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2025.06.20

【世界陸上プレイバック】―07年大阪―16年ぶりの日本開催! ゲイが男子スプリント3冠 マラソン・土佐礼子が3大会ぶり銅
【世界陸上プレイバック】―07年大阪―16年ぶりの日本開催! ゲイが男子スプリント3冠 マラソン・土佐礼子が3大会ぶり銅

男子100mで金メダルを獲得したゲイ。右は当時世界記録保持者で3位だったパウエル

今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。

これまで数々のスーパースター、名勝負が生まれた世界陸上の各大会の様子を紹介する『世界陸上プレイバック』。2007年に大阪の長居スタジアム(現・ヤンマースタジアム長居)で開催された第11回大会を振り返る。

ゲイがパウエル、ボルトに競り勝ち3冠

世界陸上が16年ぶりに日本に帰ってきた。舞台は夏の大阪。スーパースターが集結した。

大会の主役になったのは男子短距離のタイソン・ゲイ(米国)。100m、200m、4×100mリレーで3冠を達成した。

100mは当時の世界記録保持者であるアサファ・パウエル(ジャマイカ)が優位と見られていた。前半はパウエルが得意のスタートで飛び出すも、ゲイが後半に逆転。9秒85(-0.5)で初の栄冠を手にした。

200mでは向かい風0.8mながら19秒76の大会新記録で金メダル。3走を務めた4×100mリレーも37秒78で制し、1999年セビリア大会のモーリス・グリーン(米国)以来となる世界陸上3冠を成し遂げた。

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2位に入ったのは当時21歳のウサイン・ボルト(ジャマイカ)。のちにスーパースターとなるボルトにとってシニアの世界大会初メダルだった。

男子走幅跳ではマイク・パウエルとカール・ルイス(ともに米国)が大激戦を繰り広げた東京大会を彷彿とさせるような熱い戦いが繰り広げられた。

まずは3連覇を目指すドワイト・フィリップス(米国)が1回目から8m30(+0.4)でトップに立つが、前年にIAAFゴールデンリーグ(現・ダイヤモンドリーグ)で6戦5勝の実績を持つイルビング・サラディノ(パナマ)が、3回目に8m46(±0)を跳んで単独トップに立った。5回目を終えた時点でサラディノがトップをキープし、3位から6位までが3㎝にひしめく大混戦となる。

運命の6回目、6位のオレクシー・ルカシェビッチ(ウクライナ)が8m25(+0.2)を跳んで3位に浮上。これで4位に落ちたアンドリュー・ハウ(イタリア)だったが、8m47(-0.2)をマークしてトップに立った。

3連覇に向けてあとがないフィリップスだったが、6回目は8m22(±0)と記録を伸ばせず、3位に終わった。そして5回目までトップだった最終跳躍者のサラディノが、大ジャンプを見せる。自身の持つ南米記録を1㎝更新する8m57(±0)で大逆転勝利を収めた。

女子短距離ではアリソン・フェリックス(米国)が200m、ともに2走を担った4×100mリレー、4×400mリレーで3冠を達成。200mでは100m覇者のベロニカ・キャンベル(ジャマイカ)に0.53秒の大差をつけ、21秒81(+1.7)の自己ベストで連覇を飾った。

米国は男子4×400mリレーでも他国を圧倒。この大会の400mはジェレミー・ウォリナーが当時世界歴代3位の43秒45で制すると、ラショーン・メリットが銀メダル、アンジェロ・テイラーが銅メダルと米国勢がメダルを独占していた。

1走メリット、2走テイラー、3走ダロルド・ウィリアムソン、4走ウォリナーの強力オーダーで挑んだ決勝は、当時世界歴代2位となる2分55秒56で圧勝し、2位のバハマに3秒62の大差をつけた。

男子110mハードルの劉翔(中国)が金メダルを獲得。2004年アテネ五輪を制し、12秒88の世界記録を持っていた彼は大阪の地でも快走した。9レーンからのスタートで、終盤に抜け出し、12秒95(+1.7)で制した。この種目での優勝はアジア人初の快挙だった。

男子走高跳では競技歴1年半のドナルド・トーマス(バハマ)が2m35で優勝。空中で3回足をバタつかせる通称・“垂直三段跳”が話題になった。女子棒高跳はエレーナ・イシンバエワ(ロシア)が4m80で連覇を達成している。

男子20km競歩ではジェファーソン・ペレス(エクアドル)が1時間22分20秒で3連覇。女子砲丸投ではバレリー・ビリ(豪州)が6投目に20m54を投げて逆転優勝を果たし、ここからの4連覇につなげた。

女子マラソン・土佐礼子が2度目の銅

地元の日本は、過去最多の男子45選手、女子36選手が出場し、入賞7という結果を収めたが、メダルは1つにとどまった。

女子マラソンでは土佐礼子(三井住友海上)が2時間30分55秒で銅メダルを獲得。嶋原清子(セカンドウインドAC)が2時間31分40秒で6位入賞を果たした。

レースは37km時点で土佐、嶋原を含め、7人で先頭集団を形成する。残り4kmを切ったところでキャサリン・ヌデレバ(ケニア)が仕掛け、嶋原が脱落。土佐もついていけず、5位に転落した。

女子マラソンで銅メダルを獲得した土佐礼子

しかし、驚異的な粘りで40km過ぎに3位へ浮上。2001年エドモントン大会の銀メダル以来となるメダルを勝ち取った。

男子マラソンでは前回のヘルシンキ大会で銅メダルの尾方剛(中国電力)が2時間17分42秒で2大会連続入賞となる5位。大﨑悟史(NTT西日本)が2時間18分06秒で6位、諏訪利成(日清食品)が2時間18分35秒で7位に続き、トリプル入賞を果たした。

男子4×100mリレーは塚原直貴(東海大)、末續慎吾(ミズノ)、髙平慎士(富士通)、朝原宣治(大阪ガス)が出場。予選ではアジア新記録の38秒21をマークし、全体の3番目のタイムで決勝に進出した。

決勝は初のメダルが期待されるなか、日本は終盤までメダル争いを展開し、5位に入った。タイムは予選でマークしたアジア記録をさらに更新する38秒03だった。

2大会ぶりの出場となった男子ハンマー投の室伏広治(ミズノ)は80m46で6位。過去に2度の銅メダルを獲得している為末大(APF)は終盤に失速して予選敗退に終わった。

男子50km競歩は入賞が期待されていた山﨑勇喜(長谷川体育施設)がラスト1周を残して競技役員の誘導ミスにより競技場に入ってフィニッシュしてしまい、距離不足のため途中棄権に終わるというアクシデントもあった。

男子10000mにはこの年の箱根駅伝で2区区間賞の竹澤健介(早大3)が出場。28分51秒69で12位となった。

室伏、為末、末續といったメダリストに、朝原、走幅跳の池田久美子といったスター選手がそろっていた日本。地元開催を盛り上げようと、メディア出演を重ね、気負い過ぎもありパフォーマンスが発揮できない選手が多かったことは、日本陸上界の大きな反省点として刻まれている。

今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。 これまで数々のスーパースター、名勝負が生まれた世界陸上の各大会の様子を紹介する『世界陸上プレイバック』。2007年に大阪の長居スタジアム(現・ヤンマースタジアム長居)で開催された第11回大会を振り返る。

ゲイがパウエル、ボルトに競り勝ち3冠

世界陸上が16年ぶりに日本に帰ってきた。舞台は夏の大阪。スーパースターが集結した。 大会の主役になったのは男子短距離のタイソン・ゲイ(米国)。100m、200m、4×100mリレーで3冠を達成した。 100mは当時の世界記録保持者であるアサファ・パウエル(ジャマイカ)が優位と見られていた。前半はパウエルが得意のスタートで飛び出すも、ゲイが後半に逆転。9秒85(-0.5)で初の栄冠を手にした。 200mでは向かい風0.8mながら19秒76の大会新記録で金メダル。3走を務めた4×100mリレーも37秒78で制し、1999年セビリア大会のモーリス・グリーン(米国)以来となる世界陸上3冠を成し遂げた。 2位に入ったのは当時21歳のウサイン・ボルト(ジャマイカ)。のちにスーパースターとなるボルトにとってシニアの世界大会初メダルだった。 男子走幅跳ではマイク・パウエルとカール・ルイス(ともに米国)が大激戦を繰り広げた東京大会を彷彿とさせるような熱い戦いが繰り広げられた。 まずは3連覇を目指すドワイト・フィリップス(米国)が1回目から8m30(+0.4)でトップに立つが、前年にIAAFゴールデンリーグ(現・ダイヤモンドリーグ)で6戦5勝の実績を持つイルビング・サラディノ(パナマ)が、3回目に8m46(±0)を跳んで単独トップに立った。5回目を終えた時点でサラディノがトップをキープし、3位から6位までが3㎝にひしめく大混戦となる。 運命の6回目、6位のオレクシー・ルカシェビッチ(ウクライナ)が8m25(+0.2)を跳んで3位に浮上。これで4位に落ちたアンドリュー・ハウ(イタリア)だったが、8m47(-0.2)をマークしてトップに立った。 3連覇に向けてあとがないフィリップスだったが、6回目は8m22(±0)と記録を伸ばせず、3位に終わった。そして5回目までトップだった最終跳躍者のサラディノが、大ジャンプを見せる。自身の持つ南米記録を1㎝更新する8m57(±0)で大逆転勝利を収めた。 女子短距離ではアリソン・フェリックス(米国)が200m、ともに2走を担った4×100mリレー、4×400mリレーで3冠を達成。200mでは100m覇者のベロニカ・キャンベル(ジャマイカ)に0.53秒の大差をつけ、21秒81(+1.7)の自己ベストで連覇を飾った。 米国は男子4×400mリレーでも他国を圧倒。この大会の400mはジェレミー・ウォリナーが当時世界歴代3位の43秒45で制すると、ラショーン・メリットが銀メダル、アンジェロ・テイラーが銅メダルと米国勢がメダルを独占していた。 1走メリット、2走テイラー、3走ダロルド・ウィリアムソン、4走ウォリナーの強力オーダーで挑んだ決勝は、当時世界歴代2位となる2分55秒56で圧勝し、2位のバハマに3秒62の大差をつけた。 男子110mハードルの劉翔(中国)が金メダルを獲得。2004年アテネ五輪を制し、12秒88の世界記録を持っていた彼は大阪の地でも快走した。9レーンからのスタートで、終盤に抜け出し、12秒95(+1.7)で制した。この種目での優勝はアジア人初の快挙だった。 男子走高跳では競技歴1年半のドナルド・トーマス(バハマ)が2m35で優勝。空中で3回足をバタつかせる通称・“垂直三段跳”が話題になった。女子棒高跳はエレーナ・イシンバエワ(ロシア)が4m80で連覇を達成している。 男子20km競歩ではジェファーソン・ペレス(エクアドル)が1時間22分20秒で3連覇。女子砲丸投ではバレリー・ビリ(豪州)が6投目に20m54を投げて逆転優勝を果たし、ここからの4連覇につなげた。

女子マラソン・土佐礼子が2度目の銅

地元の日本は、過去最多の男子45選手、女子36選手が出場し、入賞7という結果を収めたが、メダルは1つにとどまった。 女子マラソンでは土佐礼子(三井住友海上)が2時間30分55秒で銅メダルを獲得。嶋原清子(セカンドウインドAC)が2時間31分40秒で6位入賞を果たした。 レースは37km時点で土佐、嶋原を含め、7人で先頭集団を形成する。残り4kmを切ったところでキャサリン・ヌデレバ(ケニア)が仕掛け、嶋原が脱落。土佐もついていけず、5位に転落した。 [caption id="attachment_174169" align="alignnone" width="800"] 女子マラソンで銅メダルを獲得した土佐礼子[/caption] しかし、驚異的な粘りで40km過ぎに3位へ浮上。2001年エドモントン大会の銀メダル以来となるメダルを勝ち取った。 男子マラソンでは前回のヘルシンキ大会で銅メダルの尾方剛(中国電力)が2時間17分42秒で2大会連続入賞となる5位。大﨑悟史(NTT西日本)が2時間18分06秒で6位、諏訪利成(日清食品)が2時間18分35秒で7位に続き、トリプル入賞を果たした。 男子4×100mリレーは塚原直貴(東海大)、末續慎吾(ミズノ)、髙平慎士(富士通)、朝原宣治(大阪ガス)が出場。予選ではアジア新記録の38秒21をマークし、全体の3番目のタイムで決勝に進出した。 決勝は初のメダルが期待されるなか、日本は終盤までメダル争いを展開し、5位に入った。タイムは予選でマークしたアジア記録をさらに更新する38秒03だった。 2大会ぶりの出場となった男子ハンマー投の室伏広治(ミズノ)は80m46で6位。過去に2度の銅メダルを獲得している為末大(APF)は終盤に失速して予選敗退に終わった。 男子50km競歩は入賞が期待されていた山﨑勇喜(長谷川体育施設)がラスト1周を残して競技役員の誘導ミスにより競技場に入ってフィニッシュしてしまい、距離不足のため途中棄権に終わるというアクシデントもあった。 男子10000mにはこの年の箱根駅伝で2区区間賞の竹澤健介(早大3)が出場。28分51秒69で12位となった。 室伏、為末、末續といったメダリストに、朝原、走幅跳の池田久美子といったスター選手がそろっていた日本。地元開催を盛り上げようと、メディア出演を重ね、気負い過ぎもありパフォーマンスが発揮できない選手が多かったことは、日本陸上界の大きな反省点として刻まれている。

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