2025.07.31

同級生の指導者たちの頑張り
視点を卒業生から大学時代の同級生に移す。携帯のグループLINEの“1980年度卒業順天陸上部同期会”からはインカレ、日本選手権、インターハイや8月に開催される全日中に向けて数々のメッセージが寄せられ、盛り上がる。
私と同級生ということで、およそ67歳になる年代の集まりである。若い頃は「愛したい、恋したい」という年頃であったが、この年になると「足痛い、腰痛い」に移行するのも定めと受け止めるしかない年齢である。
平均60歳で定年を迎えたとして、再任用で教壇に立ちつつ部活動の指導を継続していたり、はたまた地元で小・中学生の活動の場として陸上クラブや教室を運営したりサポートしたりしている元気溌溂な方々が大勢おられる。
日本選手権の際には静岡の宇藤昭宏くんからグループLINEに「日本選手権を観に行ってきました。教え子が3人出場していました。女子400m4位・女子1500m3位・男子走幅跳6位。こんな経験は初めてで、ビックリしましたが、やはり教え子が活躍してくれるとうれしいものですね!」と投稿されてきた。宇藤君は静岡の草薙競技場を拠点に、SAC(静岡アスリートクラブ)で指導をしている。

静岡アスリートクラブの練習の様子
新潟県の中林左知男君からは、「新潟県通信陸上で棒高跳で全中決めてくれた!」との連絡があり、高知県の下坂克人君から「陸上クラブや中学での教え子が5名全中を決めた!」と連絡が来た。下坂君は中村中で部活の外部顧問として指導しつつ、中村JACで子供たちに陸上競技の基礎となる動きについて指導している。
下坂君は「小学生のうちに基礎的な動き作りや正しい身体の動かし方を1週間のうちに1度でも良いから指導して身につけておいてくれたら、中学や高校に進んでから専門的な競技として取り組んだ時に伸び率も変わる。そして、ケガや故障で苦しむリスクも軽減する。だから自分たちがこれまでの指導で得た経験と知識を少しでも若い世代に伝え残したいと思って取り組んでいる」と熱い気持ちを語ってくれた。
静岡の宇藤君も「自分の身体を正しくコントロールする能力はジュニアの時代に養うべきで、その動きの基本の延長線上に後の競技力がある。だからそれを指導したい。私たちは陸上競技を通してたくさん得るものがあった。だから、そのことを子供達に伝えたい。悔しいことも経験するかもしれないが、その体験を達成感に変える瞬間を子供達に体験させたい」と情熱を迸らせるように語ってくれた。
全国には数多の陸上クラブが存在する。スポンサーが存在し運営資金を出資してもらえるクラブはほとんどなかろう。少子化で人数が減って赤字運営でも、時間の都合をつけ練習場所を確保し、暑い夏も寒い冬も子供たちとともにご指導されているのは並大抵のことではない。陸上競技に対する愛情と、陸上に取り組む子供たちの未来の笑顔が想像できるからだろう。
ほとんど手弁当の指導者の皆さんが教えた子供たちがいつしか『月刊陸上競技』の表紙を飾る日が来ることを信じている。すでにほとんどのトップアスリートはそのような陸上競技と出合うきっかけを作ってくれたジュニア時代の経験があるのではないだろうか。
米国の五輪・パラリンピック委員会は毎年五輪クラスのコーチから科学技術の分野に至る8部門のコーチオブザイヤーを表彰している。その中に年間最優秀育成コーチという部門がある。ジュニアの育成と普及に貢献し、運動能力と並行して人格形成を優先するコーチに送られるそうだ。
2024年はスピードスケートクラブを運営指導するトム・アンダーソン氏が受賞した。育成部門で一人を特定するのはなかなか至難と思われるが、この賞を創設した視点は素晴らしい。
このような立派な賞を贈ることはかなわないが、子供たちの育成に情熱を傾ける指導者の皆さんにこのコラムに敬意を込めて感謝を贈らせていただきたい。
8月に沖縄で開催される全日本中学選手権も暑熱対策開催とはいえ、南国の照りつける太陽に負けない暑き戦いに期待が膨らむ。
上田誠仁 Ueda Masahito/1959年生まれ、香川県出身。山梨学院大学スポーツ科学部スポーツ科学科教授。順天堂大学時代に3年連続で箱根駅伝の5区を担い、2年時と3年時に区間賞を獲得。2度の総合優勝に貢献した。卒業後は地元・香川県内の中学・高校教諭を歴任。中学教諭時代の1983年には日本選手権5000mで2位と好成績を収めている。85年に山梨学院大学の陸上競技部監督へ就任し、92年には創部7年、出場6回目にして箱根駅伝総合優勝を達成。以降、出雲駅伝5連覇、箱根総合優勝3回など輝かしい実績を誇るほか、中村祐二や尾方剛、大崎悟史、井上大仁など、のちにマラソンで世界へ羽ばたく選手を多数育成している。2022年4月より山梨学院大学陸上競技部顧問に就任。 |

第59回「酷暑の好記録と指導者たちの育成力」
猛暑! この言葉で誰もが合点するほどの暑さである。7月24日には北海道北見市で39度を記録。この時期に開催されるホクレン・ディスタンスチャレンジや関東学生網走夏季記録挑戦競技会は、凉と記録を求めてはるばる移動してきた選手や指導者たちにとって、慟哭の悲鳴を上げたくなるほどのコンデションであったろう。 とはいえ、気象条件を呪ったところで変わるわけもない。与えられた環境の中で自己記録の更新や、納得の内容で北海道を後にした選手もいたことを思えば、走れない理由を気象条件ばかりに被せるわけにはいかぬところである。 そして、暑熱対策を施して競技日程や、方式が変更された状態で、広島市にて全国高校総体が開催された。男子1500mは入賞ラインが3分45秒以内。5000mは初のタイムレース決勝開催となり、13分台でなければ入賞できないというハイレベルな戦いを展開している。 午後7時といえども広島である。涼風が吹く好条件ではないことを思えば、速さと逞しさを兼ね備えた若き選手たちの今後に期待が膨らむ。 さらに、星稜高(石川)の清水空跳君(2年)が100m10秒00(+1.7)という驚愕の記録を打ち立てた。暑さをどこかに吹き飛ばすほどの息吹を感じ胸が躍る。 [caption id="attachment_131862" align="alignnone" width="800"]
同級生の指導者たちの頑張り
視点を卒業生から大学時代の同級生に移す。携帯のグループLINEの“1980年度卒業順天陸上部同期会”からはインカレ、日本選手権、インターハイや8月に開催される全日中に向けて数々のメッセージが寄せられ、盛り上がる。 私と同級生ということで、およそ67歳になる年代の集まりである。若い頃は「愛したい、恋したい」という年頃であったが、この年になると「足痛い、腰痛い」に移行するのも定めと受け止めるしかない年齢である。 平均60歳で定年を迎えたとして、再任用で教壇に立ちつつ部活動の指導を継続していたり、はたまた地元で小・中学生の活動の場として陸上クラブや教室を運営したりサポートしたりしている元気溌溂な方々が大勢おられる。 日本選手権の際には静岡の宇藤昭宏くんからグループLINEに「日本選手権を観に行ってきました。教え子が3人出場していました。女子400m4位・女子1500m3位・男子走幅跳6位。こんな経験は初めてで、ビックリしましたが、やはり教え子が活躍してくれるとうれしいものですね!」と投稿されてきた。宇藤君は静岡の草薙競技場を拠点に、SAC(静岡アスリートクラブ)で指導をしている。 [caption id="attachment_131862" align="alignnone" width="800"]
上田誠仁 Ueda Masahito/1959年生まれ、香川県出身。山梨学院大学スポーツ科学部スポーツ科学科教授。順天堂大学時代に3年連続で箱根駅伝の5区を担い、2年時と3年時に区間賞を獲得。2度の総合優勝に貢献した。卒業後は地元・香川県内の中学・高校教諭を歴任。中学教諭時代の1983年には日本選手権5000mで2位と好成績を収めている。85年に山梨学院大学の陸上競技部監督へ就任し、92年には創部7年、出場6回目にして箱根駅伝総合優勝を達成。以降、出雲駅伝5連覇、箱根総合優勝3回など輝かしい実績を誇るほか、中村祐二や尾方剛、大崎悟史、井上大仁など、のちにマラソンで世界へ羽ばたく選手を多数育成している。2022年4月より山梨学院大学陸上競技部顧問に就任。 |
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