2023.12.27
新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。
故障しない体づくりが奏功
山口廉(3年)にとって、2023年は飛躍の年だった。1年目は故障でほとんど練習ができず、「一時は競技から離れた時期もありました」と振り返る。そこから再度走り始めたものの、まだ身体作りが不十分で故障を繰り返し、三大駅伝のみならず、個人としても公式戦出場は叶わぬまま2年目のシーズンも終えることとなった。
「それまではあまり走り込みをせず、少ない練習で終わらせる感じで、このままではいけないと思いました」
箱根に向けて、エントリーメンバーが最後の仕上げに入っていく1年前の12月、山口は「まずはハーフの距離を走るための土台作りが必要だと思った」と、週1回のペースで月4回程度の2時間ジョグを取り入れ、誰よりも走り込んだ。練習後のケアやウエイトトレーニング、さらには食事改善にも取り組み、過去2年がまるで嘘だったかのように、故障での離脱なく継続したトレーニングを行なってきた。
その成果は結果にも反映し、5月の関東インカレ1部ハーフマラソン7位入賞を果たす。
「大学初の公式戦だったので、インパクトのある走りをしたいと思っていました。正直、もう少し上を狙いたかった悔しさもありますが、距離に対する取り組みもしっかり成果になったと思います」
そして迎えた10月の箱根駅伝予選会。6月の全日本大学駅伝関東選考会で15位に終わり、戦前は苦戦も予想されたが、3年目にして初出場を果たした山口は自信に満ち溢れていた。
「夏合宿も100%練習を消化できましたし、状態は良かったと思います。予選会ではタイムを稼ぐ役割だったので、他校のエースとどう戦うかを意識してきて、持っている力は100%出せたと思います。ただ、日本人3位まで12秒だったので、もう少し上を狙えたという気持ちもあります」
自己記録を2分近く短縮する1時間2分24秒をマークし、チームトップの個人19位で、76年連続の本戦出場に大きく貢献。自身初の箱根駅伝出走はすぐそこまで迫っている。
山口が陸上を始めたのは小学2年の頃。「スポーツが苦手で、走るのもそんなに速くなかったので、できるようになろうという感じだった」ことがきっかけで、佐賀県伊万里市の三香クラブに入った。「スポーツは今でも苦手」だが、走ることは好きだったと振り返る。
箱根駅伝を意識したのは、2015年の時。青学大が初優勝した大会をテレビで観戦し、「神野さんの山上りの走りが印象的だった」。
さらに2017年、中学2年の時に見た箱根1区で、当時東海大1年だった鬼塚翔太(現・メイクス)の走りに強い衝撃を受けた。
「1年生で、大学トップクラスの選手だった服部弾馬さん(東洋大、現・NTT西日本)に果敢に挑んでいく姿に惹かれました」と、高校は県内を離れ、鬼塚と同じ福岡・大牟田高へ進学。全国高校駅伝で5度の優勝を誇る強豪校の扉を叩いた。
同期には太田蒼生(青学大)、林虎太朗(立教大)ら、力のある選手が揃い、「入学時は同期で下から2番目くらい。(3000mの)自己ベストの差も1分くらいありました」と振り返る。高校時も1年目は故障が多かったが、当時も冬季練習の走り込みで徐々に力をつけ、3年時には5000mで14分08秒15を記録。3年時には全国高校駅伝で6区5位と好走し、チームを7年ぶりの入賞(8位)に導いた。
「同期を追いかけて強くなれた。彼らに勝ったりする楽しさを感じたことで、成長してきたと思います」
故障しない体づくりが奏功
山口廉(3年)にとって、2023年は飛躍の年だった。1年目は故障でほとんど練習ができず、「一時は競技から離れた時期もありました」と振り返る。そこから再度走り始めたものの、まだ身体作りが不十分で故障を繰り返し、三大駅伝のみならず、個人としても公式戦出場は叶わぬまま2年目のシーズンも終えることとなった。 「それまではあまり走り込みをせず、少ない練習で終わらせる感じで、このままではいけないと思いました」 箱根に向けて、エントリーメンバーが最後の仕上げに入っていく1年前の12月、山口は「まずはハーフの距離を走るための土台作りが必要だと思った」と、週1回のペースで月4回程度の2時間ジョグを取り入れ、誰よりも走り込んだ。練習後のケアやウエイトトレーニング、さらには食事改善にも取り組み、過去2年がまるで嘘だったかのように、故障での離脱なく継続したトレーニングを行なってきた。 その成果は結果にも反映し、5月の関東インカレ1部ハーフマラソン7位入賞を果たす。 「大学初の公式戦だったので、インパクトのある走りをしたいと思っていました。正直、もう少し上を狙いたかった悔しさもありますが、距離に対する取り組みもしっかり成果になったと思います」 そして迎えた10月の箱根駅伝予選会。6月の全日本大学駅伝関東選考会で15位に終わり、戦前は苦戦も予想されたが、3年目にして初出場を果たした山口は自信に満ち溢れていた。 「夏合宿も100%練習を消化できましたし、状態は良かったと思います。予選会ではタイムを稼ぐ役割だったので、他校のエースとどう戦うかを意識してきて、持っている力は100%出せたと思います。ただ、日本人3位まで12秒だったので、もう少し上を狙えたという気持ちもあります」 自己記録を2分近く短縮する1時間2分24秒をマークし、チームトップの個人19位で、76年連続の本戦出場に大きく貢献。自身初の箱根駅伝出走はすぐそこまで迫っている。 山口が陸上を始めたのは小学2年の頃。「スポーツが苦手で、走るのもそんなに速くなかったので、できるようになろうという感じだった」ことがきっかけで、佐賀県伊万里市の三香クラブに入った。「スポーツは今でも苦手」だが、走ることは好きだったと振り返る。 箱根駅伝を意識したのは、2015年の時。青学大が初優勝した大会をテレビで観戦し、「神野さんの山上りの走りが印象的だった」。 さらに2017年、中学2年の時に見た箱根1区で、当時東海大1年だった鬼塚翔太(現・メイクス)の走りに強い衝撃を受けた。 「1年生で、大学トップクラスの選手だった服部弾馬さん(東洋大、現・NTT西日本)に果敢に挑んでいく姿に惹かれました」と、高校は県内を離れ、鬼塚と同じ福岡・大牟田高へ進学。全国高校駅伝で5度の優勝を誇る強豪校の扉を叩いた。 同期には太田蒼生(青学大)、林虎太朗(立教大)ら、力のある選手が揃い、「入学時は同期で下から2番目くらい。(3000mの)自己ベストの差も1分くらいありました」と振り返る。高校時も1年目は故障が多かったが、当時も冬季練習の走り込みで徐々に力をつけ、3年時には5000mで14分08秒15を記録。3年時には全国高校駅伝で6区5位と好走し、チームを7年ぶりの入賞(8位)に導いた。 「同期を追いかけて強くなれた。彼らに勝ったりする楽しさを感じたことで、成長してきたと思います」初の箱根路でエース区間も意識
初めての箱根路はいきなりチームのエース格として迎えることになるが、山口自身に気負いはなく、「初めてということに特に意気込むことはないですね。むしろ大舞台になるほど力が出せるのが自分の強みだと思っているので楽しみです」と語る。希望区間は1区だが、2区の最有力候補で、「チームの状況や戦略を考えると2区を走るべきかなと思っています」と心の準備はできている。 「どの区間であろうと、タイムよりも勝負できる走りをしたい」と語るが、特に高校の同期で、すでに箱根でインパクト残している青学大の太田との対決を熱望する。 「太田は大学でも活躍するだろうと思っていたので驚きはないです。むしろ高校の時に同じ練習をやっていた自分もやれるという自信になったと思います。箱根でも同じ区間で勝負して勝ちたい気持ちは常に持っています」 過去2年は山口にとって、不遇の時期だったかもしれない。だが、高校時代も学年を重ねるごとに着実に成長し、狙った試合では結果を残してきた。そして今季も走れない時期を乗り越えた時こそ、強くなれる原動力だと信じてやってきた。 他校のエース級と対峙する可能性が高い箱根路で、チームを6年ぶりのシード権に導く走りをー。それが自身をさらに成長させることにつながると信じている。 [caption id="attachment_124775" align="alignnone" width="800"]
3年にして初の箱根では2区で他校のエースと対峙するつもりだ(チーム提供)[/caption]
やまぐち・れん/2003年3月31日生まれ。佐賀県伊万里市出身。佐賀・啓成中→福岡・大牟田高。5000m14分08秒15、10000m29分26秒96、ハーフ1時間2分24秒
文/田中 葵 RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.12.15
関西スポーツ賞に20㎞競歩世界新・山西利和、800m東京世界陸上出場・久保凛が選出!
-
2025.12.14
-
2025.12.14
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝女子(2025年12月14日)
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝男子(2025年12月14日)
2025.12.14
中学駅伝日本一決定戦がいよいよ開催 女子11時10分、男子12時15分スタート/全中駅伝
-
2025.12.14
-
2025.12.14
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝女子(2025年12月14日)
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝男子(2025年12月14日)
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.12.15
関西スポーツ賞に20㎞競歩世界新・山西利和、800m東京世界陸上出場・久保凛が選出!
第69回関西スポーツ賞の個人部門に、男子20km競歩で世界新記録を樹立した山西利和(愛知製鋼)、東京世界選手権女子800m出場の久保凛(東大阪大敬愛高3)が選出された。 同賞はその年の優秀な成績、関西スポーツ界への貢献度 […]
2025.12.15
なぜ、トップアスリートがOnを選ぶのか? “人気2モデル”の記録更新に向けての『履き分け』とは
スイスのスポーツブランド「On(オン)」。同社は、陸上の男子3000m障害の日本記録保持者で、9月に東京で開催された世界選手権で最後まで優勝争いを演じて8位入賞を果たした三浦龍司(SUBARU)や、学生時代から駅伝やトラ […]
2025.12.15
アンダーアーマーの新作「UA ベロシティ」シリーズ3モデルを同時発売!12月20日より発売開始
アンダーアーマーの日本総代理店である株式会社ドームは12月15日、最新ランニングシリーズ「UA ベロシティ」を12月20日より発売することを発表した。 新モデルは、ランナー一人ひとりの目的やレベルに応じて最適な1足を選べ […]
2025.12.15
女子はバットクレッティが連覇!東京世界陸上ダブルメダルの実力示す 男子はンディクムウェナヨV/欧州クロカン
12月14日、ポルトガル・ラゴアで欧州クロスカントリー選手権が行われ、女子(7470m)はパリ五輪10000m銀メダルのN.バットクレッティ(イタリア)が24分52秒で優勝した。 バットクレッティは現在25歳。今年の東京 […]
Latest Issue
最新号
2025年12月号 (11月14日発売)
EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選
Follow-up Tokyo 2025