2020.06.11
【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!!
BROOKSの「HYPERION TEMPO(ハイペリオンテンポ)」
近年、マラソン界で「厚底レーシングシューズ」がトレンドとなる中で、米国トップブランドであるBROOKS(ブルックス)も独自の厚底シューズをリリースした。それが「HYPERION(ハイペリオン)」シリーズだ。今回はその中で「HYPERION TEMPO(ハイペリオンテンポ)」を紹介する。

6月下旬から一般販売を開始する、BROOKS(ブルックス)のレース&トレーニング兼用の厚底シューズ「Hyperion Tempo(ハイペリオンテンポ)」。トップアスリートからランニング初心者からまで幅広く使えるモデルだ
新素材を採用した意欲作
今やマラソン用シューズと言えば「厚底」という時代だが、これまで厚底のシューズがレースで使用されてこなかったのは、ソールを厚くするとそれだけ重くなるからだ。しかし、テクノロジーの進歩によって「厚底でも軽いシューズ」が作れるようになり、マラソン界は転換期を迎えている。
米国大手のBROOKS(ブルックス)はトップアスリートのレース用厚底モデルとして「HYPERION ELITE(ハイペリオンエリート)」を2月末に発売。同時に、そのトレーニング用モデルとして「HYPERION TEMPO(ハイペリオンテンポ)」も一部の店舗で限定発売した。6月下旬からはハイペリオンテンポの一般販売を予定しており、公式オンラインストアや全国のスポーツショップでも購入できるようになる。
「テンポ」が「エリート」と違うのは、高反発の象徴とも言えるカーボンプレートを搭載していないことだ。このため、「テンポ」はレース&トレーニング兼用モデルとなる。「エリート」は重さが約196g(27.0cmの場合)で27000円(税別)なのに対し、同じサイズの「テンポ」は約207gで19800円。素材やアッパーなどの違いはあるものの、重量としてはほとんど同じだ。
そんな「テンポ」独自の特徴はミッドソールの新素材「DNA FLASH」を採用していること。「エリート」に使われている「DNA ZERO」も軽量で高反発な新素材だが、DNA FLASHはそこに柔らかさが加わり、走行時は接地の際にやや「モチッ」とした感触が味わえる。
トラックよりはロード向き
厚底のレーシングシューズは母趾球からつま先に向かってソールが傾斜し、重心移動を楽にする構造であることが多い。その点、ハイペリオンテンポの接地感は比較的フラット。8mmあるはずのドロップ(つま先と踵の高低差)も、実際に走るとあまり感じない。構造的な恩恵は最小限にとどめられている。

ソールの構造はフラットに近く、自分でスピードをコントロールしやすい。プロ中距離チーム「阿見AC SHARKS」の選手たちもトレーニングでこのハイペリオンテンポを愛用しているという
その点、フォアフット(前足着地)かヒールストライク(踵着地)かという接地のスタイルはどちらでも問題ないだろう。前回紹介したブルックスの「Ghost(ゴースト)12」はつま先が反り上がって重心移動を促す構造だったが、ハイペリオンテンポは「靴に走らされる」というシューズではなく、使い手に主導権が残される。「柔らかいのに軽い」という厚底レーシングモデルの基本を押さえながら、従来の薄底モデルの進化版と言えるようなクセのない性能に仕上がっている。
クッションと反発性はロードでの使用を前提に調整されており、そのバランスは絶妙だ。厚底によるクッション性を確保しながらも、足裏が地面の接地感を失わない程度に調整されている。
一方で、トラックを走る時はソールのモチモチ感が強調されてしまい、反発がやや物足りなく感じる面もある。薄底のレーシングシューズに比べると、200mなど短い距離をダッシュするには柔らかく、全力を出したつもりでもどこかに余力が残ってしまうような感覚を覚えた。
もっとも、そのぶん脚へのダメージは少ないので、故障のリスクを下げつつ走力を磨きたいアスリートがポイント練習用として選択すると、最も靴の良さを引き出せるだろう。ペース走やロングインターバルなど、ある程度速いスピードで走り続ける練習こそがシューズの性能とマッチしそうだ。実際に履いてみても「もう少し速く走れるけど、このくらいを維持したい」という力感だと快適に走り続けられる感覚がある。
ハイペリオンエリートという上位モデルが存在するためにトレーニング用という印象が強くなりがちだが、このハイペリオンテンポもロードでのレース用シューズとしては十分な性能を持っている。クッション性があるため、1kmを平均3分台前半で走る上級者はもちろんのこと、初心者や中級者でもレース用モデルとして幅広く使用できるだろう。

アッパーは足幅がタイトだが、走っているうちにメッシュが伸びて気にならなくなる。筆者は「ゴースト12」だと25.5cmを履いているが、「ハイペリオンテンポ」は長さがあるため25.0cmのほうがジャストサイズ
◎文/山本慎一郎
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6月下旬から一般販売を開始する、BROOKS(ブルックス)のレース&トレーニング兼用の厚底シューズ「Hyperion Tempo(ハイペリオンテンポ)」。トップアスリートからランニング初心者からまで幅広く使えるモデルだ
新素材を採用した意欲作
今やマラソン用シューズと言えば「厚底」という時代だが、これまで厚底のシューズがレースで使用されてこなかったのは、ソールを厚くするとそれだけ重くなるからだ。しかし、テクノロジーの進歩によって「厚底でも軽いシューズ」が作れるようになり、マラソン界は転換期を迎えている。 米国大手のBROOKS(ブルックス)はトップアスリートのレース用厚底モデルとして「HYPERION ELITE(ハイペリオンエリート)」を2月末に発売。同時に、そのトレーニング用モデルとして「HYPERION TEMPO(ハイペリオンテンポ)」も一部の店舗で限定発売した。6月下旬からはハイペリオンテンポの一般販売を予定しており、公式オンラインストアや全国のスポーツショップでも購入できるようになる。 「テンポ」が「エリート」と違うのは、高反発の象徴とも言えるカーボンプレートを搭載していないことだ。このため、「テンポ」はレース&トレーニング兼用モデルとなる。「エリート」は重さが約196g(27.0cmの場合)で27000円(税別)なのに対し、同じサイズの「テンポ」は約207gで19800円。素材やアッパーなどの違いはあるものの、重量としてはほとんど同じだ。 そんな「テンポ」独自の特徴はミッドソールの新素材「DNA FLASH」を採用していること。「エリート」に使われている「DNA ZERO」も軽量で高反発な新素材だが、DNA FLASHはそこに柔らかさが加わり、走行時は接地の際にやや「モチッ」とした感触が味わえる。トラックよりはロード向き
厚底のレーシングシューズは母趾球からつま先に向かってソールが傾斜し、重心移動を楽にする構造であることが多い。その点、ハイペリオンテンポの接地感は比較的フラット。8mmあるはずのドロップ(つま先と踵の高低差)も、実際に走るとあまり感じない。構造的な恩恵は最小限にとどめられている。
ソールの構造はフラットに近く、自分でスピードをコントロールしやすい。プロ中距離チーム「阿見AC SHARKS」の選手たちもトレーニングでこのハイペリオンテンポを愛用しているという
その点、フォアフット(前足着地)かヒールストライク(踵着地)かという接地のスタイルはどちらでも問題ないだろう。前回紹介したブルックスの「Ghost(ゴースト)12」はつま先が反り上がって重心移動を促す構造だったが、ハイペリオンテンポは「靴に走らされる」というシューズではなく、使い手に主導権が残される。「柔らかいのに軽い」という厚底レーシングモデルの基本を押さえながら、従来の薄底モデルの進化版と言えるようなクセのない性能に仕上がっている。
クッションと反発性はロードでの使用を前提に調整されており、そのバランスは絶妙だ。厚底によるクッション性を確保しながらも、足裏が地面の接地感を失わない程度に調整されている。
一方で、トラックを走る時はソールのモチモチ感が強調されてしまい、反発がやや物足りなく感じる面もある。薄底のレーシングシューズに比べると、200mなど短い距離をダッシュするには柔らかく、全力を出したつもりでもどこかに余力が残ってしまうような感覚を覚えた。
もっとも、そのぶん脚へのダメージは少ないので、故障のリスクを下げつつ走力を磨きたいアスリートがポイント練習用として選択すると、最も靴の良さを引き出せるだろう。ペース走やロングインターバルなど、ある程度速いスピードで走り続ける練習こそがシューズの性能とマッチしそうだ。実際に履いてみても「もう少し速く走れるけど、このくらいを維持したい」という力感だと快適に走り続けられる感覚がある。
ハイペリオンエリートという上位モデルが存在するためにトレーニング用という印象が強くなりがちだが、このハイペリオンテンポもロードでのレース用シューズとしては十分な性能を持っている。クッション性があるため、1kmを平均3分台前半で走る上級者はもちろんのこと、初心者や中級者でもレース用モデルとして幅広く使用できるだろう。
アッパーは足幅がタイトだが、走っているうちにメッシュが伸びて気にならなくなる。筆者は「ゴースト12」だと25.5cmを履いているが、「ハイペリオンテンポ」は長さがあるため25.0cmのほうがジャストサイズ
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