2022.12.26
チームとして結果を出すことが一番
伊藤は今季、5月のゴールデンゲームズinのべおか5000mで13分35秒70をマークして高校時代の自己ベストを2年ぶりに更新。しかし、続く関東インカレ(1部)では5000m16位と満足できる結果ではなかった。
6月に花田勝彦新監督が就任してからは、今までの練習が見直され、より基本に立ち返った練習に。夏合宿も箱根予選会を見据えて距離を意識した練習が増えた。すべての練習をしっかりとこなすことができ、長い距離への不安はなくなってきたが、疲労も溜まって合宿後は少し調子を落としてしまった。
調子が上がりきっていない自覚がありながらも、予選会ではチーム内4位、全体39位の1時間3分49秒。2週間後の全日本大学駅伝では長距離区間の7区を担当し、区間5位と好走した。
「正直、昨年度は暗闇の中を試行錯誤していたという感じだったんですが、2年目でやっと道筋が見えてきた感じがします」。競技でも勉強でも、自分をマネジメントする力が身についてきたと実感を語る。

10000m27分台のベストを持つエースの井川龍人(4年、右)と
まもなく2回目の箱根駅伝を迎えるが、「チームのためならどこでも走る」という気持ちは変わらない。伊藤にとって箱根駅伝とは?
「注目度が高い駅伝だと思っています。正直それ以上でもそれ以下でもないですね」と言いつつも「チームとしては一番結果を残さなければいけない大会だと思っています。そこはもう『結果を出しに行くぞ』という気持ちで臨みたいと思います」
将来的には世界陸上やオリンピックを目指したいという伊藤。そのためにはまず、学生というカテゴリーの中で上位に食い込まないといけない。駒大の田澤廉(4年)、中大の吉居大和(3年)、順大の三浦龍司(3年)のような「学生陸上といえば」と名前を挙げてもらえる選手にならないといけないと考えている。
「やっぱりそのためには結果はもちろんですが、結果以上の強さを感じさせる選手にならないといけないと思います。『必ずやってくれる』『あいつなら大丈夫でしょ』という、インパクトのある選手になりたいです」
「伊藤ならやってくれる」という選手になるために――。2度目の箱根路で結果以上の強さをアピールするつもりだ。
いとう・たいし/2003年2月2日生まれ。長野県駒ヶ根出身。171cm・51kg。長野・赤穂中→佐久長聖高。5000m13分35秒70、10000m29分42秒24、ハーフ1時間3分37秒
文/藤井みさ
「なんとなく」始めた陸上で才能が開花
長野県出身の伊藤と陸上との出合いは小学校2年生の時。漠然と「何か習い事をしたい」と考えたが、本人いわく「運動神経が悪かった」という。 「球技はダメ、水泳はダメ、勉強は絶対にしたくない。手先が器用なわけではないし、音楽的センスもない。というわけでたどり着いたのが陸上。消去法なんですよね」と伊藤。はじめは短距離、5年生ぐらいからは長距離にも取り組んだ。 他にやりたいことは見つからず、何となく続けていた陸上だったが、中学1年のうちに県内で上位に入れるようになり、2年では都道府県対抗駅伝の候補選手に選ばれ、3年では全中の3000mで5位、ジュニアオリンピックA3000mでは2位に入った。 結果が出るとおもしろい、「もっと上に」という気持ちが出てきた。 長距離の道で高校に行くなら、県内では「やはり佐久長聖」という気持ちがあった。駅伝部の高見澤勝先生からは、「うちは厳しいから、その覚悟がある人だけ入ってきなさい」とも言われたが、厳しさへの不安より、「どこまでできるか試してみたい」というチャレンジの気持ちのほうが大きかった。 親元を離れての寮生活。「想像通り厳しかったです」と言うが、それがきつくてやめたいと思ったことは一度もなかった。「良くも悪くも楽観主義なんですよね」と伊藤は笑う。家では味わえない寮生活の刺激や、きつい中でも楽しみを見つけて、充実した3年間だったと振り返る。 競技面では高校2年時に国体少年A5000mで3位、高3時には全国高校駅伝1区で5位の成績を残し、5000mでも13分36秒57の高校歴代2位(現5位)をマーク。同世代トップクラスの実力者となった。 競技面での成長はもちろんだが、高校時代に最も学んだのは人間性の部分だ。生活面から厳しく指導され、才能があっても人間性の面で成長できず、結果が出なかった選手のことも見てきた。 高見澤先生からは「俺たちは料理の材料を提供するだけで、どういう味付けや調理方法にするかは自分で決めるんだ」とも言われていた。練習メニューは提示されるが、取り組む量には幅を持たせられていることも多く、考えてどう競技につなげていくかは自分次第。高校時代からこの考え方を身につけられたことが、「今も役に立っているし、これからも生きてくると思います」と話す。 次のページ 自分が5区を走るのが最適なら、5区を自分が5区を走るのが最適なら、5区を
早稲田を選んだのは、自主性を重んじるチームでのびのびとやりたいということが一番。あとはセカンドキャリアを考えた時に、アスレティックトレーナーの資格を取りたいと考えたことも理由の一つとなった。入部してみると個性の強いメンバーが多く、自分で考えて練習をしている先輩がほとんど。「そういうところが早稲田の強さにつながっているなと感じました」。 高校時代から実績のあった伊藤は、10月の出雲駅伝でさっそくの大学駅伝デビュー。この時は5区で区間12位、続く全日本大学駅伝では1区区間7位だった。もともと「緊張しがち」と言う伊藤だが、この2大会は特に緊張したという。 そして初となる箱根駅伝では、山上りの5区を担当。「上りの適性という意味では僕より上の人はいたんです。昨年のチームの中である程度走れて、なおかつみんなより上りが苦手じゃないから行くよ、というスタンスでした」。 自分が5区を担当することができたら、他の選手を平地に回すことができる。そうした割り切った考えで山上りに挑んだ。ただ走る前は「今からここを走るのか」という不安はあった。この時は区間11位。走り終わった後は今までで初めて、倒れ込んでフィニッシュしたことに自分でも驚いた。その後もダメージが大きく、1週間ぐらいは走れなかったという。 [caption id="attachment_89608" align="alignnone" width="800"]
前回は1年生ながら山上りの5区を担当。区間11位という成績だった[/caption]
それでも伊藤は「箱根駅伝に限らず、どこを走りたい、逆にどこを走りたくないという区間へのこだわりは本当にないんです。僕が駅伝で一番重要視しているのは、チームの結果。『チームのためにここを走りなさい』と言われたらそこに行きます」と自らの駅伝に対するスタンスを口にする。
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チームとして結果を出すことが一番
伊藤は今季、5月のゴールデンゲームズinのべおか5000mで13分35秒70をマークして高校時代の自己ベストを2年ぶりに更新。しかし、続く関東インカレ(1部)では5000m16位と満足できる結果ではなかった。 6月に花田勝彦新監督が就任してからは、今までの練習が見直され、より基本に立ち返った練習に。夏合宿も箱根予選会を見据えて距離を意識した練習が増えた。すべての練習をしっかりとこなすことができ、長い距離への不安はなくなってきたが、疲労も溜まって合宿後は少し調子を落としてしまった。 調子が上がりきっていない自覚がありながらも、予選会ではチーム内4位、全体39位の1時間3分49秒。2週間後の全日本大学駅伝では長距離区間の7区を担当し、区間5位と好走した。 「正直、昨年度は暗闇の中を試行錯誤していたという感じだったんですが、2年目でやっと道筋が見えてきた感じがします」。競技でも勉強でも、自分をマネジメントする力が身についてきたと実感を語る。 [caption id="attachment_89607" align="alignnone" width="800"]
10000m27分台のベストを持つエースの井川龍人(4年、右)と[/caption]
まもなく2回目の箱根駅伝を迎えるが、「チームのためならどこでも走る」という気持ちは変わらない。伊藤にとって箱根駅伝とは?
「注目度が高い駅伝だと思っています。正直それ以上でもそれ以下でもないですね」と言いつつも「チームとしては一番結果を残さなければいけない大会だと思っています。そこはもう『結果を出しに行くぞ』という気持ちで臨みたいと思います」
将来的には世界陸上やオリンピックを目指したいという伊藤。そのためにはまず、学生というカテゴリーの中で上位に食い込まないといけない。駒大の田澤廉(4年)、中大の吉居大和(3年)、順大の三浦龍司(3年)のような「学生陸上といえば」と名前を挙げてもらえる選手にならないといけないと考えている。
「やっぱりそのためには結果はもちろんですが、結果以上の強さを感じさせる選手にならないといけないと思います。『必ずやってくれる』『あいつなら大丈夫でしょ』という、インパクトのある選手になりたいです」
「伊藤ならやってくれる」という選手になるために――。2度目の箱根路で結果以上の強さをアピールするつもりだ。
いとう・たいし/2003年2月2日生まれ。長野県駒ヶ根出身。171cm・51kg。長野・赤穂中→佐久長聖高。5000m13分35秒70、10000m29分42秒24、ハーフ1時間3分37秒
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