パリ五輪の女子やり投で、女子トラック&フィールド種目初となる金メダル獲得を果たした北口榛花(JAL)。昨年のブダペスト世界選手権も制し、これで正真正銘の『世界一』となった。
トレードマークとなっているその笑顔は人々を魅了する。ただ、これまで取材してきた中で、笑顔と同じくらい、涙を流しているのを何度も見てきた。そんな中で忘れられない涙が一つある。
2015年、秋の和歌山国体。インターハイ連覇女王として臨んだ国体のやり投では57m02で優勝した。ライバルであり、今回のパリ五輪にも応援に駆けつけた山下実花子が55m35を投げたが、そのハイレベルな争いを制してインターハイと2冠。この時はケラケラと笑っていた。
印象に残っているのは翌日のこと。1年前に8位に入っていた砲丸投でも国体に2年連続で選ばれていた北口は、総合11位でトップ8に残れなかった。スタジアム前ですれ違った北口は、国体のコーチに肩を寄せられながら大粒の涙をこぼしていた。目が合ってほんの少し会釈を交わしたが、涙は止まらずチームのテントに戻っていった。
当年にはU18の世界一(世界ユース選手権優勝)になったスロワー。本職のやり投でしっかり国体も勝ったのだから……。そう思いつつ、サブ種目で負けてもあんなに悔しがれる。ああいう選手が成長して、強くなるんだろうなぁと感じたのをずっと忘れられないでいる。
その約10日後に今も破られない58m90の高校記録を樹立。のちに大きく、大きく羽ばたいていく。その間にもたくさんの涙を見たが、その度に強くなったのが北口榛花というアスリートだった。
パリ五輪で真の世界一の座についてもなお、思っていたような記録を残せなかった悔し涙を浮かべ「満足できない理由があるのは幸せ」と話していたが、きっとこの感情も夢の70mスロワーへの糧としていくのだろう。
文/向永拓史
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.12.12
豪州で18歳・ビークロフトが10000m競歩38分02秒68のU20世界新
2025.12.12
箱根駅伝初V狙う國學院大が壮行会 前田康弘監督「非常に愛のある、信頼感のあるチーム」
-
2025.12.12
-
2025.12.12
-
2025.12.12
-
2025.12.07
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.12.12
豪州で18歳・ビークロフトが10000m競歩38分02秒68のU20世界新
12月11日、豪州シドニーで、ニューサウスウェールズ州10000m競歩選手権が行われ、I.ビークロフト(豪州)が38分02秒68のU20世界新記録をマークした。 ビークロフトは2007年生まれの18歳。競歩選手だった父の […]
2025.12.12
箱根駅伝初Vへ國學院大・前田康弘監督「ジョーカーにどう立ち向かっていくか」 主将・上原琉翔「先頭でタスキを」
第102回箱根駅伝で初優勝を狙う國學院大が12月12日、都内の渋谷キャンパスで壮行会と記者会見を開いた。 例年の合同による囲み取材形式から急遽、記者会見方式への変更。前田康弘監督は「今年は今のところ16人全員が元気で良い […]
2025.12.12
箱根駅伝初V狙う國學院大が壮行会 前田康弘監督「非常に愛のある、信頼感のあるチーム」
第102回箱根駅伝で初優勝を狙う國學院大が12月12日、都内の渋谷キャンパスで壮行会と記者会見を開いた。 壮行会は寒風が吹く中での実施となったが、多くの学生や大学関係者が出席。前田康弘監督は「今年のチームは学年も関係なく […]
2025.12.12
お詫びと訂正(月刊陸上競技2026年1月号)
月刊陸上競技2025年1月号の内容に一部誤りがございました。 別冊付録「全国高校駅伝総展望」 P66東京代表 順天 チーム名が「順大」と表記されていましたが、正しくは「順天」になります。 また、都大路学校最高記録、学校最 […]
2025.12.12
月刊陸上競技2026年1月号
Contents W別冊付録 箱根駅伝観戦ガイド & 全国高校駅伝総展望 新春特別企画 桐生祥秀(日本生命)×清水空跳(星稜高2石川) 「継承」新旧・100m高校記録保持者 大会報道 八王子ロングディスタンス 鈴木芽吹 […]
Latest Issue
最新号
2025年12月号 (11月14日発売)
EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選
Follow-up Tokyo 2025