2021.02.25

2月27日に行われる第104回日本選手権クロスカントリー(福岡・海の中道海浜公園)を前に、女子5000mで東京五輪代表に内定している田中希実(豊田自動織機TC)がインタビューに応えた。
東京五輪延期、自粛期間もあり「不安だった」という2020年で飛躍を遂げた田中。1500m(4分05秒27)と3000m(8分41秒35)で日本新記録を樹立し、5000mでは日本選手権を制して東京五輪代表に内定した。
800mから10000mまでオールラウンドに活躍を続ける田中が2年ぶりに日本選手権クロカンにエントリー。2019年大会は優勝して世界クロスカントリー選手権にも出場した。2年ぶり優勝を狙う田中は、どんな思いでレースに臨むのだろうか。
――2年ぶりの日本選手権クロカンとなります。どのような狙いがあるのでしょうか。
田中 今年はコロナ禍ということもあり合宿もできない状況なので、クロスカントリーに出ることで脚作りになるかなと思っています。
クロスカントリーは、ロードレースよりも周回である分トラック寄りです。クロカンは必然的にペースの上げ・下げが生まれるので、海外のトラックレースのようなペース変動への対応という面でつながってくると思っています。
――2年前は優勝されています。クロカンは得意なのでしょうか。
田中 2年前は苦手意識を持っていました。高校3年の終わり(2018年3月)にアジアクロカン選手権に出場したのですが、そこでもあまり走れなくて……(4位)。結構、不安の中でスタートしたんです。それもあって、最後の最後まで抜け出せなかったのですが、「今の力ではここしかない」という場面で(勝負を)決められたのは良かったと思います。
クロカンはペース配分が難しいです。無駄な動きをしてしまって、無意識のうちに疲労を溜めてしまうこともあります。苦手というか、“へた”なのかな、と。2年前に勝てたことで自信になりました。
――昨年は日本記録を2種目で更新されるなど、飛躍の年となりました。
田中 中学の時から意識は変わっていなくて、とにかく「去年の自分より成長したい」と思っていて、原点の部分は変わっていません。そういう思いを持って毎年走ってきました。その延長線上に、去年の結果があると思っています。
ただ、これまで与えられた練習をやるだけでしたが、昨年は一つひとつの練習にも、レースと同じくらいの責任感を持って取り組んできたと思います。週2回ほど、レースと同じか、それ以上にしんどい練習をして、それをやりきるという部分を継続できました。気持ちの面で強くなったと思います。
――12月の日本選手権では5000mで優勝して五輪代表を勝ち取りました。
田中 日本選手権5000mは、まったく自信がなかったんです。大会までの1ヵ月、思ったようなレース、練習ができなくて、自分を追い詰めてしまっていました。
ラストまでどうなるかわからないし、最初から自分でいく自信もない。オリンピックを決めるには絶対の自信を持って臨まなければいけない、でも自信を持てない。そういう葛藤が大きかったです。
――1学年下の廣中璃梨佳選手(日本郵政グループ)との激闘でしたね。
田中 廣中さんは高校時代から気持ちの強い印象があって、ずっと2人で成長してきたというイメージです。不安があったからこそ、最後までどっちが勝つかわからないレースになったと思います。それでも、自信がないレースにしては、絶対に負けられないという気迫を見せられたのかなと思っています。あの時は無心でした。

――田中選手といえば、フィニッシュ後にトラックに向かって大きな声で挨拶される姿が印象に残っているファンも多いようです。
田中 高校(西脇工高・兵庫)では、トラックに一礼する習慣があって、卒業後もそういう姿勢を大事にしたいと思って今も続けています。日本選手権など大舞台で勝てた時はうれしい気持ちも大きく、心から感謝の気持ちでありがとうございました、という声が出ているのかなと思います。
もちろん、レース内容によって大きな声を出せるかはわかりませんが……。たとえ納得のいかないレースであったとしても、しっかり走り切れたこと、またこの場所に戻ってきたいということの気持ちとして、一礼することは絶対に続けていきたいと思っています。
――日本選手権クロカンはどんなレースになりそうですか。意気込みも含めて教えてください。
田中 スローになるかもしれないし、先行逃げ切りができるような展開になるかもしれません。どっちに転ぶかわかりませんが、どんな展開になっても対応してきたいです。
クロカンは不整地なので故障のリスクも高くなるのですが、トラックシーズンでしっかりまとめることを考えた時に、クロカンを走っても故障しないくらいの身体を作れていないとダメなのかなと思っています。
2年前は優勝できているので、今回も優勝を目指していきます。しっかり勝ち切れたという自信を作りたいです。
――オリンピックイヤーとなるトラックシーズンに向けてプランを教えてください。
田中 例年通りのスケジュールで進めば、1500mなどのレースを春からのグランプリシリーズで出場していきたいです。スピードとスタミナの融合という面で完璧ではないので、スピードだけ、スタミナだけ、という練習ではなく、両方兼ね備えたきつい練習をやって磨いていきます。
3000mや5000mなどいろいろな大会に出て、オリンピックに向けていろんな種目を経て調整していきたいと考えています。
◇第104回日本選手権クロスカントリー・第36回U20日本選手権クロスカントリー
五輪代表の田中希実をはじめ、日本を代表するトップランナーたちが多数出場する第104回日本選手権クロスカントリー・第36回U20クロスカントリーは2月27日、福岡県・国営海の中道海浜公園クロスカントリーコースで開催される。
大会の模様は同日午後3時30分から、RKB毎日放送が中継を担当し、TBS系列JNN全国28局ネットで放送。スタジオ解説を瀬古利彦氏(日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダー)、増田明美氏、青学大・原晋監督、男女レース解説を東海大・両角速監督が務める。
構成/向永拓史 協力/RKB毎日放送株式会社
2月27日に行われる第104回日本選手権クロスカントリー(福岡・海の中道海浜公園)を前に、女子5000mで東京五輪代表に内定している田中希実(豊田自動織機TC)がインタビューに応えた。
東京五輪延期、自粛期間もあり「不安だった」という2020年で飛躍を遂げた田中。1500m(4分05秒27)と3000m(8分41秒35)で日本新記録を樹立し、5000mでは日本選手権を制して東京五輪代表に内定した。
800mから10000mまでオールラウンドに活躍を続ける田中が2年ぶりに日本選手権クロカンにエントリー。2019年大会は優勝して世界クロスカントリー選手権にも出場した。2年ぶり優勝を狙う田中は、どんな思いでレースに臨むのだろうか。
――2年ぶりの日本選手権クロカンとなります。どのような狙いがあるのでしょうか。
田中 今年はコロナ禍ということもあり合宿もできない状況なので、クロスカントリーに出ることで脚作りになるかなと思っています。
クロスカントリーは、ロードレースよりも周回である分トラック寄りです。クロカンは必然的にペースの上げ・下げが生まれるので、海外のトラックレースのようなペース変動への対応という面でつながってくると思っています。
――2年前は優勝されています。クロカンは得意なのでしょうか。
田中 2年前は苦手意識を持っていました。高校3年の終わり(2018年3月)にアジアクロカン選手権に出場したのですが、そこでもあまり走れなくて……(4位)。結構、不安の中でスタートしたんです。それもあって、最後の最後まで抜け出せなかったのですが、「今の力ではここしかない」という場面で(勝負を)決められたのは良かったと思います。
クロカンはペース配分が難しいです。無駄な動きをしてしまって、無意識のうちに疲労を溜めてしまうこともあります。苦手というか、“へた”なのかな、と。2年前に勝てたことで自信になりました。
――昨年は日本記録を2種目で更新されるなど、飛躍の年となりました。
田中 中学の時から意識は変わっていなくて、とにかく「去年の自分より成長したい」と思っていて、原点の部分は変わっていません。そういう思いを持って毎年走ってきました。その延長線上に、去年の結果があると思っています。
ただ、これまで与えられた練習をやるだけでしたが、昨年は一つひとつの練習にも、レースと同じくらいの責任感を持って取り組んできたと思います。週2回ほど、レースと同じか、それ以上にしんどい練習をして、それをやりきるという部分を継続できました。気持ちの面で強くなったと思います。
――12月の日本選手権では5000mで優勝して五輪代表を勝ち取りました。
田中 日本選手権5000mは、まったく自信がなかったんです。大会までの1ヵ月、思ったようなレース、練習ができなくて、自分を追い詰めてしまっていました。
ラストまでどうなるかわからないし、最初から自分でいく自信もない。オリンピックを決めるには絶対の自信を持って臨まなければいけない、でも自信を持てない。そういう葛藤が大きかったです。
――1学年下の廣中璃梨佳選手(日本郵政グループ)との激闘でしたね。
田中 廣中さんは高校時代から気持ちの強い印象があって、ずっと2人で成長してきたというイメージです。不安があったからこそ、最後までどっちが勝つかわからないレースになったと思います。それでも、自信がないレースにしては、絶対に負けられないという気迫を見せられたのかなと思っています。あの時は無心でした。
――田中選手といえば、フィニッシュ後にトラックに向かって大きな声で挨拶される姿が印象に残っているファンも多いようです。
田中 高校(西脇工高・兵庫)では、トラックに一礼する習慣があって、卒業後もそういう姿勢を大事にしたいと思って今も続けています。日本選手権など大舞台で勝てた時はうれしい気持ちも大きく、心から感謝の気持ちでありがとうございました、という声が出ているのかなと思います。
もちろん、レース内容によって大きな声を出せるかはわかりませんが……。たとえ納得のいかないレースであったとしても、しっかり走り切れたこと、またこの場所に戻ってきたいということの気持ちとして、一礼することは絶対に続けていきたいと思っています。
――日本選手権クロカンはどんなレースになりそうですか。意気込みも含めて教えてください。
田中 スローになるかもしれないし、先行逃げ切りができるような展開になるかもしれません。どっちに転ぶかわかりませんが、どんな展開になっても対応してきたいです。
クロカンは不整地なので故障のリスクも高くなるのですが、トラックシーズンでしっかりまとめることを考えた時に、クロカンを走っても故障しないくらいの身体を作れていないとダメなのかなと思っています。
2年前は優勝できているので、今回も優勝を目指していきます。しっかり勝ち切れたという自信を作りたいです。
――オリンピックイヤーとなるトラックシーズンに向けてプランを教えてください。
田中 例年通りのスケジュールで進めば、1500mなどのレースを春からのグランプリシリーズで出場していきたいです。スピードとスタミナの融合という面で完璧ではないので、スピードだけ、スタミナだけ、という練習ではなく、両方兼ね備えたきつい練習をやって磨いていきます。
3000mや5000mなどいろいろな大会に出て、オリンピックに向けていろんな種目を経て調整していきたいと考えています。
◇第104回日本選手権クロスカントリー・第36回U20日本選手権クロスカントリー
五輪代表の田中希実をはじめ、日本を代表するトップランナーたちが多数出場する第104回日本選手権クロスカントリー・第36回U20クロスカントリーは2月27日、福岡県・国営海の中道海浜公園クロスカントリーコースで開催される。
大会の模様は同日午後3時30分から、RKB毎日放送が中継を担当し、TBS系列JNN全国28局ネットで放送。スタジオ解説を瀬古利彦氏(日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダー)、増田明美氏、青学大・原晋監督、男女レース解説を東海大・両角速監督が務める。
構成/向永拓史 協力/RKB毎日放送株式会社 RECOMMENDED おすすめの記事
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