2021.09.19
◇日本インカレ(9月17~19日/埼玉・熊谷スポーツ公園)2日目
第90回日本インカレ2日目。男子100mの宮本大輔(東洋大)は、準決勝で10秒62(+1.1)の7着に終わり、最後のインカレでファイナルに残ることができなかった。
「5月に膝を痛めてからなかなか治らなかったです。日本選手権はオリンピックの選考会ということもあって出ないという選択はできなかったので出場して、その後はほとんど練習ができなかった」。8月中旬にようやくスパイクを履いて走り出したという。「正直、走れないのはわかっていました」。
山口・周陽中で今も残る中学記録(10秒56)を持ち、京都・洛南高に進学してからは10秒23まで自己記録を短縮。インターハイも2連覇を達成した。日本陸連ダイヤモンドアスリートにも選出されるなど、順調すぎるキャリアを築き、高校の先輩にも当たる桐生祥秀(現・日本生命)と同じ東洋大に進学した。しかし、この4年間、自己記録が動くことはなかった。
「中学の時は走るのが楽しかったです。高校は苦しいけど結果も出て充実感もあった。でも、大学では苦しいことばかりでした」。思いは溢れ、涙がこぼれる。中学時代からスーパースターの宮本は、これまで何度も取材エリアを通ってきたが、ここで涙を見せたのは初めてだった。「高3の山形インターハイの4継の後にもテントですごく泣いたんですけど……やっぱり悔しいです……」と言葉が詰まる。
「試合に出たくない、と何回も思いました。インカレも走れないのはわかっていましたし、正直、中止になればいいのにと思ったこともあります」。頂点を極めてきたからこそ、ふがいない姿、遅い自分を見せたくない。逃げ出しそうになりながらも、「ラストのインカレは出たかった」とこの舞台に立った。「やっぱり現実は甘くないですね」。中学、高校でも日本一を経験したが、大学日本一は最後まで手にできなかった。
苦しいことのほうが多かった4年間だが、「1回も辞めようと思ったことはない」と言う。「ユニバーシアードも経験できて、2回世界リレー代表にもなれました。自己ベストは出ませんでしたが、出そうなレースも何回かありました。それに僕は陸上を取ったら意味がないんで」。
痛みはもうない。あとは覚悟を持って冬場から積み重ねるだけ。卒業後も競技を続ける予定。「課題はいっぱいあります。こんなところで終わっちゃダメ。終われないです」。涙は止まらない。勝って当たり前という重圧に立ち向かってきた男が味わった「初めての挫折」の4年間。この時間を糧にする強さを、宮本大輔は持っている。

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.06.11
2025.05.28
女子10000mがレース途中で異例の中断!! 大雨と雷の影響も選手困惑/アジア選手権
-
2025.06.04
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.06.16
100mH・石原南菜が13秒33!地元で高校歴代2位・U18日本新・高2歴代最高の激走/IH北関東
◇インターハイ北関東地区大会(6月13~16日/カンセキスタジアムとちぎ、栃木県総合運動公園多目的広場投てき場)最終日 広島インターハイ出場を懸けた北関東地区大会の最終日の4日目が行われ、女子100mハードルで石原南菜( […]
2025.06.16
クレイ・アーロン竜波が800m1分46秒31! ポートランドのレースで6年ぶり自己ベスト更新
6月15日に米国・ポートランドで行われたポートランド・トラックフェスティバルの男子800mで、クレイ・アーロン竜波(ペンシルベニア州立大)が1分46秒31の自己ベストで5位に入った。 クレイのこれまでの自己ベストは、神奈 […]
2025.06.16
女子400mHサザーランドが52秒46の全米学生新V 女子3000m障害レンゴールは今季世界最高の8分58秒15/全米学生選手権
6月11日から14日、米国オレゴン州ユージンで全米学生選手権が開催され、女子400mハードルではS.サザーランド(ミシガン大/カナダ)が52秒46の全米学生新で優勝を飾った。 サザーランドは昨年のパリ五輪では7位に入って […]
Latest Issue
最新号

2025年7月号 (6月13日発売)
詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会