2025.09.10

世界最高峰のダイヤモンドリーグ。男子3000m障害の絶対王者ソフィアン・エル・バッカリ(モロッコ)がチラリと右を見やり、表情が変わる。1人の日本人のスパートに少しだけ歯を食いしばった。
「さすがに備えていたのはわかっていました。余裕はあったと思います」
だが、「勝ちに行きましたし、思ったよりあっさり抜かせてくれた」時は、もしかすると――と思わせた。三浦龍司(SUBARU)が、世界のライバルにとって入賞争いの1人から、メダル争いの1人として認識された瞬間だった。
エル・バッカリの2段スパートには屈したが、8分03秒43は自らの日本記録を6秒以上も更新。「そろそろ更新したいと思っていましたし、狙った時に出せたのは良かったです。思っていた以上に更新できたのはうれしかったです」。
今シーズンがスタートする前の取材でこう話していた。「8分05秒くらいで行ければ違った感覚がある。出せそうな感じはあります。それくらいのタイムを持って世界選手権に臨みたい」。まさに有限実行だった。
昨年のパリ五輪では8位入賞を果たしたが、レースを振り返ると残り1000mで「そこだろ!行け!」と今でも悔やむシーンがある。今回のDLでエル・バッカリを追い詰めたレースは、まさにその勝負どころで「いつもなら溜めていたところを、振り切って、覚悟を持って行ったんです」。自ら殻を破った。
「昨年は少し足りていなかった」というクロスカントリーやファルトレクなど不整地を使った練習で土台を作ると、今季は800mや1500mといったスピード系のトレーニングの質がグッと上がった。「400mを5本いくメニューでも、段々と良いフォームで最後までこなせるようになった」。

メダル獲得に向けてのプランは完成間近
今季の世界リスト3位で立つ国立競技場。「ダイヤモンドリーグとは違うレースの進み方になる」としっかりと頭に入れた上で「障害、水濠は大きなアドバンテージ。2000mまでの余裕度が大事で、最後の第二集団が4、5人に絞られた中にいられれば」とメダルへの道筋を思い描く。
「メダルが着実に近づいています」
三浦が出合うべくして出合ったサンショーはまさに“天職”。2021年に国立競技場で躍動し、7位入賞という快挙を成し遂げた青年は、4年かけて世界トップランナーへと駆け上がった証を聖地に刻む。
男子3000m障害は初日(13日)の午後に予選が行われ、3日目の午後に決勝が行われる。
文/向永拓史

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