2025.07.07
7月6日に行われた第109回日本選手権最終日の男子5000m決勝。井川龍人(旭化成)が13分37秒59で初優勝を飾った。2008年北京五輪5000m、10000m代表の竹澤健介さん(摂南大ヘッドコーチ)に、レースを振り返ってもらった。
◇ ◇ ◇
今回の男子5000mは予選、決勝の2ラウンド制となり、決勝もペースメーカーがつかないレースとなりました。そのため、日本一を決める「日本選手権」として、非常に見応えのある勝負になったと感じています。大会を盛り上げるという意味でも、“成功例”と言えるのではないでしょうか。
近年はペースメーカーがついて、ハイペースからそれを維持できた選手が勝つという展開。今回は状況を冷静に見て判断できる選手、強さを持つ選手が上位に来ている印象です。それは予選から見て取れます。
気象条件を考えると、暑い中で中1日のスケジュールは選手にとってはきつかったでしょう。そのため、予選から決勝への流れの作り方が勝負を分ける一つのポイントでした。やはり、予選をうまく走れた選手が、決勝でも力を発揮できています。逆に、予選の最後で上げるなど、力を使って突破した選手は、苦戦した傾向にありました。
その中で、見事なスパートで初優勝を飾った井川龍人選手のラストの強さは目を見張るものがありました。1500mの選手にも勝るとも劣らないスプリントで、今年のニューイヤー駅伝のアンカー勝負でも発揮された彼の武器が存分に生かしたスパートでした
身体つきを見てもしっかりと絞れていて、いいトレーニングを積んできたことがひと目でわかる仕上がり。そして、レース内容としても、自分の勝負するパターンがしっかりと定まっていたように感じました。
「勝つこと」に集中し、終始3番手あたりにつけて誰が出てもすぐさま反応する。3900mで塩尻和也選手が前に出た時の対応、余裕度を見ても、「行けるところでスパートする」ことだけ考えて、準備していることがうかがえました。
優勝候補に挙げられた森凪也選手(Honda)は、スパートのタイミングが少し早かったでしょうか。井川選手とすれば、森選手のスパートに合わせて、かぶせにいったかたちで、勝負を決めやすいパターンです。残り200mより少し前の段階でスパートをかけているので、少しあせりもあったかもしれません。
また、春からアジア選手権選考会の金栗記念、セイコーゴールデングランプリ、アジア選手権と、東京世界陸上出場のためには欠かせない重要なレースが続いた影響もあったと思います。「勝たないといけない」立場にいた森選手と、「うまくいけば勝てる」と臨んだ井川選手。これも、勝敗を分けた要因だったのではないでしょうか。
今回のラスト1000mが2分29秒。世界のトップたちは2分23~24秒では普通に上がってきます。特に、世界大会の予選は着順を決めるラスト勝負は非常に激しくなり、世界大会特有の削り合いを耐えて勝負できる位置にいたうえで、日本選手権以上の上りが求められます。
森選手をはじめ、日本人選手も東京世界陸上への出場の可能性を残しています。出場できたとしたら、ラスト勝負をぜひ勝ち抜いてもらいたいですね。
上位選手を見ると、遠藤日向選手(住友電工)もレースの円熟味が増してきましたし、萩久保寛也選手(ひらまつ病院)も調整が非常にうまくいっていたように感じました。また、学生の頑張りも光りました。序盤でハイペースを作った鈴木琉胤選手(早大)は、自分の目指すべき場所を見定めたうえで引っ張り、順位も10位に粘ったことに彼の強さを感じました。中盤を牽引した小池莉希(創価大)も、積極的に引っ張るレースを重ねて自分を磨いてきた選手。今後の活躍が楽しみです。
◎竹澤健介(たけざわ・けんすけ)
摂南大陸上競技部ヘッドコーチ。早大3年時の2007年に大阪世界選手権10000m、同4年時の08年北京五輪5000m、10000mに出場。箱根駅伝では2年時から3年連続区間賞を獲得した。日本選手権はエスビー食品時代の10年に10000mで優勝している。自己ベストは500m13分19秒00、10000m27分45秒59。
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