HOME 学生長距離

2023.12.22

箱根駅伝Stories/箱根路で復活を期す順大ルーキー・吉岡大翔「出雲、全日本の借りを返したい」
箱根駅伝Stories/箱根路で復活を期す順大ルーキー・吉岡大翔「出雲、全日本の借りを返したい」

初の箱根路へ意気込みを語る順大の吉岡大翔

新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。

三大駅伝デビューはほろ苦い経験に

1年生にして、今季5000mで関東インカレ1部4位、日本インカレ4位(日本人トップ)、日本選手権14位という結果は、十分評価に値するものだろう。

だが、長野・佐久長聖高3年時だった昨年に5000mで13分22秒99の高校記録を樹立し、U20世界選手権7位入賞、全国高校駅伝でも3区(8.1075㎞)で22分51秒の日本人最高タイム、全国都道府県対抗駅伝で高校生のエース区間5区(8.5㎞)で23分52秒の区間記録を樹立と輝かしい実績を誇った順大の吉岡大翔(1年)にとっては、決して満足するものではなかった。

「環境の変化にうまく順応できなかった部分もあった」と要因の一端を振り返るが、注目度の高さゆえの重圧もある。長門俊介駅伝監督も、「どうしても過去の実績があるので、比較してしまって苦労したこともあったと思います」と慮る。

駅伝シーズンでも主要区間を任された。だが、出雲は1区11位。全日本も3区区間14位と苦戦する。

「出雲は中間手前くらいで差し込み(腹痛)がきてしまって、後半ペースが上がりませんでした。全日本はそのことも意識して臨んだのですが、ちょっと守りに入ってしまったかなと思います」

本来は前半から突っ込んで、後半ペースを維持するのが持ち味なのだが、抑えて入ったペースに身体が慣れてしまい、周りの選手の流れに対応することができなかった。

絶好調まではいかなくとも、練習はできており、調子も悪くなかった。それだけに、「自信のない走りだった」と悔やんだ。

新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。

三大駅伝デビューはほろ苦い経験に

1年生にして、今季5000mで関東インカレ1部4位、日本インカレ4位(日本人トップ)、日本選手権14位という結果は、十分評価に値するものだろう。 だが、長野・佐久長聖高3年時だった昨年に5000mで13分22秒99の高校記録を樹立し、U20世界選手権7位入賞、全国高校駅伝でも3区(8.1075㎞)で22分51秒の日本人最高タイム、全国都道府県対抗駅伝で高校生のエース区間5区(8.5㎞)で23分52秒の区間記録を樹立と輝かしい実績を誇った順大の吉岡大翔(1年)にとっては、決して満足するものではなかった。 「環境の変化にうまく順応できなかった部分もあった」と要因の一端を振り返るが、注目度の高さゆえの重圧もある。長門俊介駅伝監督も、「どうしても過去の実績があるので、比較してしまって苦労したこともあったと思います」と慮る。 駅伝シーズンでも主要区間を任された。だが、出雲は1区11位。全日本も3区区間14位と苦戦する。 「出雲は中間手前くらいで差し込み(腹痛)がきてしまって、後半ペースが上がりませんでした。全日本はそのことも意識して臨んだのですが、ちょっと守りに入ってしまったかなと思います」 本来は前半から突っ込んで、後半ペースを維持するのが持ち味なのだが、抑えて入ったペースに身体が慣れてしまい、周りの選手の流れに対応することができなかった。 絶好調まではいかなくとも、練習はできており、調子も悪くなかった。それだけに、「自信のない走りだった」と悔やんだ。

偉大なる先輩の言葉を「心の支えに」

[caption id="attachment_123977" align="alignnone" width="800"] 23年10月の出雲駅伝は1区10位とほろ苦い学生駅伝デビューになった吉岡大翔[/caption] 全日本後は、自分らしい走りができない不安を抱いた時期もあった。 そんなルーキーの苦境を救ったのが、尊敬する主将の三浦龍司(4年)だった。3000m障害の日本記録(8分09秒91)保持者でブダペスト世界選手権では6位入賞を果たしているチームの絶対的存在だ。 11月、三浦と一緒にジョグをした際に悩みを打ち明けると、「オレから見たら、高校の時よりも今の吉岡のほうが断然強い。力はついているから自信を持っていい」と返ってきた。その言葉に、「気持ちを立て直すことができました」と振り返る。 思い返せば、今季のトラックシーズンは未知の経験だった。高校時代は各大会から、夏のインターハイに向けて段階的にピーキングを持っていくが、世界を見据え、今季は短いスパンでシニアレベルの記録会や大会を連戦。「自己ベストこそ出せていませんが、地力はついたと思います」と一定の手応えをつかんだ。 さらに、「夏場に走り込むのは初めて」というなか、初めての夏合宿を経験。「監督からも質は多少落ちても、やり切った自信をもてるように」と言われ、距離走も含めて順調に練習を消化することができた。 年間通じて大きな故障もなく、月日を追うごとに走行距離も増えてきており、「三浦さんが言われた通り、高校時代の自分が、今年のようなトラックの連戦や練習をできたかと考えると、決してできなかったと思います。タイムには表れていませんが、力はついてきているんだなと思えるようになりました」と語る。 “世界”を知っている先輩から言われた言葉は、「心の支えになっています」と自信を取り戻しつつある。

状態は上向き、20㎞超の距離にも自信

これまでハーフマラソンの経験はなく、20km超の箱根駅伝は未知の領域となるが、「いつもの試合よりもペースはゆっくり入れるし、やるべき準備をすれば大丈夫だと思います」。 全日本後の大島合宿や、その後の練習でも各自ジョグで走る距離を少しずつ伸ばし、11月は「今までで1番走った」という。12月3日の甲佐10マイルでは、昨年の三浦(47分03秒)とほぼ同タイムの47分07秒で走破。本戦では区間にはこだわりはなく、「そもそも初めての距離なので、どこでも対応できるよう準備できれば」と考えている。 在学中は、トラックで来年のパリ五輪、そして自国開催となる2025年の東京世界選手権出場を視野に入れる。 一方で、「チームで目標を持って戦う総合力の勝負。それを達成した時の喜びもあると思っています」と、駅伝でチームに貢献したい気持ちも強く持っている。 「出雲、全日本は迷惑をかけてしまったので、その借りを返す走りをしたいです。チームは5位を目標にしているので、何人かが区間5位以内で走る必要があると思います。その役割を自分が果たしたい」 苦悩の時期を過ごしたスーパールーキーが箱根路で復活の快走を見せる時が迫っている。 [caption id="attachment_123978" align="alignnone" width="800"] 佐久長聖高時代からの先輩・後輩である村尾雄己(右)と吉岡大翔[/caption] よしおか・ひろと/2004年5月18日生まれ。長野県長野市出身。長野・川中島中→佐久長聖高。5000m13分22秒99、10000m28分46秒96 文/田中 葵

次ページ:

ページ: 1 2 3

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.09.07

順大・澤木啓祐氏が名誉総監督を退任 本人の申し出を受け

9月6日、順天堂大学スポーツ健康科学部はホームページに「順天堂大学陸上競技部に関する報道について」と題したリリースを公開。同大学陸上部名誉総監督の澤木啓祐氏が退任することが発表された。 この件は、一部報道で同大学陸上部指 […]

NEWS ヤマダホールディングスが10月のプリンセス駅伝欠場を発表

2024.09.06

ヤマダホールディングスが10月のプリンセス駅伝欠場を発表

9月6日、ヤマダホールディングスは10月20日に開催予定の第10回全⽇本実業団対抗⼥⼦駅伝予選会(プリンセス駅伝)を欠場することを発表した。 チームは11月の全⽇本実業団対抗⼥⼦駅伝(クイーンズ駅伝)での上位入賞を目標に […]

NEWS チェベトが女子5000mで14分09秒52 男子1500mはヌグセがインゲブリグトセンを抑える/DLチューリヒ

2024.09.06

チェベトが女子5000mで14分09秒52 男子1500mはヌグセがインゲブリグトセンを抑える/DLチューリヒ

9月5日、ダイヤモンドリーグ(DL)第13戦のヴェルトクラッセ・チューリッヒがスイス・チューリヒで開催され、女子5000mでは、パリ五輪金メダルのB.チェベト(ケニア)が今季世界最高、パフォーマンス世界歴代7位の14分0 […]

NEWS 田中希実25歳初レース5000m14分49秒95で東京世界陸上の標準突破!!やり投・ディーン3位で初ファイナルへ/DLチューリヒ

2024.09.06

田中希実25歳初レース5000m14分49秒95で東京世界陸上の標準突破!!やり投・ディーン3位で初ファイナルへ/DLチューリヒ

世界最高峰のダイヤモンドリーグ(DL)シリーズ最終戦となる第14戦・チューリヒ大会(スイス)が9月6日に行われ、女子5000mの田中希実(New Balance)が14分49秒95で7位に入った。この記録で、来年の東京世 […]

NEWS 女子マラソン・ウガンダ代表のチェプテゲイが死去 五輪から1ヵ月経たぬうちの惨劇に悲しみ広がる

2024.09.05

女子マラソン・ウガンダ代表のチェプテゲイが死去 五輪から1ヵ月経たぬうちの惨劇に悲しみ広がる

ウガンダのオリンピック委員会(UOC)は9月4日、パリ五輪女子マラソン代表のレベッカ・チェプテゲイが死去したことを発表した。 チェプテゲイは9月2日、トレーニング先のケニアにおいて交際相手の男と口論となった末に、男からガ […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年9月号 (8月9日発売)

2024年9月号 (8月9日発売)

速報 パリ五輪
大盛況 福岡IH
久保凛 日本新特集!

page top