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2026.05.11

【竹澤健介の視点】王者・鈴木芽吹選手の「アベレージ力」光る 世界へのスタートラインはアジアを制すること/木南記念
【竹澤健介の視点】王者・鈴木芽吹選手の「アベレージ力」光る 世界へのスタートラインはアジアを制すること/木南記念

26年木南記念のアジア大会選考レースを制した鈴木芽吹(トヨタ自動車)

5月10日に木南記念で行われた名古屋アジア大会代表選考最重要競技会の男子10000mで、男子は鈴木芽吹(トヨタ自動車)がアジア大会派遣設定記録(27分31秒27)をクリアする27分20分11秒で優勝し、初の代表に内定した。女子は田中希実(豊田自動織機)が31分41秒22で優勝したが、派遣設定記録(31分14秒63)には届かず即時内定とはならなかった。2008年北京五輪5000m、10000m代表の竹澤健介さん(摂南大ヘッドコーチ)に、レースを振り返ってもらった。

◇ ◇ ◇

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鈴木芽吹選手の今回の走りについては「素晴らしいの一言」です。この2年のアベレージは、昨年11月に樹立した日本記録(27分05秒92)をはじめ相当に水準が高く、昨年は日本選手権も初優勝を果たしました。今回の結果で、「速さ」だけではなく「強さ」にもさらに磨きがかかり、まさに10000mにおいてはまぎれもない日本トップランナーだと言えるでしょう。

記録面でも、鈴木選手にとってはセカンドベスト。気温は20度を超えていましたが、湿度はそれほど上がらず、走りやすい気象条件だったと思います。レースも1000m2分45秒前後のペースを刻み、5000m通過が13分46秒。他の選手にとっては速いと感じたかもしれませんが、鈴木選手にとってはちょうどいい展開になったのではないでしょうか。

このあたりの余裕度の差が、結果に表れていると思います。誰かが飛び出す展開もなく、一定の流れで隊列も縦長となりました。鈴木選手は序盤は後方に控え、隊列が崩れ出すとスッと前に動く。そして、残り3000mで勝負を決めるという、“横綱相撲”のレースでした。

出場メンバーの中では、当初から頭一つ抜けた存在と見られていました。その中で力を出し切るのは、決して簡単なことではありません。昨年の日本選手権なども含め、勝負で勝ち続ける。外国人選手がいる中でも日本人トップでフィニッシュし続けているということは、やはり力がある選手ではないとできません。

鈴木選手はそういった意味でも、抜け出た存在になってきた。26分台も十分に視野に入ってきているでしょう。次はもう1ランク上の選手たちと、集団の位置取りが激しく入れ替わるような展開でどんな走りをするかを見てみたいです。それが、9月のアジア大会になるでしょうか。

アジア大会では、昨年のアジア選手権金メダルのガルビア・シン(インド)や中東勢が強敵となります。鈴木選手は味大会でシン選手に敗れて2位。来年の北京世界選手権、再来年のロサンゼルス五輪で世界と勝負する土俵に上がるためには、まずアジア大会を勝ち切ることがスタートラインとなるでしょう。

シン選手の持ち味はラストのキレ。おそらく、最後のスプリント勝負を見据えて後ろにつく展開に持ち込むはずです。鈴木選手としては、そのシン選手をどう引き離すか。どのタイミングで、どんなアクションを起こすかが、アジア大会でのカギとなると見ています。

それでも、このアベレージ力はさらに一皮むける前兆のように感じています。アジアをステップに、世界での勝負に向かう鈴木選手の姿を見てみたいです。

2位の亀田仁一路選手(旭化成)が大幅自己新の27分40秒41、3位の西澤侑真選手(トヨタ紡織)が27分56秒13。4位だった小林歩選手(SUBARU)が復調気配を見せ、学生の藤田大智選手(中大)が5位と健闘しました。新しい力の台頭を感じながらも、さらなるレベルアップが必要だと感じたレースでもありました。

女子は、田中希実選手(New Balance)が今、自分ができることをしっかりと見定めた、落ち着いた走りを見せたのではないでしょうか。

5月4日のゴールデンンゲームズinのべおかでは16分00秒89にとどまり、苦しい結果になりました。それでも、この1週間で今でき得る最大限の調整をして、しっかりとトップを取る。勝負に勝つことは非常に大切なことで、自身を取り戻すレースになったはずです。

32分08秒39で2位の樺沢和佳奈選手(三井住友海上)は、苦しくても粘り強く走ることができたのは力がついた証拠。ハーフまで走れるようになり、持ち味のスピードを生かし、長い距離でも活躍できる流れが作れていると感じました。

日本の中長距離全体が、記録に対する心理的な壁が下がってきています。とはいえ、日本で勝てたからといって、すぐに世界で通用するわけではありません。マラソンで2時間切りが達成されたように、残念ながら世界のスピードは日本とは別次元にあります。

しかし、それでも国内で、いろいろな種目で競い合うことが大切。そして、その力を海外レースでもしっかりと発揮し、国内と海外の記録の差を縮めていくことが、世界に少しでも近づくための方法の一つだと考えます。

◎竹澤健介(たけざわ・けんすけ)
摂南大陸上競技部ヘッドコーチ。早大3年時の2007年に大阪世界選手権10000m、同4年時の08年北京五輪5000m、10000mに出場。箱根駅伝では2年時から3年連続区間賞を獲得した。日本選手権はエスビー食品時代の10年に10000mで優勝している。自己ベストは500m13分19秒00、10000m27分45秒59。

5月10日に木南記念で行われた名古屋アジア大会代表選考最重要競技会の男子10000mで、男子は鈴木芽吹(トヨタ自動車)がアジア大会派遣設定記録(27分31秒27)をクリアする27分20分11秒で優勝し、初の代表に内定した。女子は田中希実(豊田自動織機)が31分41秒22で優勝したが、派遣設定記録(31分14秒63)には届かず即時内定とはならなかった。2008年北京五輪5000m、10000m代表の竹澤健介さん(摂南大ヘッドコーチ)に、レースを振り返ってもらった。 ◇ ◇ ◇ 鈴木芽吹選手の今回の走りについては「素晴らしいの一言」です。この2年のアベレージは、昨年11月に樹立した日本記録(27分05秒92)をはじめ相当に水準が高く、昨年は日本選手権も初優勝を果たしました。今回の結果で、「速さ」だけではなく「強さ」にもさらに磨きがかかり、まさに10000mにおいてはまぎれもない日本トップランナーだと言えるでしょう。 記録面でも、鈴木選手にとってはセカンドベスト。気温は20度を超えていましたが、湿度はそれほど上がらず、走りやすい気象条件だったと思います。レースも1000m2分45秒前後のペースを刻み、5000m通過が13分46秒。他の選手にとっては速いと感じたかもしれませんが、鈴木選手にとってはちょうどいい展開になったのではないでしょうか。 このあたりの余裕度の差が、結果に表れていると思います。誰かが飛び出す展開もなく、一定の流れで隊列も縦長となりました。鈴木選手は序盤は後方に控え、隊列が崩れ出すとスッと前に動く。そして、残り3000mで勝負を決めるという、“横綱相撲”のレースでした。 出場メンバーの中では、当初から頭一つ抜けた存在と見られていました。その中で力を出し切るのは、決して簡単なことではありません。昨年の日本選手権なども含め、勝負で勝ち続ける。外国人選手がいる中でも日本人トップでフィニッシュし続けているということは、やはり力がある選手ではないとできません。 鈴木選手はそういった意味でも、抜け出た存在になってきた。26分台も十分に視野に入ってきているでしょう。次はもう1ランク上の選手たちと、集団の位置取りが激しく入れ替わるような展開でどんな走りをするかを見てみたいです。それが、9月のアジア大会になるでしょうか。 アジア大会では、昨年のアジア選手権金メダルのガルビア・シン(インド)や中東勢が強敵となります。鈴木選手は味大会でシン選手に敗れて2位。来年の北京世界選手権、再来年のロサンゼルス五輪で世界と勝負する土俵に上がるためには、まずアジア大会を勝ち切ることがスタートラインとなるでしょう。 シン選手の持ち味はラストのキレ。おそらく、最後のスプリント勝負を見据えて後ろにつく展開に持ち込むはずです。鈴木選手としては、そのシン選手をどう引き離すか。どのタイミングで、どんなアクションを起こすかが、アジア大会でのカギとなると見ています。 それでも、このアベレージ力はさらに一皮むける前兆のように感じています。アジアをステップに、世界での勝負に向かう鈴木選手の姿を見てみたいです。 2位の亀田仁一路選手(旭化成)が大幅自己新の27分40秒41、3位の西澤侑真選手(トヨタ紡織)が27分56秒13。4位だった小林歩選手(SUBARU)が復調気配を見せ、学生の藤田大智選手(中大)が5位と健闘しました。新しい力の台頭を感じながらも、さらなるレベルアップが必要だと感じたレースでもありました。 女子は、田中希実選手(New Balance)が今、自分ができることをしっかりと見定めた、落ち着いた走りを見せたのではないでしょうか。 5月4日のゴールデンンゲームズinのべおかでは16分00秒89にとどまり、苦しい結果になりました。それでも、この1週間で今でき得る最大限の調整をして、しっかりとトップを取る。勝負に勝つことは非常に大切なことで、自身を取り戻すレースになったはずです。 32分08秒39で2位の樺沢和佳奈選手(三井住友海上)は、苦しくても粘り強く走ることができたのは力がついた証拠。ハーフまで走れるようになり、持ち味のスピードを生かし、長い距離でも活躍できる流れが作れていると感じました。 日本の中長距離全体が、記録に対する心理的な壁が下がってきています。とはいえ、日本で勝てたからといって、すぐに世界で通用するわけではありません。マラソンで2時間切りが達成されたように、残念ながら世界のスピードは日本とは別次元にあります。 しかし、それでも国内で、いろいろな種目で競い合うことが大切。そして、その力を海外レースでもしっかりと発揮し、国内と海外の記録の差を縮めていくことが、世界に少しでも近づくための方法の一つだと考えます。 ◎竹澤健介(たけざわ・けんすけ) 摂南大陸上競技部ヘッドコーチ。早大3年時の2007年に大阪世界選手権10000m、同4年時の08年北京五輪5000m、10000mに出場。箱根駅伝では2年時から3年連続区間賞を獲得した。日本選手権はエスビー食品時代の10年に10000mで優勝している。自己ベストは500m13分19秒00、10000m27分45秒59。

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