(メタスピード スカイ)」
8年の時を動かしたシューズ
アシックスがついに実力を発揮してくれた――。こう思いのたけを明かしたのはプロランナーの川内優輝選手(あいおいニッセイ同和損保)だが、同じ気持ちだったランナーも多かったことだろう。アシックスは3月末に厚底レーシングシューズ「METASPEED Sky(メタスピード スカイ)」を発売。今やマラソン・長距離界を賑わすようになった“厚底戦線”に本格参戦した格好だ。
すでに多くの人がご存じかもしれないが、このシューズは発売前から注目を集めてきた。2月末のびわ湖毎日マラソンでは、メタスピード スカイのプロトタイプを履いた川内選手が自己ベストを8年ぶりに更新する2時間7分27秒をマーク。好記録の要因として本人が挙げた1つがシューズだった。それまで軽量で高反発の薄底シューズを愛用していた川内選手だったが、マラソン界の高速化に対応しようと厚底にチャレンジし、見事結果に結びつけたのだ。
だが、アシックスが実際に開発していたのはメタスピード スカイだけではなかった。アシックスはランナーの走法を分析し、「ストライド型」と「ピッチ型」という2つのタイプに分類。そして、今季はそれぞれにマッチするシューズを発売することになった。
「ストライド型」にはメタスピード スカイ。「ピッチ型」には「METASPEED Edge(メタスピード エッジ)」というモデルが6月4日から発売されることになっている。では、ストライド型とピッチ型はどのように分けられるのだろうか。
「メタスピード スカイ」が合うのはストライド型
わかりやすいのは走るスピードを上げようとする時のフォーム変化だ。主にストライドの長さ(歩幅)が変化するのが「ストライド型」。ケイデンス(回転数)とストライドの両方が変化するのが「ピッチ型」となる。そして、「メタスピード」シリーズは走法に合わせたシューズを履くことによって1歩ごとのストライドがさらに広がることが検証実験によって証明されたという。
ストライド型ランナーを想定した「メタスピード スカイ」の場合は、ソールが1歩ごとのストライドを伸ばしやすいような設計になっている。「FF BLAST TURBO(エフエフ ブラスト ターボ)」という軽量かつ高反発のミッドソール素材を全体的に厚く用い(メンズ27.0cmのシューズでは最大33mm)、つま先を急角度にすることで斜め上方向への推進力を強化。これらが合わさることで従来のレーシングシューズに比べてマラソンを1.2%(約350歩)少ない歩数で完走できるようになるという。それだけストライドが伸びて速く走れる可能性が高いということだ。
分厚いミッドソールには「FF BLAST TURBO(エフエフ ブラスト ターボ)」という高反発の新素材を採用。つま先を急角度にすることでストライド型ランナーに適した斜め上方向への推進力を強化しているという
厚底でありながらも重量は片足約199g(27.0cmの場合)。新ミッドソール素材であるエフエフ ブラスト ターボがアシックス最軽量素材「Solyte(ソライト)」とほぼ同水準の重量であることから軽量化を実現している。また、ミッドソールにはカーボンプレートが内蔵され、地面からの反発が推進力につながりやすいように調整されている。
ストライドが自然に伸びる
前述の通り、メタスピード スカイはストライド型のランナーに合わせた設計となっている。あいにく筆者は典型的な「ピッチ型」だが、それを承知の上でメタスピード スカイでトレーニングをしてみた。
まず、最初の印象は「軽い」。そして、「柔らかい」。これまでにMETARACER(メタレーサー)、GLIDERIDE(グライドライド)、NOVABLAST(ノヴァブラスト)とアシックスの新コンセプトシューズで走ってきた筆者でも、今までのモデルとは“別物”だと感じた。なお、サイズ感はメタレーサーよりも一回り小さく、普段25.0~25.5cmのシューズを履いている筆者は25.5cmがちょうどだった。
メタスピード スカイでジョギングをしてみると、とにかくよく弾む。前足部のミッドソールは分厚く感じるものの、レスポンスは速く、クッション性と反発力が高いレベルで両立されているのは明らかだ。ストライドが自然に伸び、まるでシューズに「走らされている」ような感覚になる。それでいながら脚への疲労感は少なく、ピッチ型の筆者でも十分に恩恵を得られるように感じた。
本文では触れていないが前足部のグリップも強力。濡れた路面にも対応してくれそうだ
では、ピッチ型のランナーがメタスピード スカイを履いた場合のデメリットはどこにあるのかと言えば、メタスピード エッジに比べるとスピードを上げた時に若干の窮屈さを感じる点だ。良くも悪くもシューズに“走らされる”感覚が強いため、脚さばきや接地のタイミングなどをシューズに合わせて走る必要がある。
筆者がトラックで1000mをほぼ全力の3分20秒で走ったところ、ピッチの速さに重心移動が追いつかない感覚があった。さらにスピードを上げて200mをダッシュしてみると、気を抜くとピッチが落ちて間延びした走りになってしまう。筆者の場合はケイデンスが190歩/分を超えると接地のタイミングが合わなくなるようだ。見方を変えればこのシューズはそれだけ「ストライド型」に特化した性能になっているとも言える。
それでも、ケイデンスがそれほど上がらないマラソンやハーフマラソンでは従来型のシューズよりは十分に速く走れるだろうという感覚があった。裏を返せば、たとえ走法が合わなかったとしても長い距離では十分にタイム短縮が期待できるということだ。
ただ、ピッチ型のランナーはこのメタスピード スカイを無理に買う必要はないかもしれない。なぜならピッチ型ランナー向けのメタスピード エッジが、前述の問題をクリアするだけの性能に仕上がっているからだ。筆者は発売前のメタスピード エッジも試着しているため、その詳細は別の記事で紹介する。
メタスピードシリーズの2種類のモデルを履いてみて、ランナーは自分の走りがストライド型かピッチ型か、まずはそれを把握した上でシューズを選ぶべきだと改めて実感させられた。そして、ストライド型のランナーであれば、このメタスピード スカイは“切り札”として期待に応えてくれるはずだ。
文/山本慎一郎
<関連リンク>
「METASPEED」特設ページ(アシックス公式サイト)
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8年の時を動かしたシューズ
アシックスがついに実力を発揮してくれた――。こう思いのたけを明かしたのはプロランナーの川内優輝選手(あいおいニッセイ同和損保)だが、同じ気持ちだったランナーも多かったことだろう。アシックスは3月末に厚底レーシングシューズ「METASPEED Sky(メタスピード スカイ)」を発売。今やマラソン・長距離界を賑わすようになった“厚底戦線”に本格参戦した格好だ。 すでに多くの人がご存じかもしれないが、このシューズは発売前から注目を集めてきた。2月末のびわ湖毎日マラソンでは、メタスピード スカイのプロトタイプを履いた川内選手が自己ベストを8年ぶりに更新する2時間7分27秒をマーク。好記録の要因として本人が挙げた1つがシューズだった。それまで軽量で高反発の薄底シューズを愛用していた川内選手だったが、マラソン界の高速化に対応しようと厚底にチャレンジし、見事結果に結びつけたのだ。 だが、アシックスが実際に開発していたのはメタスピード スカイだけではなかった。アシックスはランナーの走法を分析し、「ストライド型」と「ピッチ型」という2つのタイプに分類。そして、今季はそれぞれにマッチするシューズを発売することになった。 「ストライド型」にはメタスピード スカイ。「ピッチ型」には「METASPEED Edge(メタスピード エッジ)」というモデルが6月4日から発売されることになっている。では、ストライド型とピッチ型はどのように分けられるのだろうか。「メタスピード スカイ」が合うのはストライド型
わかりやすいのは走るスピードを上げようとする時のフォーム変化だ。主にストライドの長さ(歩幅)が変化するのが「ストライド型」。ケイデンス(回転数)とストライドの両方が変化するのが「ピッチ型」となる。そして、「メタスピード」シリーズは走法に合わせたシューズを履くことによって1歩ごとのストライドがさらに広がることが検証実験によって証明されたという。 ストライド型ランナーを想定した「メタスピード スカイ」の場合は、ソールが1歩ごとのストライドを伸ばしやすいような設計になっている。「FF BLAST TURBO(エフエフ ブラスト ターボ)」という軽量かつ高反発のミッドソール素材を全体的に厚く用い(メンズ27.0cmのシューズでは最大33mm)、つま先を急角度にすることで斜め上方向への推進力を強化。これらが合わさることで従来のレーシングシューズに比べてマラソンを1.2%(約350歩)少ない歩数で完走できるようになるという。それだけストライドが伸びて速く走れる可能性が高いということだ。
ストライドが自然に伸びる
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