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2023.12.22

箱根駅伝Stories/箱根路で復活を期す順大ルーキー・吉岡大翔「出雲、全日本の借りを返したい」
箱根駅伝Stories/箱根路で復活を期す順大ルーキー・吉岡大翔「出雲、全日本の借りを返したい」

初の箱根路へ意気込みを語る順大の吉岡大翔

偉大なる先輩の言葉を「心の支えに」

23年10月の出雲駅伝は1区10位とほろ苦い学生駅伝デビューになった吉岡大翔

全日本後は、自分らしい走りができない不安を抱いた時期もあった。

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そんなルーキーの苦境を救ったのが、尊敬する主将の三浦龍司(4年)だった。3000m障害の日本記録(8分09秒91)保持者でブダペスト世界選手権では6位入賞を果たしているチームの絶対的存在だ。

11月、三浦と一緒にジョグをした際に悩みを打ち明けると、「オレから見たら、高校の時よりも今の吉岡のほうが断然強い。力はついているから自信を持っていい」と返ってきた。その言葉に、「気持ちを立て直すことができました」と振り返る。

思い返せば、今季のトラックシーズンは未知の経験だった。高校時代は各大会から、夏のインターハイに向けて段階的にピーキングを持っていくが、世界を見据え、今季は短いスパンでシニアレベルの記録会や大会を連戦。「自己ベストこそ出せていませんが、地力はついたと思います」と一定の手応えをつかんだ。

さらに、「夏場に走り込むのは初めて」というなか、初めての夏合宿を経験。「監督からも質は多少落ちても、やり切った自信をもてるように」と言われ、距離走も含めて順調に練習を消化することができた。

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年間通じて大きな故障もなく、月日を追うごとに走行距離も増えてきており、「三浦さんが言われた通り、高校時代の自分が、今年のようなトラックの連戦や練習をできたかと考えると、決してできなかったと思います。タイムには表れていませんが、力はついてきているんだなと思えるようになりました」と語る。

“世界”を知っている先輩から言われた言葉は、「心の支えになっています」と自信を取り戻しつつある。

新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。

三大駅伝デビューはほろ苦い経験に

1年生にして、今季5000mで関東インカレ1部4位、日本インカレ4位(日本人トップ)、日本選手権14位という結果は、十分評価に値するものだろう。 だが、長野・佐久長聖高3年時だった昨年に5000mで13分22秒99の高校記録を樹立し、U20世界選手権7位入賞、全国高校駅伝でも3区(8.1075㎞)で22分51秒の日本人最高タイム、全国都道府県対抗駅伝で高校生のエース区間5区(8.5㎞)で23分52秒の区間記録を樹立と輝かしい実績を誇った順大の吉岡大翔(1年)にとっては、決して満足するものではなかった。 「環境の変化にうまく順応できなかった部分もあった」と要因の一端を振り返るが、注目度の高さゆえの重圧もある。長門俊介駅伝監督も、「どうしても過去の実績があるので、比較してしまって苦労したこともあったと思います」と慮る。 駅伝シーズンでも主要区間を任された。だが、出雲は1区11位。全日本も3区区間14位と苦戦する。 「出雲は中間手前くらいで差し込み(腹痛)がきてしまって、後半ペースが上がりませんでした。全日本はそのことも意識して臨んだのですが、ちょっと守りに入ってしまったかなと思います」 本来は前半から突っ込んで、後半ペースを維持するのが持ち味なのだが、抑えて入ったペースに身体が慣れてしまい、周りの選手の流れに対応することができなかった。 絶好調まではいかなくとも、練習はできており、調子も悪くなかった。それだけに、「自信のない走りだった」と悔やんだ。

偉大なる先輩の言葉を「心の支えに」

[caption id="attachment_123977" align="alignnone" width="800"] 23年10月の出雲駅伝は1区10位とほろ苦い学生駅伝デビューになった吉岡大翔[/caption] 全日本後は、自分らしい走りができない不安を抱いた時期もあった。 そんなルーキーの苦境を救ったのが、尊敬する主将の三浦龍司(4年)だった。3000m障害の日本記録(8分09秒91)保持者でブダペスト世界選手権では6位入賞を果たしているチームの絶対的存在だ。 11月、三浦と一緒にジョグをした際に悩みを打ち明けると、「オレから見たら、高校の時よりも今の吉岡のほうが断然強い。力はついているから自信を持っていい」と返ってきた。その言葉に、「気持ちを立て直すことができました」と振り返る。 思い返せば、今季のトラックシーズンは未知の経験だった。高校時代は各大会から、夏のインターハイに向けて段階的にピーキングを持っていくが、世界を見据え、今季は短いスパンでシニアレベルの記録会や大会を連戦。「自己ベストこそ出せていませんが、地力はついたと思います」と一定の手応えをつかんだ。 さらに、「夏場に走り込むのは初めて」というなか、初めての夏合宿を経験。「監督からも質は多少落ちても、やり切った自信をもてるように」と言われ、距離走も含めて順調に練習を消化することができた。 年間通じて大きな故障もなく、月日を追うごとに走行距離も増えてきており、「三浦さんが言われた通り、高校時代の自分が、今年のようなトラックの連戦や練習をできたかと考えると、決してできなかったと思います。タイムには表れていませんが、力はついてきているんだなと思えるようになりました」と語る。 “世界”を知っている先輩から言われた言葉は、「心の支えになっています」と自信を取り戻しつつある。

状態は上向き、20㎞超の距離にも自信

これまでハーフマラソンの経験はなく、20km超の箱根駅伝は未知の領域となるが、「いつもの試合よりもペースはゆっくり入れるし、やるべき準備をすれば大丈夫だと思います」。 全日本後の大島合宿や、その後の練習でも各自ジョグで走る距離を少しずつ伸ばし、11月は「今までで1番走った」という。12月3日の甲佐10マイルでは、昨年の三浦(47分03秒)とほぼ同タイムの47分07秒で走破。本戦では区間にはこだわりはなく、「そもそも初めての距離なので、どこでも対応できるよう準備できれば」と考えている。 在学中は、トラックで来年のパリ五輪、そして自国開催となる2025年の東京世界選手権出場を視野に入れる。 一方で、「チームで目標を持って戦う総合力の勝負。それを達成した時の喜びもあると思っています」と、駅伝でチームに貢献したい気持ちも強く持っている。 「出雲、全日本は迷惑をかけてしまったので、その借りを返す走りをしたいです。チームは5位を目標にしているので、何人かが区間5位以内で走る必要があると思います。その役割を自分が果たしたい」 苦悩の時期を過ごしたスーパールーキーが箱根路で復活の快走を見せる時が迫っている。 [caption id="attachment_123978" align="alignnone" width="800"] 佐久長聖高時代からの先輩・後輩である村尾雄己(右)と吉岡大翔[/caption] よしおか・ひろと/2004年5月18日生まれ。長野県長野市出身。長野・川中島中→佐久長聖高。5000m13分22秒99、10000m28分46秒96 文/田中 葵

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