2026.07.10
名古屋アジア大会男子5000m代表の森凪也(Honda)が、都内のナイキジャパン本社でメディアの取材に応じた。3000mの日本記録保持者となり、初の日本一、昨年に続く日本代表入りと5000mで日本トップの地位を固めつつある26歳が、ここまでのキャリアとまっすぐ見据える未来を語った。
◇ ◇ ◇
6月14日の日本選手権では、13分22秒41で初優勝を飾った。「初出場で注目もされない中だった」2年前は2位と健闘したが、前回は「優勝すると自分でも思っていましたし、周りもそう思ってくれていた」なかで2位となり、「負けた印象が強かった」という。
だからこそ、「今年はちゃんと順位を」と臨んでいただけに、初めてつかんだ日本王者の称号に「1年越しに達成できて、すごくうれしいです」と喜びもひとしお。5月4日のゴールデンゲームズinのべおかで13分14秒18(日本歴代11位)をマークし、日本陸連派遣設定記録(13分14秒36)を突破していたことで、日本選手権に勝てば代表に即時内定できる状況を作ることができていたことも、勝因の一つだ。
「そもそも年間の予定でもありましたが、あとは優勝するだけ(で内定を得られる)というところにもっていくことができていたので、そこだけをターゲットに走りました」
レース運びに、その心理面の余裕が現れている。序盤は学生が積極的に引っ張り、集団から抜け出す場面も作ったが、森は第2集団で待機。残り3周で荻久保寛也(ひらまつ病院)、残り2周で塩尻和也(富士通)がレースを動かすと、そこにしっかりと対応し、残り1周の勝負を迎える。
勝負を決めるスパートを放ったのは残り200m。昨年は井川龍人(旭化成)に残り100mを切ってからの競り合いに敗れたが、1年1年積み重ねたものを勝負所で発揮した。
武器とするのは「スパート」ではなく「対応力」
福岡大大濠高、中大を経て、22年にHondaへ入社。学生時代に大きな実績を残したわけではなく、特に「箱根駅伝に向けてトレーニングにうまく対応できなかった」と振り返る。だが、高校時代に感じた「トラックが好き」という感覚を思い起こし、実業団では5000mを中心に取り組むと、自己ベストを着実に短縮していく。
5000mのレベルアップへ、焦点を当てたのが「スピード」だった。スピードを出せる身体や動きを作り上げることをベースに、1つひとつのレースに向けて緻密に準備を重ねて臨む。その結果を受けて課題を洗い出し、さらに次への準備を進める。そうして「速くなっていく過程が楽しかった」と振り返る。
2年前の日本選手権、初の日本代表入りとなるアジア選手権代表を決めた昨年4月の金栗記念、3000mで日本人トップの4位を占めた昨年5月のセイコーゴールデングランプリなどで、森のレーススタイルが徐々に確立されていく。それが、今や〝代名詞〟ともなった「スパート」――。
ただ、森自身は「そこが武器ではないと思っています」と言う。それは、昨年の2度にわたる国際舞台の経験から来るものだ。
5月末のアジア選手権では、銅メダルを獲得。9月の東京世界選手権では予選敗退となったが、初めて世界の大舞台に立った。だが、アジア選手権では「ラスト400mまでいかに足を残せるか」を目指して準備をしたが、「それだけでは勝てませんでした」。世界選手権では、「ラスト2000mの上がりがおそらく5分を切っています(4分59秒)。僕の1500mのベストが当時3分40秒86。それとほとんど変わらないぐらいです」。
そこから導き出したものが、勝負の段階でその場にいることと、その段階でいかに余裕を作れているか。つまり、レース全体の「対応力」が「武器になっていけばいい」と、森は考えている。
そのための指針が、まさに世界選手権のレース。「ラスト2000mで5分」に対応するためのトレーニングを積み重ねている。
「3月や4月にやっていたのは、300m42~43秒を30秒リカバリーで3本、400m57~58秒で1本と60~61秒で1本を30秒リカバリーで2本×2セット、200mだと25~26秒など、速いペースを、少ないリカバリーで行い、乳酸を1度出した後に動かす、といったトレーニングです」
どちらかというと1500mや3000m向けの内容だが、「5000mのために、そこはまだまだ強化しないといけない。これまでは10000m寄りの練習でしたが、1500mなどに寄りつつも、ちゃんと5000mを走れるような準備をしてきました」と言う。
今季はゴールデンゲームズで記録を残したあと、5月17日のセイコーゴールデングランプリ(GGP)3000mを12年ぶり日本新の7分38秒98で制覇。5月30日のミドルディスタンスチャレンジ(MDC)1500mでは日本歴代3位の3分36秒53をマークし、第一人者の飯澤千翔(住友電工)とわずか0.63秒差の2位を占めた。そして、日本選手権での初優勝。取り組みを、見事に結果として示した。

レースでは、勝負の段階でいかに余裕を作れているかを重視している
「(最後の)スプリントがある選手でも、スプリントを使う前に〝そこ〟にいないという状態はやっぱりあります。スプリントに関して、僕は日本の中で突出したものはないと本当に思っています。対応力を武器にするためには、高いレベルの選手たちと走るというのは大事で、そこでちゃんと順位を取る。記録よりも順位のほうが、トラックでは大事だと思っています」
8月に日本新挑戦プラン、アジア大会は「ラスト200mが勝負」
目標達成のために緻密に逆算し、準備をする。それが森の強さを支えている。
例えば大きなレースに向けて、近年は長野など標高の高い場所で合宿を組んでいるが、昨年の東京世界選手権前は「高地で強度の高い練習を入れ過ぎると(ケガなどの)リスクもある。
世界選手権に向けてはかなり疲労が出てしまったんです」。今年の日本選手権に向けては、GGP後に高地合宿を行っているが、高地では「有酸素系などの低強度」、高強度は「平地に下りました」。その高強度のメインをMDCと位置付け、レース後に再び高地へ戻って「ボリューム(を増やした練習)を入れた」と明かす。
また、合宿に「10足はシューズを持っていく」というほど、メニューに合わせたギアをチョイスすることも準備の一環だ。
レースで着用しているのは『ナイキ ドラゴンフライ 2 エリート』で、「反発がかなり強い」ところを重視している。
ただ、「練習ではそれほど履きません」と森。メインのポイント練習では『ナイキ ドランゴンフライ 2』、インターバルなどはスパイクではなく『ナイキ ストリークフライ 2』を着用することが多いという。
ジョグでは『ナイキ ペガサス 42』や『ナイキ ボメロ 18』を愛用。テンポ走では『ナイキ ヴェイパーフライ』シリーズ、「105分、28kmぐらいまでは走る」というロングランは『ナイキ アルファフライ』シリーズを履いて行っている。『ナイキ ペガサス 42』は反発がついて、スピードの乗っていく感覚が作りやすいそうで、「レース前やポイント練習前のウォーミングアップで一番使えるシューズ」と話した。
ウェアも、近年の暑熱環境に備えて「日本は湿度が高いので、汗で張り付かないのがすごくいい」と『ナイキ エアロフィット』がお気に入りだ。
高校の時に夢に描いた「日本代表のユニフォームを着る」ことは、昨年かなえた。その喜びとともに、その先に続くであろう道のりの厳しさもはっきりとわかった。
「どうしようかと思ったけど、やっぱり先に進むほうが楽しそうだし、先に進める余力は心も身体もあります。絶対にもっといいパフォーマンスができると信じている。ハードなことをやり続けるのはしんどいですが、そこにワクワク感を見出せたので、東京世界陸上が終わってから、先に進もうと決めました」
年始に掲げた今年の目標は「5000mで日本選手権優勝とアジア大会優勝」と「2種目(5000mと3000m)での日本記録更新」。そのうち、すでに2つは達成した。
8月に、欧州で5000mの日本新に挑戦するプランがある。「今の流れの延長線上でいくと、日本人初の12分台はかなり魅力的」と、口元を引き締める。
9月の名古屋アジア大会に向けては、「おそらくラスト200mの勝負になると思うので、そこで勝てればいいかなと思っています」。日本選手権のレースを、さらに高いレベルで再現できれば、一番輝くメダルが見えてくる。
その先に待つ世界の舞台をまっすぐ見据え、森は自分自身と向き合い、走り続ける。

これから先に続く険しい道のりも自身と向き合い、乗り越えていく
レースでは、勝負の段階でいかに余裕を作れているかを重視している[/caption]
「(最後の)スプリントがある選手でも、スプリントを使う前に〝そこ〟にいないという状態はやっぱりあります。スプリントに関して、僕は日本の中で突出したものはないと本当に思っています。対応力を武器にするためには、高いレベルの選手たちと走るというのは大事で、そこでちゃんと順位を取る。記録よりも順位のほうが、トラックでは大事だと思っています」
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例えば大きなレースに向けて、近年は長野など標高の高い場所で合宿を組んでいるが、昨年の東京世界選手権前は「高地で強度の高い練習を入れ過ぎると(ケガなどの)リスクもある。
世界選手権に向けてはかなり疲労が出てしまったんです」。今年の日本選手権に向けては、GGP後に高地合宿を行っているが、高地では「有酸素系などの低強度」、高強度は「平地に下りました」。その高強度のメインをMDCと位置付け、レース後に再び高地へ戻って「ボリューム(を増やした練習)を入れた」と明かす。
また、合宿に「10足はシューズを持っていく」というほど、メニューに合わせたギアをチョイスすることも準備の一環だ。
レースで着用しているのは『ナイキ ドラゴンフライ 2 エリート』で、「反発がかなり強い」ところを重視している。
ただ、「練習ではそれほど履きません」と森。メインのポイント練習では『ナイキ ドランゴンフライ 2』、インターバルなどはスパイクではなく『ナイキ ストリークフライ 2』を着用することが多いという。
ジョグでは『ナイキ ペガサス 42』や『ナイキ ボメロ 18』を愛用。テンポ走では『ナイキ ヴェイパーフライ』シリーズ、「105分、28kmぐらいまでは走る」というロングランは『ナイキ アルファフライ』シリーズを履いて行っている。『ナイキ ペガサス 42』は反発がついて、スピードの乗っていく感覚が作りやすいそうで、「レース前やポイント練習前のウォーミングアップで一番使えるシューズ」と話した。
ウェアも、近年の暑熱環境に備えて「日本は湿度が高いので、汗で張り付かないのがすごくいい」と『ナイキ エアロフィット』がお気に入りだ。
高校の時に夢に描いた「日本代表のユニフォームを着る」ことは、昨年かなえた。その喜びとともに、その先に続くであろう道のりの厳しさもはっきりとわかった。
「どうしようかと思ったけど、やっぱり先に進むほうが楽しそうだし、先に進める余力は心も身体もあります。絶対にもっといいパフォーマンスができると信じている。ハードなことをやり続けるのはしんどいですが、そこにワクワク感を見出せたので、東京世界陸上が終わってから、先に進もうと決めました」
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その先に待つ世界の舞台をまっすぐ見据え、森は自分自身と向き合い、走り続ける。
[caption id="attachment_211262" align="alignnone" width="800"]
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