
9区区間歴代2位の激走で、チームを8位から3位に押し上げた青学大の岸本大紀(左)。右は10区の中倉啓敦
◇第99回箱根駅伝(1月2、3日:東京・大手町←→神奈川・箱根町/10区間217.1km)
連覇を目指した青学大は『史上最強世代』と言われた4年生を7区間に投入。だが、先頭に立ったのは4区終盤のわずかな時間のみ。各中継所では一度もトップ中継は叶わず、最後まで流れを引き寄せることができなかった。
歯車が狂ったのは、原晋監督が勝負ポイントと睨んでいた5区、6区の『山区間』だった。大会前日の朝に5区を予定した若林宏樹(2年)が体調不良を訴え、6区を予定していた脇田幸太朗(4年)を急遽スライドで起用。翌日の6区にリザーブとして準備をしていた西川魁星(4年)を配置した。
下級生の頃から山上り要員としても準備をしていた脇田は1時間12分47秒で区間9位と粘りを見せた。それでもほぼ同時にスタートした駒大・山川拓馬(1年)とは2分02秒の差をつけられてしまう。逆転優勝への足掛かりを作りたかった西川も序盤からペースが上がらず区間20位と苦戦。総合優勝を飾った駒大に山区間で7分03秒のビハインドを負い、原監督も「山がすべて。12月に入って順調に準備できていたが、最後にはまらなかった。選手起用含めて、監督である私の責任です」と敗戦を受け止めた。
それでも王者の意地を確かに見せた部分も垣間見えた。2区の近藤幸太郎(4年)は駒大・田澤廉(4年)、中大・吉居大和(3年)との壮絶なエース対決を繰り広げ、1時間6分24秒(区間2位)の大学新記録をマーク。4人抜きで7位から3位まで順位を押し上げた。さらに4区では前回3区で快走を見せた太田蒼生(2年)が、区間歴代3位となる1時間0分35秒の好タイムで一時首位を奪取する場面も作った。
復路では当日変更で9区に起用された岸本大紀(4年)が執念の快走。区間歴代2位の1時間7分27秒で、一時8位まで順位を下げたチームを再び3位に押し上げる快走を見せ、「近藤、太田、岸本。彼らは学生トップの力を見せてくれました。太田は来年のエース候補になる」と指揮官をうならせた。
今季の三大駅伝を振り返ると出雲4位、全日本と箱根が3位と、2強と呼ばれた駒大が三大駅伝で1つもミスなく3冠を達成した一方で、例年にないほど苦しんだ。
「どんな状況でもしっかりトップ3に入る底力は確かに見せてくれました。ただ、もうそれで喜んでいるチームじゃなくなったことは私も選手も感じている。この結果は真摯に受け止めて、また挑戦します」と決意を語った原監督。
「この1年、僕たち4年生が走りで見せてきた姿はしっかり後輩に伝わったと思うし、今回の結果に悔しいと思った選手もいると思う。来年はより強いチームを作ってほしいと思います」と語ったのは、今季の三大駅伝で唯一区間賞を獲得した岸本。チームの窮地を救ったエースの意地の走りは、王者へ再挑戦を誓う後輩たちへのエールとなったはずだ。
文/田中 葵

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