2023.05.16
クイーンズ駅伝は「1区がカギ」
2019年の創部以降、着実に成長を遂げてきたダイソー女子駅伝部が、今年を〝勝負の年〟と位置づけてシーズンインした。チームを率いる岩本真弥監督は、広島・世羅高監督時代に全国高校駅伝で男女計6回の優勝を果たした実績を持つ名将。
「5年目にクイーンズ駅伝に出る、というのが創部当初の目標で、すでに昨年、一昨年とクイーンズ駅伝に出場できています。ここまで順調に来ていますが、区切りの5年目を迎え、もう一段階上げていかないと、と考えていますので、そういった意味で〝勝負の年〟というわけです」と話す。
駅伝初挑戦だった一昨年はプリンセス駅伝で15位を占めて早くも全日本行きを決め、本番のクイーンズ駅伝は21位。昨年はプリンセス駅伝が5位と健闘したが、クイーンズ駅伝は18位だった。
「去年のプリンセス駅伝は10~15位だと思っていたので、5位は出来すぎ。1、2区で良く流れて、アンカーが予想以上にかんばってくれました。しかし、クイーンズ駅伝では過去2回とも1区で出遅れてまともなレースをさせてもらえていませんので、1区に力のある選手を置けることがもう一段階上を目指すためのカギになってきますね」と岩本監督。

岩本真弥監督はチームを着実に成長させるスタンスで指導にあたっている
竹原の成長がチームに刺激
双子の加藤姉妹も期待の存在
チームの成長に向けて個々の実力アップが必要で、「昨年までは(日本人選手で)チーム内に5000mで16分を切る選手が1人もいなかったのですが、今年は複数人が15分台に入ってほしい」と岩本監督は話す。
その期待を担うのは入社2年目の竹原さくら(昨年度までの自己ベスト16分08秒65)と3年目の加藤小雪(同16分11秒99)あたり。そのうち、竹原が2月下旬の日本選手権クロスカントリー(福岡)のシニア女子8kmで3位に食い込み、チームメイトに刺激を与えている。
竹原は1月下旬から2週間ほど左足くるぶし付近の故障で走れない時期があり、バイクを漕いだりして心肺機能の低下を防いでいた。そのため、日本選手権クロカンは「調子がいい状態ではありませんでしたが、『強い選手に挑戦しよう』と決めて走ったことが、想像以上の好結果につながりました」と笑顔で話した。
大分東明高時代までは上り坂が苦手な選手だったものの、ダイソーに入って起伏のある不整地を走るクロカン練習を多く重ねて実力をつけている。「昨年の駅伝(プリンセス、クイーンズ)は一番短い2区でしたが、今年は長い距離の区間を任せてもらえるようにして、そこでチームに貢献したい」と頼もしい。
一方の加藤は昨年、プリンセス駅伝で1区、クイーンズ駅伝では最終6区を務めた。実業団に入ってもチームメイトである双子の姉・美咲と切磋琢磨。「入社したばかりの頃は姉に負けてばかりだったので、負けたくないという気持ちが強くなり、お互いに刺激し合っています」という。
美咲はこの春、故障で調整が遅れているものの、5000mのベストは16分08秒79。監督は竹原と加藤姉妹が15分台突入の候補と考えている。このうち竹原は4月29日の織田記念で16分00秒97の自己新をマーク。15分台は目前だ。

2月下旬の日本選手権クロスカントリー(福岡)のシニア女子8kmで3位を占めた竹原(左)と10位に入った加藤小雪

昨年10月のプリンセス駅伝のアンカー(6区)で区間2位と快走し、2チームをかわして5位でフィニッシュした加藤美咲
クイーンズ駅伝では
「上位で戦いたい」
若手に負けじと、過去2年のプリンセス、クィーンズ両駅伝では常に10km超え区間を任されて信頼度が高い1期入社の平村古都も健在で、「昨年は大幅な自己新は出せていませんが、ケガをせず、ちょっとずつですけど成長できています。駅伝で長い距離を走られてもらえるのはうれしいのですが、エース区間と言われているところでそれにふさわしい走りができるよう、もっとがんばりたい」と話す。
また、チームのリーダー的存在の平村は、「これまではクイーンズ駅伝に出ることがチームの目標で、プリンセス駅伝で終わっている面がありましたが、今後はクイーンズ駅伝に出るだけでなく、少しでも上位で戦うことを目標にしたい」ときっぱり。
インターナショナル区間には2021年U20世界選手権3000m金メダリストのテレシア・ムッソーニが控えており、〝頼れる大砲〟にいい位置でつなげば、チームはより一層加速するはず。ダイソー女子駅伝部の選手たちが〝勝負の年〟にどんな走りをするか、注目だ。

1期入社の松本(先頭左)、平村(その右)らがチームを牽引する
「2022年度 実業団of the Year」社会貢献賞を受賞
創業50周年の節目、CSR活動をより活発に
ダイソー女子駅伝部は社員や地域の方々に勇気や希望を与える活躍が期待されているが、地元・広島の陸上界を活性化することも創部した大きな目的。「広島県はスポーツが盛んで、野球もサッカーもバスケットも、女子野球、女子サッカーもあってメディアに取り上げられていますが、陸上は完全に取り残されています。陸上もどんどんメディアに発信していかないと死活問題。それをなんとか維持していきたい」と岩本監督は話す。
2022年は母体である大創産業の50周年の節目で、それ以前から行っていた社会貢献活動をより一層推し進めてきた。そのなかでも女子駅伝部の活動が最も多いという。同部は、ダイソーの商品と同じ110円で参加できる記録会「ダイソーチャレンジ」のシリーズを2021年に創設。
コロナが落ち着いてきた2022年度から本格化させ、1年間に7大会を実施し、小中高校生だけでなく、一般の方にも走る機会を提供してきた。そのほか、地元の小中学校で陸上競技の『出前授業』も始め、所属する外国人選手が子どもたちの前で講演することもあり、その取り組みは多岐にわたる。
そんな積極的な活動が評価され、日本実業団陸上競技連合が選定する「2022年度 実業団of The Year」の社会貢献賞を受賞した。また、この春には部員全員が陸上競技の審判資格を取得。依頼があり、スケジュールさえ合えば、積極的に競技会の運営サポートをしていく構えだ。
「審判資格があれば選手を引退した後、セカンドキャリアとして陸上に関わっていくこともできますし、ルールがよくわかれば陸上の見方も変わる。大会の審判に学校の先生方を呼ぶのは難しい時代になりつつある昨今は、役員不足がどの地域でも深刻です。育ててもらった陸上に恩返しの意味も含めて、そういうところに協力していくのがこれからのスタイルでしょうか」
陸上界や地元への恩返しを大切にする指揮官のもと、ダイソー女子駅伝部は今後もさまざまな社会貢献活動を続けていくつもりだ。

4月5日に行われたダイソーチャレンジ記録会で元気よく走り出す小学生。この日は小中高生や一般ランナーまで283人が中長距離種目にエントリー。2023年度は前年に続いて7大会(1大会はロード)を予定しており、新たに短距離種目も入れてさらに陸上の普及を図る大会もあるという
クイーンズ駅伝は「1区がカギ」
2019年の創部以降、着実に成長を遂げてきたダイソー女子駅伝部が、今年を〝勝負の年〟と位置づけてシーズンインした。チームを率いる岩本真弥監督は、広島・世羅高監督時代に全国高校駅伝で男女計6回の優勝を果たした実績を持つ名将。 「5年目にクイーンズ駅伝に出る、というのが創部当初の目標で、すでに昨年、一昨年とクイーンズ駅伝に出場できています。ここまで順調に来ていますが、区切りの5年目を迎え、もう一段階上げていかないと、と考えていますので、そういった意味で〝勝負の年〟というわけです」と話す。 駅伝初挑戦だった一昨年はプリンセス駅伝で15位を占めて早くも全日本行きを決め、本番のクイーンズ駅伝は21位。昨年はプリンセス駅伝が5位と健闘したが、クイーンズ駅伝は18位だった。 「去年のプリンセス駅伝は10~15位だと思っていたので、5位は出来すぎ。1、2区で良く流れて、アンカーが予想以上にかんばってくれました。しかし、クイーンズ駅伝では過去2回とも1区で出遅れてまともなレースをさせてもらえていませんので、1区に力のある選手を置けることがもう一段階上を目指すためのカギになってきますね」と岩本監督。 [caption id="attachment_101408" align="alignnone" width="911"]
竹原の成長がチームに刺激 双子の加藤姉妹も期待の存在
チームの成長に向けて個々の実力アップが必要で、「昨年までは(日本人選手で)チーム内に5000mで16分を切る選手が1人もいなかったのですが、今年は複数人が15分台に入ってほしい」と岩本監督は話す。 その期待を担うのは入社2年目の竹原さくら(昨年度までの自己ベスト16分08秒65)と3年目の加藤小雪(同16分11秒99)あたり。そのうち、竹原が2月下旬の日本選手権クロスカントリー(福岡)のシニア女子8kmで3位に食い込み、チームメイトに刺激を与えている。 竹原は1月下旬から2週間ほど左足くるぶし付近の故障で走れない時期があり、バイクを漕いだりして心肺機能の低下を防いでいた。そのため、日本選手権クロカンは「調子がいい状態ではありませんでしたが、『強い選手に挑戦しよう』と決めて走ったことが、想像以上の好結果につながりました」と笑顔で話した。 大分東明高時代までは上り坂が苦手な選手だったものの、ダイソーに入って起伏のある不整地を走るクロカン練習を多く重ねて実力をつけている。「昨年の駅伝(プリンセス、クイーンズ)は一番短い2区でしたが、今年は長い距離の区間を任せてもらえるようにして、そこでチームに貢献したい」と頼もしい。 一方の加藤は昨年、プリンセス駅伝で1区、クイーンズ駅伝では最終6区を務めた。実業団に入ってもチームメイトである双子の姉・美咲と切磋琢磨。「入社したばかりの頃は姉に負けてばかりだったので、負けたくないという気持ちが強くなり、お互いに刺激し合っています」という。 美咲はこの春、故障で調整が遅れているものの、5000mのベストは16分08秒79。監督は竹原と加藤姉妹が15分台突入の候補と考えている。このうち竹原は4月29日の織田記念で16分00秒97の自己新をマーク。15分台は目前だ。 [caption id="attachment_101409" align="alignnone" width="800"]

クイーンズ駅伝では 「上位で戦いたい」
若手に負けじと、過去2年のプリンセス、クィーンズ両駅伝では常に10km超え区間を任されて信頼度が高い1期入社の平村古都も健在で、「昨年は大幅な自己新は出せていませんが、ケガをせず、ちょっとずつですけど成長できています。駅伝で長い距離を走られてもらえるのはうれしいのですが、エース区間と言われているところでそれにふさわしい走りができるよう、もっとがんばりたい」と話す。 また、チームのリーダー的存在の平村は、「これまではクイーンズ駅伝に出ることがチームの目標で、プリンセス駅伝で終わっている面がありましたが、今後はクイーンズ駅伝に出るだけでなく、少しでも上位で戦うことを目標にしたい」ときっぱり。 インターナショナル区間には2021年U20世界選手権3000m金メダリストのテレシア・ムッソーニが控えており、〝頼れる大砲〟にいい位置でつなげば、チームはより一層加速するはず。ダイソー女子駅伝部の選手たちが〝勝負の年〟にどんな走りをするか、注目だ。 [caption id="attachment_101455" align="alignnone" width="800"]
「2022年度 実業団of the Year」社会貢献賞を受賞 創業50周年の節目、CSR活動をより活発に
ダイソー女子駅伝部は社員や地域の方々に勇気や希望を与える活躍が期待されているが、地元・広島の陸上界を活性化することも創部した大きな目的。「広島県はスポーツが盛んで、野球もサッカーもバスケットも、女子野球、女子サッカーもあってメディアに取り上げられていますが、陸上は完全に取り残されています。陸上もどんどんメディアに発信していかないと死活問題。それをなんとか維持していきたい」と岩本監督は話す。 2022年は母体である大創産業の50周年の節目で、それ以前から行っていた社会貢献活動をより一層推し進めてきた。そのなかでも女子駅伝部の活動が最も多いという。同部は、ダイソーの商品と同じ110円で参加できる記録会「ダイソーチャレンジ」のシリーズを2021年に創設。 コロナが落ち着いてきた2022年度から本格化させ、1年間に7大会を実施し、小中高校生だけでなく、一般の方にも走る機会を提供してきた。そのほか、地元の小中学校で陸上競技の『出前授業』も始め、所属する外国人選手が子どもたちの前で講演することもあり、その取り組みは多岐にわたる。 そんな積極的な活動が評価され、日本実業団陸上競技連合が選定する「2022年度 実業団of The Year」の社会貢献賞を受賞した。また、この春には部員全員が陸上競技の審判資格を取得。依頼があり、スケジュールさえ合えば、積極的に競技会の運営サポートをしていく構えだ。 「審判資格があれば選手を引退した後、セカンドキャリアとして陸上に関わっていくこともできますし、ルールがよくわかれば陸上の見方も変わる。大会の審判に学校の先生方を呼ぶのは難しい時代になりつつある昨今は、役員不足がどの地域でも深刻です。育ててもらった陸上に恩返しの意味も含めて、そういうところに協力していくのがこれからのスタイルでしょうか」 陸上界や地元への恩返しを大切にする指揮官のもと、ダイソー女子駅伝部は今後もさまざまな社会貢献活動を続けていくつもりだ。 [caption id="attachment_101412" align="alignnone" width="800"]
[/caption] ダイソー女子駅伝部公式ホームページ
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