2025.06.30
真名子監督のスカウトきっかけに「挑戦」
大濱の才能は高校時代から際立っていた。宮城・仙台育英高3年時に、インターハイで5000m日本人2位。10000mでは現在も高校歴代6位となる28分33秒58をマークした。「高1ではケガに悩まされましたが、高2、高3で継続的に練習を積めたのが伸びた要因です」と分析する。
大東大へは雰囲気の良さが決め手となり入学。真名子監督の評価は入学時から高く、「チームのエース、日本のエースになってほしい。彼の持ち味はスピード。ゾーンに入るとそのまま突き進む」。昨年の出雲駅伝は2区3位、全日本1区5位。「大学駅伝ではどの選手も前半から突っ込んでいく」と大濱は感じたといい、今季は前半シーズンで培ったスピードを、駅伝で生かしていくつもりだ。
大濱が走り始めたのは小学生の頃。サッカー少年だったが、校内の持久走大会で1位を目指していた。小4で埼玉から宮城へ転居。ところが「転校した先では持久走大会がなく、市民マラソン大会に出始めたのがきっかけでした」。純粋に「勝ちたい」という気持ちが競技人生の第一歩だった。
中学時代の3000mベストは8分44秒35。「努力が結果に表れる。つらいけどそこが魅力です」と陸上にのめり込んだ。箱根駅伝へのあこがれはあったが、ランナーとしての将来像は具体的には描いていなかった。
転機は当時仙台育英高にいた真名子監督のスカウト。「母親に『こんなチャンスはない』と言われ、挑戦のつもりで仙台育英を選びました」。中3から再び埼玉に戻っていたが、県外の強豪校で未来のエースへ飛躍が始まることになる。
真名子監督は大濱にとって、陸上人生の導き手となっている存在だ。「少し調子が悪くても、『お前の集中力があれば走れるよ』と声をかけてくれます」。前向きな言葉が大濱の心を支えている。「監督がいなかったら仙台育英高にも大東大にもいなかった。卒業後も結果で恩返ししたいです。『一番の教え子』と言われる選手になりたいですね」。
2025年後期の駅伝シーズンに懸ける思いも強い。チームには入濵輝大(4年)や棟方一楽(3年)といった力のある上級生がチームを支える。「まだ自分がエースと言い切れるレベルではありません。自信を持って言えるように力をつけたい」と目を輝かせる。
真名子監督が描く「日本のエース」への道は始まったばかり。箱根を、日本選手権を、そして世界の舞台を、大濱のスピードが切り裂く日がいつか来るだろう。

全日本大学駅伝関東地区選考会では3組で堂々の1着となった
◎おおはま・たくま/2005年9月2日生まれ、埼玉県桶川市出身。埼玉・桶川東中→宮城・仙台育英高→大東大。自己記録5000m13分35秒78、10000m28分33秒58、ハーフマラソン1時間1分08秒。
文/荒井寛太

箱根の悔しさを糧に成長
5月の全日本大学駅伝関東地区選考会で、大東大は総合2位で本戦切符をつかんだ。その3組目、選考会独特の緊張感の中で大濱逞真(2年)が鮮やかに1着を奪った。「1、2組が下級生中心のメンバーでしっかり走ってくれたので、3組で自分と中澤(真大、2年)で勢いを加速させるつもりで走りました」と振り返る。 残り2000m。大濱は気持ちのギアを切り替える。「ラストスパートが強み。得意な展開に持ち込めたので、1着を取ってやろうと思いました」。冷たい雨が降りしきる中で使命感が燃える。鋭いキレのある走りでライバルたちを突き放し、フィニッシュラインを駆け抜けた。 チームの総合力も光った。「8人全員が持てる力を出し切れたのが良かったと思います」と大濱。昨季は学生三大駅伝で振るわなかった大東大だが、新入生も含め、狙った勝負は逃さないという意気込みを感じさせる選考会だった。 6月11日のホクレン・ディスタンスチャレンジの深川大会では、5000mで13分35秒78の自己ベストをマーク。今季前半最大の目標だった、日本選手権申込資格記録(13分38秒00)を突破した。ゴール直後は、力を出し尽くしたかのようにしばらく倒れ込んだ。 「全日本選考会や日体大記録会と連戦で、100%の状態ではありませんでした。後半キツかった部分はありましたが、しっかり走り切れたのは良かったです」と、厳しいコンディションの中での達成感を語る。 一方で、大東大の真名子圭監督の反応は意外にも冷静だったという。「そこまで驚いていませんでした。チームメートにも、もっとビックリされるかなと思いましたが、『良かったね』くらい」と笑う。この記録は、1983年に米重修一さん(ソウル五輪5000m、10000m代表)が出した大東大5000m日本人最高記録(13分40秒22)の42年ぶり更新でもあった。 今年の箱根駅伝では1区を担い、大濱は8位でタスキをつなぐ。レース前の真名子監督の指示は明確だった。「中大の吉居駿恭(現4年)が大逃げしても、そこにはつかなくていい」。チームはまさかの総合19位に終わったが、復路のレース後、大濱はひとり強気だった。 「結果論ですが、吉居さんについていったらたぶん行き切れていたなと自分では思っています。六郷橋を越えても余力がありました」。初の10km以上のレースということもあったが、悔しさを滲ませながら大手町でそう語っていた。 その悔しさを晴らすかのように、2月の学生ハーフで1時間1分8秒をマークし、西川千青(現・Honda)の学内最高記録を更新。「もう一度やれたら、途中で追いかける」。自信が記録で裏づけられた。真名子監督のスカウトきっかけに「挑戦」
大濱の才能は高校時代から際立っていた。宮城・仙台育英高3年時に、インターハイで5000m日本人2位。10000mでは現在も高校歴代6位となる28分33秒58をマークした。「高1ではケガに悩まされましたが、高2、高3で継続的に練習を積めたのが伸びた要因です」と分析する。 大東大へは雰囲気の良さが決め手となり入学。真名子監督の評価は入学時から高く、「チームのエース、日本のエースになってほしい。彼の持ち味はスピード。ゾーンに入るとそのまま突き進む」。昨年の出雲駅伝は2区3位、全日本1区5位。「大学駅伝ではどの選手も前半から突っ込んでいく」と大濱は感じたといい、今季は前半シーズンで培ったスピードを、駅伝で生かしていくつもりだ。 大濱が走り始めたのは小学生の頃。サッカー少年だったが、校内の持久走大会で1位を目指していた。小4で埼玉から宮城へ転居。ところが「転校した先では持久走大会がなく、市民マラソン大会に出始めたのがきっかけでした」。純粋に「勝ちたい」という気持ちが競技人生の第一歩だった。 中学時代の3000mベストは8分44秒35。「努力が結果に表れる。つらいけどそこが魅力です」と陸上にのめり込んだ。箱根駅伝へのあこがれはあったが、ランナーとしての将来像は具体的には描いていなかった。 転機は当時仙台育英高にいた真名子監督のスカウト。「母親に『こんなチャンスはない』と言われ、挑戦のつもりで仙台育英を選びました」。中3から再び埼玉に戻っていたが、県外の強豪校で未来のエースへ飛躍が始まることになる。 真名子監督は大濱にとって、陸上人生の導き手となっている存在だ。「少し調子が悪くても、『お前の集中力があれば走れるよ』と声をかけてくれます」。前向きな言葉が大濱の心を支えている。「監督がいなかったら仙台育英高にも大東大にもいなかった。卒業後も結果で恩返ししたいです。『一番の教え子』と言われる選手になりたいですね」。 2025年後期の駅伝シーズンに懸ける思いも強い。チームには入濵輝大(4年)や棟方一楽(3年)といった力のある上級生がチームを支える。「まだ自分がエースと言い切れるレベルではありません。自信を持って言えるように力をつけたい」と目を輝かせる。 真名子監督が描く「日本のエース」への道は始まったばかり。箱根を、日本選手権を、そして世界の舞台を、大濱のスピードが切り裂く日がいつか来るだろう。 [caption id="attachment_131366" align="alignnone" width="800"]
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