2025.07.07
7月6日に行われた第109回日本選手権最終日の男子200m決勝。鵜澤飛羽(JAL)が日本歴代4位の自己ベストに並ぶ20秒12(±0)で3連覇を飾った。2008年北京五輪男子4×100mリレー銀メダリストの高平慎士さん(富士通一般種目ブロック長)に、レースを振り返ったもらった。
◇ ◇ ◇
男子200m決勝の直前まではコーナーに対して向かい風が吹いていましたが、スタートの時点で風が止み、良いコンディションになったと思います。その時点で「ジャスト20秒の戦いかな」と思ってレースを観ました
そして、鵜澤飛羽選手の出足を見て、「いきなり行ったな」と感じました。スタートからいきなりいって、明らかに回転数が上がっていた。彼の「戦いに行く」という意思表示が全面に出た場面だったと思います。
良いスタートを切ったので、あとはそれが持つのかどうかの勝負。前半、思ったほど前に出られていないと感じましたが、それは他の選手が頑張ったから。水壕を越えたあたりから前に出始めて、コーナーを抜けてリードするまではプランニング通りだったでしょう。
ただ、ラスト20m。記録を狙いに行っているのもあるし、体力的にも尽くした面もあったでしょう。動きが間延びしたかなという印象を受けました。
それでも、自己タイの20秒12ですから、素晴らしいと言えます。5月3日の静岡国際(20秒13)、5月31日のアジア選手権(20秒12)と合わせて、これで3度目の20秒1台ですから、アベレージは非常に高い。これは世界大会に臨むうえで、私もすごく追い求めていたことですから。
しかも、力を試していたと感じた静岡国際、勝つことを目指したアジア選手権、狙いに行った日本選手権と、異なるレースであってもまとめる力は特筆すべきこと。ピラミッドの頂点をいかに高くするかも重要ですが、その下を着実に広げ続けているという点で、いよいよ世界のファイナル、19秒台がしっかりと照準に入ってきたと言えます。
ラスト20mは、世界陸上では並ばれている、もしくは前に出られている状況だと思います。その中で、ラストの〝間延び〟をどう修正するか。また、準決勝を通過する水準には近づいていますが、決勝で戦う水準に引き上げることができるか。ノア・ライルズ選手(米国)や、レツィレ・テボゴ選手(ボツワナ)ら金メダルを争う選手たちは、準決勝から決勝へ、普通に0.3秒ぐらいは水準を引き上げていきます。
代表に内定したことで、2ヵ月の準備期間があり、地元という地の利もある。2003年のパリ世界選手権で銅メダルを獲得した末續慎吾さん、17年ロンドン世界選手権で7位に入賞したサニブラウン・アブデル・ハキーム選手(当時・東京陸協/現・東レ)とはまた違う景色を見せてくれる可能性を十分に感じています。
2位の西裕大選手(MINT TOKYO)が20秒53、3位の飯塚翔太選手(ミズノ)が20秒66。ともに、鵜澤選手に前半は食らいつく気概を感じました。しかし、その中でも20秒2~3台でまとめてほしかったな、と思います。どちらも、それが可能な立ち位置にいると思いますし、そういうステージでなければ世界と戦うのは難しくなります。
本番の4×100mリレーの層を厚くするためにも、やはり200mのフルエントリーは欠かせません。代表経験者の上山紘輝選手(住友電工)、標準突破者の水久保漱至選手(宮崎県スポ協)らも含め、常に進化するイメージをどう持ちながら、鵜澤選手に「とりあえず勝てて良かった」と思わせる競り合いができる水準へ、男子200m全体を引き上げていったほしいと思います。
◎高平慎士(たかひら・しんじ)
富士通陸上競技部一般種目ブロック長。五輪に3大会連続(2004年アテネ、08年北京、12年ロンドン)で出場し、北京大会では4×100mリレーで銀メダルに輝いた(3走)。自己ベストは100m10秒20、200m20秒22(日本歴代7位)
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