◇東京世界陸上(9月13日~21日/国立競技場) 8日目
東京世界陸上8日目のモーニングセッションが行われ、女子20km競歩で藤井菜々子(エディオン)が1時間26分18秒の日本新記録で銅メダルを獲得した。日本女子競歩では世界大会史上初のメダルという快挙となる。
「絶対にメダルを取りたい」
強い気持ちを持ってスタートラインに立った藤井。スタート直後はスローペースだったが、気温がそれほど高くなかったこともあり、「中盤以降上がった」と8kmで先頭集団は34分59秒で通過。藤井は先頭集団につきながら「どんどんと絞られていく中でも余裕があった」と言う。
一度は後ろに下がりそうになったが、「動きが硬くなってきたように思ったので、伸び伸び歩きたい」とあえてフォームをチェックする気持ちの余裕もあった。
15km以降はメダル争いの渦中に。両脚が離れる「ロス・オブ・コンタクト」の警告を2つ受けるなか、3番手で国立競技場へ帰ってきた。後ろから4位のP.M.トーレス(ベネズエラ)が迫ったのは「気がつかなかった」とヒヤリとしたが、両手を挙げてフィニッシュした。
「最後に乗り切れたのは、本当にメダルを取るという強い気持ち」があった。背中を押したのは沿道の大歓声と、天国で見守ってくれる恩師の声だった。8月の北海道での合宿中、川越学コーチが急逝。「お父さんみたいな存在で、私がテンパると『大丈夫だから』といつも言ってくれました」。今回、スタート前にその落ち着く声は聞こえなかったが、「レース中に見守ってくれる」と、胸に喪章に何度も手をやり、天国からの声を聞いた。
もう一つ、特別なレースでもある。その背中を追いかけ続けてきた先駆者・岡田久美子(富士通)は今季限りで引退を表明。「19年ドーハからずっと代表で一緒で、生活などいろんな面を見てきました」。スタート前には「悲しいですが、噛み締めて歩きます、と伝えました」。
少しして岡田がフィニッシュ。その姿に目をやると近づき、銅メダルを岡田の首にそっと掛けた。「岡田さんと一緒のレースでメダルを取れたのは大きな意味がある。少しでも恩返しができたかな」と藤井は照れくさそうに笑った。
昨年のパリ五輪もケガの影響で力を発揮できず。それにより「歩型と初めて本気で向き合った」。2月の日本選手権では1時間26分33秒の日本新を樹立。「ようやくメダルを目指せると言える」と胸を張っていた。
だが、5月に左膝を痛めると、「ガングリオン」(関節の周囲にできるしこり)だと診断され、3週間は練習をストップ。昨年はどん底まで落ち込んだが、今回はパリ五輪の悔しさから「冷静に対処できた」とあきらめずに目を向いた。
自身の日本新を更新するおまけ付きで「フィニッシュ後にカメラマンの方に言われて知った」が、「日本選手権前よりも良い練習ができていたので、このくらいでるかな」と思えるようになったのは、自力が大きく上がった証だ。
これま19年ドーハ、22年オレゴンでの入賞など、早くから結果を残してきたが、その潜在能力はもっと上を目指せると、関係者から期待を集めていた。自国開催の世界陸上でようやく本領発揮した。
「男子がメダルをずっと取っていて、どうして女子は弱いのか、と海外から言われていたと聞いています。ずっと責任を感じていました。金メダルへの一歩を踏み出せたと思います」
第一人者のラストウォークと、初のメダル。9月20日は、日本女子競歩の歴史にとって大きなターニングポイントとなるだろう。
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2026.03.21
プレス工業に阿見ACのアブラハムが加入! 「長距離への転向とロードレースに注力したい」
-
2026.03.21
-
2026.03.21
-
2026.03.21
-
2026.03.21
-
2026.03.21
2026.03.16
GMO・吉田圭太と100mHの安達楓恋が結婚!「これからも二人で」青学大の先輩後輩
2026.03.16
ニューイヤー駅伝 27年からインターナショナル区間を選択制に! アンカー7区は距離延長
-
2026.03.15
-
2026.03.16
-
2026.03.15
-
2026.02.27
-
2026.03.16
-
2026.03.07
-
2026.03.01
Latest articles 最新の記事
2026.03.21
東京世界陸上男子20km競歩7位の吉川絢斗がサンベルクスを退社 「自分の可能性に挑戦していきたい」
2025年東京世界選手権男子20km競歩で7位に入賞している吉川絢斗が3月21日、自身のインスタグラムで3月20日をもってサンベルクスを退社したと発表した。 神奈川・中大附横浜高ではインターハイ5000m競歩で6位入賞。 […]
2026.03.21
プレス工業に阿見ACのアブラハムが加入! 「長距離への転向とロードレースに注力したい」
プレス工業陸上部は3月21日、チームのSNSで阿見ACのグエム・アブラハムが4月1日付で加入すると発表した。 アブラハムは南スーダン出身の26歳。2021年東京五輪に1500m、24年パリ五輪には800mで代表入りし、世 […]
2026.03.21
早大入学の高校生が快走! 鳥取城北・本田桜二郎が3000m高校歴代3位、西脇工・新妻遼己は10位
「Spring Trial in Waseda」は3月21日、埼玉県所沢市の早大所沢キャンパス織田幹雄記念陸上競技場で行われ、男子3000mで本田桜二郎(鳥取城北高3)が高校歴代3位の7分55秒77をマークした。 本田は […]
2026.03.21
世界室内にパリ五輪女子800m銀メダリストのドゥグマら出場できず ビザ申請が承認されず
ポーランドで3月20日から開催されている世界室内選手権に、エチオピアのT.ドゥグマら複数の選手がビザの問題で入国できず、参加できないことが報じられている。 ドゥグマは女子800mのパリ五輪銀メダリスト。24年には世界室内 […]
2026.03.21
米国が5月の世界リレー男女4×400mリレー派遣見送りへ トップ選手が参加を希望せず
5月2、3日にボツワナで開催される世界リレーに、米国が男子・女子の4×400mリレーへ選手を派遣しないことが明らかとなった。他の種目については出場予定となっている。 「(同大会へ)参加を希望する米国のトップアスリートを見 […]
Latest Issue
最新号
2026年4月号 (3月13日発売)
別冊付録 記録年鑑 2025
東京マラソン、大阪マラソン、名古屋ウィメンズマラソン