中国・杭州で開催されている第19回アジア大会の2日目午後セッションに行われた男子10000m。日本の田澤廉(トヨタ自動車)は28分18分66秒で4位、塩尻和也(富士通)が28分35秒02で5位に入賞した。2008年北京五輪5000m、10000m代表の竹澤健介さん(摂南大ヘッドコーチ)に、レースを振り返ってもらった。
◇ ◇ ◇
東京五輪5000m6位入賞のビルハヌ・イェマタウ・バレウ選手(バーレーン)という実力者をはじめ、出場選手のレベルは7月のアジア選手権と比べて格段に上がっていました。そのため、日本勢にとってはどのようにレースを展開すればいいか、非常に難しい状況だったと思います。
結果的に、田澤選手、塩尻選手が交互に引っ張るかたちとなり、バーレーン、インド勢に「うまく使われた」という流れになりました。途中でガンと上げても良かったのかもしれませんが、それで簡単に振り切れるような相手ではなく、何より自分が疲れてしまうでしょう。
バーレーン、インド勢はラストが強いことは、容易に想像できます。そういった選手たちを相手にどう順位を狙うのか。残り3000mで思い切って飛び出すか、ラスト1000mあたりからのロングスパートを仕掛けるかといった策が思い浮かびますが、そういった意味でも残り3周を切ってから塩尻選手が転倒に巻き込まれたのは残念でした。
田澤選手も、塩尻選手もグッと押していくタイプなので、2人で一緒に残り1000mを上げていければインド勢は振り切れたかもしれません。塩尻選手は今季、なだらかに上げながら後続を引き離す強さを見せていたので、どんなレースができていたのか見てみたかったですね。
田澤選手については、これが今年に入って6本目の10000mレース。その疲れは間違いなくあったでしょう。世界陸上後というスケジュール的な難しさがあり、しかもパリ五輪に向けて順位ポイントを確実に取らないといけない。その中で、スローペースの展開から28分10秒台にまとめ、4位に入ったことは健闘と言えます。
アジア大会はアジア選手権よりも、より「国の戦い」という意識が強くなります。各国とも、オリンピックのアジア版と捉え、国の威信を懸けて臨んでくる。中国勢は、各種目で世界選手権よりもこちらに仕上げてきた印象です。
次回の2026年は、日本での開催(愛知・名古屋)です。アジアの勢力図は、2014年の韓国・仁川大会あたりからあまり変わらず、バーレーンを中心に、インド勢が絡んでくるという状況です。
世界を見ると、そのバーレーン勢でも入賞のボーダーラインと言えるでしょう。つまり、アジアで勝つ力をつけないと、世界とは戦えないということ。アジアを制することは簡単なことではありませんが、どんどんチャレンジし、世界への道を開いていってほしいと思います。
◎竹澤健介(たけざわ・けんすけ)
摂南大陸上競技部ヘッドコーチ。早大3年時の2007年に大阪世界選手権10000m、同4年時の08年北京五輪5000m、10000mに出場。箱根駅伝では2年時から3年連続区間賞を獲得した。日本選手権はエスビー食品時代の10年に10000mで優勝している。自己ベストは500m13分19秒00(日本人学生最高)、10000m27分45秒59。
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