2023.12.27
新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。
高校時代はライバル・長嶋幸宝と切磋琢磨
「世界に通用するランナーを育成したい」という思いで創設された箱根駅伝が第100回大会を迎える。そんな記念すべき節目にスケールの大きなランナーが登場。東農大の前田和摩(1年)だ。
昨年のインターハイ5000mで日本人トップ(4位)に輝くと、大学で快進撃を続けている。今季出場したレースは4つ。そのすべてでインパクトを残しているのだ。
しかも、前田のキャリアはまだ浅い。小さい頃から箱根駅伝をテレビ観戦していたが、中学時代はサッカー部だった。冬季の駅伝に参加したことで、3年時には「箱根駅伝を走りたい」という気持ちが芽生える。中学駅伝での走りを評価されて兵庫・報徳学園高に進学して、本格的に競技を開始した。
無名だった前田は高2の秋に大ブレイクすることになる。駅伝は兵庫県大会1区(10km)を28分59秒で独走。中学時代から全国大会の上位常連だった同学年の西脇工高・長嶋幸宝(現・旭化成)に14秒差をつけて区間賞を獲得した。近畿大会1区も28分58秒で区間賞を奪っている。
長嶋は2019年の全中3000mで3位、高2のインターハイは1500mで4位に入っている選手。「高校入学時はまさか届くとは思っていなかったのですが、徐々に戦えるようになってきて、強く意識するようになったんです」と振り返る。
3年時は4月の兵庫リレーカーニバル高校5000mで長嶋に競り負けるが、13分56秒65の自己ベスト。インターハイ路線の5000mは兵庫県大会と近畿大会で長嶋に惜敗するも、全国の舞台でリベンジを果たす。ケニア人留学生に食らいつき、13分58秒01で4位。長嶋を抑えて、日本人トップに輝いた。
「高校時代もトラックレースはそんなに出ていませんが、その一つひとつが自信になりました。なかでもインターハイの日本人トップはすごくうれしかったですし、高校生活で一番印象に残っています」
しかし、兵庫県高校駅伝1区は自滅する。「長嶋を引き離さないといけない」という思いが空回りし、28分31秒の区間新で駆け抜けた長嶋から1分11秒遅れの区間2位。チームは3位に終わった。
「チームで勝つことを考えれば、1秒でもいいので前で確実にタスキをつなげるべきだった」と今でも後悔している。
高校時代はライバル・長嶋幸宝と切磋琢磨
「世界に通用するランナーを育成したい」という思いで創設された箱根駅伝が第100回大会を迎える。そんな記念すべき節目にスケールの大きなランナーが登場。東農大の前田和摩(1年)だ。 昨年のインターハイ5000mで日本人トップ(4位)に輝くと、大学で快進撃を続けている。今季出場したレースは4つ。そのすべてでインパクトを残しているのだ。 しかも、前田のキャリアはまだ浅い。小さい頃から箱根駅伝をテレビ観戦していたが、中学時代はサッカー部だった。冬季の駅伝に参加したことで、3年時には「箱根駅伝を走りたい」という気持ちが芽生える。中学駅伝での走りを評価されて兵庫・報徳学園高に進学して、本格的に競技を開始した。 無名だった前田は高2の秋に大ブレイクすることになる。駅伝は兵庫県大会1区(10km)を28分59秒で独走。中学時代から全国大会の上位常連だった同学年の西脇工高・長嶋幸宝(現・旭化成)に14秒差をつけて区間賞を獲得した。近畿大会1区も28分58秒で区間賞を奪っている。 長嶋は2019年の全中3000mで3位、高2のインターハイは1500mで4位に入っている選手。「高校入学時はまさか届くとは思っていなかったのですが、徐々に戦えるようになってきて、強く意識するようになったんです」と振り返る。 3年時は4月の兵庫リレーカーニバル高校5000mで長嶋に競り負けるが、13分56秒65の自己ベスト。インターハイ路線の5000mは兵庫県大会と近畿大会で長嶋に惜敗するも、全国の舞台でリベンジを果たす。ケニア人留学生に食らいつき、13分58秒01で4位。長嶋を抑えて、日本人トップに輝いた。 「高校時代もトラックレースはそんなに出ていませんが、その一つひとつが自信になりました。なかでもインターハイの日本人トップはすごくうれしかったですし、高校生活で一番印象に残っています」 しかし、兵庫県高校駅伝1区は自滅する。「長嶋を引き離さないといけない」という思いが空回りし、28分31秒の区間新で駆け抜けた長嶋から1分11秒遅れの区間2位。チームは3位に終わった。 「チームで勝つことを考えれば、1秒でもいいので前で確実にタスキをつなげるべきだった」と今でも後悔している。東農大で才能がさらに開花
5000mのベストが15分30秒ほどだった1年時に村上和春コーチから勧誘を受けたこともあり、古豪・東農大への進学を決めた。 「小指徹監督と村上さんが高校の先生と僕の今後について相談してくださって、自分に合った練習スタイルを考えてくれることになったんです。農大なら強くなれると思いました」 特に1年目は「自分の身体を大事にしたい」と思っており、「出場レースを絞って、余裕を持った練習をじっくり継続していくのが自分には合っている」という前田考えを、チームは尊重した。 その予感は的中する。大学では10000mで28分10秒台のタイムを持つ高槻芳照と並木寧音(ともに4年)のダブルエースと練習。「良いイメージで終わる」ことを意識したトレーニングを続けると、出場したレースで確実に結果を残していく。 大学デビュー戦となった5月の関東インカレ(2部)は5000mに出場。ラスト1周の争いで遅れたが、13分57秒25で4位(日本人2位)に入った。次の目標に「(6月の)全日本大学駅伝選考会の日本人トップ」を掲げると、目標以上の快走を見せる。 最終4組でケニア人留学生と真っ向勝負を演じて3着。蒸し暑いコンディション下でU20日本歴代2位(当時)の28分03秒51をマークして、チームを14年ぶりの伊勢路に導いたのだ。 そして「日本人トップ」を目標に掲げた10月の箱根駅伝予選会は15㎞過ぎからペースアップし、ハーフマラソンでU20日本記録に1秒差と迫る1時間1分42秒をマークして、日本人トップの個人9位でフィニッシュ。伝統校に10年ぶり70回目の本戦出場をもたらした。 3週間後の全日本大学駅伝でも強さを発揮した。2区に出走した前田は10位でタスキを受け取ると、3秒後ろの順大・三浦龍司(4年)ではなく、20秒前の駒大・佐藤圭汰(2年)を意識。区間新記録(区間3位)の快走で6人を抜き去った。 「初めての学生駅伝は楽しかったですね。突っ込んで入り、後半は耐えるというイメージ通りの走りができました。目に見える結果として区間新はすごくうれしいですけど、区間賞を獲得できず、悔しい気持ちもあります」 [caption id="attachment_124781" align="alignnone" width="800"]
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.30
5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場
2025.04.30
26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得
2025.04.30
100mH寺田明日香 恩師の訃報に「熱意と愛情を少しでも次の世代へ引き継げるように」
-
2025.04.30
-
2025.04.30
2025.04.29
100mH田中佑美が予選トップ通過も決勝棄権「故障ではない」昨年の結婚も明かす/織田記念
2025.04.28
100mH田中佑美が国内初戦「ここから毎週のように緊張する」/織田記念
-
2025.04.26
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.01
-
2025.04.12
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.30
5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場
5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]
2025.04.30
26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得
世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]
2025.04.30
100mH寺田明日香 恩師の訃報に「熱意と愛情を少しでも次の世代へ引き継げるように」
福島千里や寺田明日香ら女子短距離を中心に数々の名選手を育成した中村宏之氏が4月29日に79歳で他界したことを受け、寺田が自身のSNSを更新して思いを綴った。 寺田は北海道・恵庭北高時代に中村氏の指導を受け、100mハード […]
2025.04.30
9月の東京世界陸上に都内の子どもを無料招待 引率含め40,000人 6月から応募スタート
東京都は今年9月に国立競技場をメイン会場として開かれる世界選手権に都内の子どもたちを無料招待すると発表した。 「臨場感あふれる会場での観戦を通じて、都内の子供たちにスポーツの素晴らしさや夢と希望を届ける」というのが目的。 […]
2025.04.30
新しい形の競技会「THE GAME」が9月14日 大阪・万博記念競技場で開催決定!
「陸上競技の魅力を最大限に引き出し、観客と選手の双方にとって忘れられない体験を」をコンセプトに、三重県で開催されてきた『THE GAME』。今年は会場を大阪府。万博記念競技場を移して、9月14日に行われることが決まった。 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)