2025.09.11
「今の自分」に問いかけ、「明日から頑張ろう」と思える映画
『ひゃくえむ。』は9月19日に全国上映がスタートする。そのタイミングは、9月13日開幕の東京世界陸上と重なり、その相乗効果が期待される。江里口さんに世界陸上への思いとともに、映画の見どころを聞いた。
江里口 世界陸上がもちろん盛り上がって、映画も盛り上がることが、一番観たい未来です。世界陸上の男子100mは公開前の9月13日に予選、9月14日に準決勝と決勝。公開後には4×100mリレーの予選が20日、決勝が21日に行われます。
世界陸上をとおして「陸上」に触れる機会が多いと思うので、ぜひリアルな陸上を直接だったり、テレビを通してだったり、とにかく観てほしいです。そして、その感動のままに劇場にも足を運んでもらって、この作品も観てほしいと思います。
この作品の素晴らしい部分の一つは、走ることだけじゃなく、100mに人生を懸けた人たちの人間模様。アニメではありますが、「実際の選手たちも、こういうことを感じながら戦っているんだろうな」と感じながら観てもらいたいです。
これから日本代表を目指すような若い選手たちには、自分の将来を思い描きながら観てほしい。100m以外が専門の選手にとっても、「自分にとっての陸上」を考えるきっかけになるんじゃないかなと思います。
また、僕のように現場を支える側に立った人にとっても、考えることが非常に多かった。また、次の一歩を踏み出そうと思えました。陸上に関わる人は、ぜひ観てほしいですね。
もちろん、陸上に関わっていない人にも観ていただきたいです。僕も現役を引退してからしばらくは営業など、会社の仕事に専念して陸上から離れていた時期があります。だから、その時代にこの映画を観たら、どう感じるんだろうとも思いました。
陸上だけに限らず、「今の自分」に問いかけるような内容。みなさん、自分自身を奮闘させながら日々がんばっていると思うので、普段から何かを頑張っている人にとっても観てほしい映画だと思います。
ストーリーに引き込まれますが、テンポよく、流れるように観ることができます。観た後は「明日から頑張ろうかな」と思えるし、今までの自分に対して新しい視点が持てるような気がします。ただの陸上の映画じゃないですよ。
世界陸上も、『ひゃくえむ。』も、いよいよなので、楽しみです!
「トガシたちが見せる姿には本当に共感した」
江里口さんは熊本県出身のスプリンター。鹿本高3年時に国体少年Aを制すと、早大では日本インカレで4連覇の偉業を達成。日本選手権でも早大3年だった2009年から4連覇を飾り、09年ベルリン世界選手権、さらに12年ロンドン五輪の4×100mリレーでいずれも4位入賞を果たしている。そんな輝かしいキャリアの裏側には当然、さまざまな苦難の道のりがあるのだが、「印象に残っているシーンはたくさんあります」と言う江里口さんは、その当時に思いを馳せる。 江里口 今は現役を引退して、コーチとして選手をサポートする立場ではありますが、自分が現役だった頃を思い出すと、自分に自信がなくなった時もありました。 その中で、100mとどう向き合うか。人それぞれに葛藤があり、それを消化してレースに臨むわけです。ケガや伸び悩みなど、途中で挫折して100mをあきらめる人もいますし、大事な試合の直前にケガをする経験は僕にもあります。でも、競技に向き合い、その時その時に前を向いてやるしかないんです。 だから、本当に共感する部分が多かった。トガシたちが見せる姿は、本当にリアリティがありました。 今回、江里口さんが務めたのは主人公の1人、トガシの高校生以降の試合シーンのスプリントフォーム役。作品のリアルさの1つに「動き」があり、キャラクターの動きは実際の映像から描き起こす「ロトスコープ」が採用された。江里口さんは何度もダッシュの様子を撮影したという。 映画全体のストーリーの中で、競技時間がわずか10秒のレースが占める割合は決して多くはない。だからこそ制作サイドは競技シーンにこだわり、「走りが見えるシーンにちゃんとリアリティがないと、説得力のない映画になる」(寺田プロデューサー)と、とことん追求した。 小宮役は2024年世界リレー代表の山本匠真選手(広島大)、海棠役は北京五輪4×100mリレー銀メダルの朝原宣治さん(大阪ガス陸上競技部副部長)、財津役は400mで五輪3大会連続出場の金丸祐三さん(大阪成蹊大監督)がそれぞれ務めるほか、東京世界陸上200m代表の鵜澤飛羽選手(JAL)は樺木役を担当するなど、キャラクターの動きに美しさ、ダイナミックさを加えている。 江里口 撮影は昨年の9月、今年の2月の2回やりました。1回目が動きの撮影。スタートブロックからのダッシュを、シューズとスパイクでやりました。 いろいろなアングルから撮影したいということで、10m~30mぐらいの距離を合計10本はいかないぐらいの本数。途中から楽しくなっていました(笑)。 バトンパスもやっていて、プロデューサーの寺田さんとつないでいます。でも、今回の作品で登場しているのがこれまで経験したことのない手の出し方だったので、映像を見ながら何回かやり直しています。「僕の手の位置がちょっと高いですね」と。 2月は音録り。ここでは朝原宣治さんや、大阪ガスがサポートしているNOBY T&F CLUBの子供たちもと一緒に走りました。グラウンドでシューズやスパイクで走るというものでしたが、9月に比べると走る距離が長かったので実はしんどかったです(笑) スタッフの方からは、「自分のタイミングで出て、100m走ってください」と。それも「2本欲しいです」。1本走った後に、グラウンドを水浸しにして、その中で2本目を走りました。「雨の中のシーンもあるので、その中で走る音が……」ということでした。大変なこともありましたが、とても楽しく走らせてもらいました。 実は、この撮影や音録りにあたっては準備をしました。ケガどうこうよりも、変な走りは見せられないと思って(笑)。少しだけ走りのリハビリをして臨みました。「今の自分」に問いかけ、「明日から頑張ろう」と思える映画
『ひゃくえむ。』は9月19日に全国上映がスタートする。そのタイミングは、9月13日開幕の東京世界陸上と重なり、その相乗効果が期待される。江里口さんに世界陸上への思いとともに、映画の見どころを聞いた。 江里口 世界陸上がもちろん盛り上がって、映画も盛り上がることが、一番観たい未来です。世界陸上の男子100mは公開前の9月13日に予選、9月14日に準決勝と決勝。公開後には4×100mリレーの予選が20日、決勝が21日に行われます。 世界陸上をとおして「陸上」に触れる機会が多いと思うので、ぜひリアルな陸上を直接だったり、テレビを通してだったり、とにかく観てほしいです。そして、その感動のままに劇場にも足を運んでもらって、この作品も観てほしいと思います。 この作品の素晴らしい部分の一つは、走ることだけじゃなく、100mに人生を懸けた人たちの人間模様。アニメではありますが、「実際の選手たちも、こういうことを感じながら戦っているんだろうな」と感じながら観てもらいたいです。 これから日本代表を目指すような若い選手たちには、自分の将来を思い描きながら観てほしい。100m以外が専門の選手にとっても、「自分にとっての陸上」を考えるきっかけになるんじゃないかなと思います。 また、僕のように現場を支える側に立った人にとっても、考えることが非常に多かった。また、次の一歩を踏み出そうと思えました。陸上に関わる人は、ぜひ観てほしいですね。 もちろん、陸上に関わっていない人にも観ていただきたいです。僕も現役を引退してからしばらくは営業など、会社の仕事に専念して陸上から離れていた時期があります。だから、その時代にこの映画を観たら、どう感じるんだろうとも思いました。 陸上だけに限らず、「今の自分」に問いかけるような内容。みなさん、自分自身を奮闘させながら日々がんばっていると思うので、普段から何かを頑張っている人にとっても観てほしい映画だと思います。 ストーリーに引き込まれますが、テンポよく、流れるように観ることができます。観た後は「明日から頑張ろうかな」と思えるし、今までの自分に対して新しい視点が持てるような気がします。ただの陸上の映画じゃないですよ。 世界陸上も、『ひゃくえむ。』も、いよいよなので、楽しみです!RECOMMENDED おすすめの記事
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