HOME 学生長距離

2024.12.25

箱根駅伝Stories/試練の1年乗り越えた日体大・山崎丞 7年ぶりシードへ「他大学のエースと戦えるのは自分」
箱根駅伝Stories/試練の1年乗り越えた日体大・山崎丞 7年ぶりシードへ「他大学のエースと戦えるのは自分」

2区で勝負することを思い描く日体大・山崎丞

エースとしての走りを

さらに11月の全日本大学駅伝では、各校からエース級のスピードランナーがそろった2区で区間8位。首位でタスキを受けた順位を7つ落とす結果とはなったが、シード権が与えらえる8位に踏みとどまった。

「後ろから強いメンバーが来ることは想定できていました。気持ちを乱さずに自分のペースでしっかり刻むことができたと思うので、最低限の走りはできました」。3位までとは30秒差以内に抑える粘りによって、チームが終盤までシード争いを演じる要因となったことは間違いない。

12月1日の日体大長距離競技会10000mで、28分19秒33の自己新をマークし、状態も上向き。今回の箱根は2年分の想いをぶつける舞台となる。

広告の下にコンテンツが続きます

新潟県糸魚川市出身。「地元は起伏が多くて、自然とアップダウンを走っていたので上りは得意」ということもあり、前回は5区出走を予定していた。

だが、今回は「他に5区を任せられる選手もいます。今季はしっかり練習が積めているので、2区を走りたいと思っています。2区で他大学のエースと戦えるのは自分しかないという自信もあります」と力強い。

序盤からある程度速いペースで入りつつ、中盤に権太坂、そして終盤に「戸塚の壁」と呼ばれる急坂がある難コースも、「自分に向いている」と捉えている。

「全日本も最初の1kmを2分42秒で入りました。同じような展開で入っていきつつ、余力を持って最後の上りで潰れずに、そこで1人でも抜いていく走りをイメージしています。どんな展開でも状況を読み取って、最適な走りをする判断はできるほうだと思っています」

チームは7年ぶりのシード権獲得にとどまらず、「総合6位」を目標に置く。そのためには山崎の“エース”としての走りが欠かせない。

10月の箱根駅伝予選会では個人16位と好走した山崎丞

やまざき・たすく/2003年4月29日生まれ。新潟県糸魚川市出身。新潟・糸魚川中→新潟・中越高。5000m13分52秒09、10000m28分19秒33、ハーフ1時間2分06秒

文/田中 葵

新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。

2度目の箱根は一人で過ごした

第100回箱根駅伝、日体大は1区で出遅れる厳しい展開となった。そんな苦しむチームの姿を、山崎丞(現・3年)はただ一人とある場所でテレビ観戦していた。 「大会1週間前にインフルエンザに感染してしまって、大学のゲストハウスに隔離されていました。もちろん走れなかったことは悔しかったですし、当日は会場に行けず、走っている選手を給水などでサポートすることもできずにもどかしい気持ちというか、絶望感みたいなものを感じていました」 昨年度は山崎にとって、試練の1年だった。夏合宿で右脚の腸脛靭帯を痛めて長期離脱があり、万全な状態ではない中で挑んだ前回の箱根予選会では、チーム3番手の個人80位と健闘したものの、その後は同じ部位の痛みを何度も繰り返した。 それでも、本戦にはなんとか間に合わせようと取り組んできたが、最後は思わぬかたちで欠場を強いられた。「前回はチームにまったく貢献することができませんでしたので、今回こそはという思いは強かったですね」。 今季は「昨年度思うように走り込めなかったぶん、もう一度土台をしっかり作ることを意識しました」と話す。レースを6月の全日本大学駅伝関東地区選考会や、7月のホクレンディスタンスチャレンジなど、重要なものに絞った。 トレーニングに重きを置いてきた結果、昨年離脱した夏合宿も「今年は100%消化することができました」と順調ぶりを示す。 特にその成果を発揮したのが、10月の箱根駅伝予選会だ。毎年、集団走を基本の作戦とする日体大だが、季節外れの酷暑。さらには継続中では最多となる77年連続出場が懸かる重圧もあってか、序盤から集団走が崩れだす想定外の展開となる。 自らも集団走でレースを進めていた山崎は、「全体的に思うような走りができていないと感じたので、自分は集団から抜け出して、タイムを稼ぎに行くしかないと思いました」と判断。7km手前からペースアップした。 「集団から抜け出してからのほうが、動きがハマった感じがあって、走りのリズムも良かったです」と振り返るように、5km15分10秒、10㎞30分20秒のイーブンペースから、10㎞から15㎞を15分03秒までラップを上げる。 さらに多くの選手が暑さでペースを落とす終盤も、「暑さとかコンディションが悪いほうが力を発揮できるタイプ」。そう自己分析する山崎は、15kmから20kmを、日本人トップを占めた中央学大の吉田礼志(4年)を1秒上回るラップを刻んだ。チームトップの個人16位(日本人4位)に入る快走を見せた。

エースとしての走りを

さらに11月の全日本大学駅伝では、各校からエース級のスピードランナーがそろった2区で区間8位。首位でタスキを受けた順位を7つ落とす結果とはなったが、シード権が与えらえる8位に踏みとどまった。 「後ろから強いメンバーが来ることは想定できていました。気持ちを乱さずに自分のペースでしっかり刻むことができたと思うので、最低限の走りはできました」。3位までとは30秒差以内に抑える粘りによって、チームが終盤までシード争いを演じる要因となったことは間違いない。 12月1日の日体大長距離競技会10000mで、28分19秒33の自己新をマークし、状態も上向き。今回の箱根は2年分の想いをぶつける舞台となる。 新潟県糸魚川市出身。「地元は起伏が多くて、自然とアップダウンを走っていたので上りは得意」ということもあり、前回は5区出走を予定していた。 だが、今回は「他に5区を任せられる選手もいます。今季はしっかり練習が積めているので、2区を走りたいと思っています。2区で他大学のエースと戦えるのは自分しかないという自信もあります」と力強い。 序盤からある程度速いペースで入りつつ、中盤に権太坂、そして終盤に「戸塚の壁」と呼ばれる急坂がある難コースも、「自分に向いている」と捉えている。 「全日本も最初の1kmを2分42秒で入りました。同じような展開で入っていきつつ、余力を持って最後の上りで潰れずに、そこで1人でも抜いていく走りをイメージしています。どんな展開でも状況を読み取って、最適な走りをする判断はできるほうだと思っています」 チームは7年ぶりのシード権獲得にとどまらず、「総合6位」を目標に置く。そのためには山崎の“エース”としての走りが欠かせない。 [caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"] 10月の箱根駅伝予選会では個人16位と好走した山崎丞[/caption] やまざき・たすく/2003年4月29日生まれ。新潟県糸魚川市出身。新潟・糸魚川中→新潟・中越高。5000m13分52秒09、10000m28分19秒33、ハーフ1時間2分06秒 文/田中 葵

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.11.07

メモリードが実業団陸上部の活動終了を発表 今後は個人アスリート支援へ

メモリードの過去のプリンセス駅伝成績 16年 27位 17年 28位 18年 24位 19年 26位 20年 27位 21年 27位 22年 30位 23年 27位 24年 22位 25年 21位

NEWS 110mH学生世界一の阿部竜希がエターナルホスピタリティG内定!「勇往邁進の精神で」棒高跳・柄澤、短距離・木梨もアスナビ就職

2025.11.07

110mH学生世界一の阿部竜希がエターナルホスピタリティG内定!「勇往邁進の精神で」棒高跳・柄澤、短距離・木梨もアスナビ就職

阿部竜希らが来春の所属内定発表!3選手のコメント全文をチェック 阿部竜希 「この度、アスナビを通じて株式会社エターナルホスピタリティグループより内定を頂きました。競技に専念できる環境を与えていただいたことに、心より感謝申 […]

NEWS 日本陸連・有森裕子会長に岡山市市民栄誉賞「本市の名を高めることに特に顕著な功績」五輪2大会メダル

2025.11.07

日本陸連・有森裕子会長に岡山市市民栄誉賞「本市の名を高めることに特に顕著な功績」五輪2大会メダル

岡山市は11月7日、女子マラソンで五輪2大会連続メダリストの日本陸連・有森裕子会長に、岡山市市民栄誉賞を授与し同日授与式が執り行われた。 有森会長は岡山県岡山市出身の58歳。女子マラソンにおいて、1992年バルセロナ五輪 […]

NEWS 神奈川県高校駅伝で誤誘導により4校記録無効 嘆願書提出の三浦学苑が関東大会に異例のオープン参加 高体連が認める

2025.11.07

神奈川県高校駅伝で誤誘導により4校記録無効 嘆願書提出の三浦学苑が関東大会に異例のオープン参加 高体連が認める

11月3日の神奈川県高校駅伝(横浜市のフィールド小机・日産スタジアム付設ハーフマラソンコース)で誤誘導による4校が記録無効となり、記録無効となった4校のうち三浦学苑について、高体連が関東高校駅伝(11月22日/埼玉・熊谷 […]

NEWS 仙台育英男女2連覇 地区代表は男子・八戸学院光星10年ぶり都大路、女子・東北2年連続全国切符/東北高校駅伝

2025.11.07

仙台育英男女2連覇 地区代表は男子・八戸学院光星10年ぶり都大路、女子・東北2年連続全国切符/東北高校駅伝

全国高校駅伝の出場権を懸けた東北高校駅伝は11月6日、秋田県立中央公園陸上競技場で行われ、男女ともに仙台育英(宮城)が優勝を果たした。県大会1位校を除いた最上位校に与えられる全国大会の地区代表は、男子は八戸学院光星(青森 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年11月号 (10月14日発売)

2025年11月号 (10月14日発売)

東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望

page top