2026.04.27
ついに、その時が訪れた。
4月26日に英国で開催されたロンドンマラソンで、セバスチャン・サウェ(ケニア)が1時間59分30秒でフィニッシュし、公認レースでは人類初となる“マラソン2時間切り”の偉業を達成した。
今回のロンドンには、前回優勝のサウェだけでなく、トラックの5000mと10000mで世界記録を持つジョシュア・チェプテゲイ(ウガンダ)、3月にハーフマラソンで世界記録を出したばかりのジェイコブ・キプリモ(ウガンダ)、パリ五輪金メダリストのタミラト・トーラ(エチオピア)など、現役最強クラスのランナーが顔をそろえていた。
ただ、大会前から2時間切りへの期待が高かったわけではない。出場選手の持ちタイムでは最速のサウェでも2時間2分05秒で、キプリモも2時間2分台が自己ベスト。高速化が進むマラソンにおいて、2分以上の自己記録更新は容易ではなく、大会前の会見でもサウェ自身が「2時間1分25秒の大会記録を超えられれば」と語るにとどまっていた。
レース当日は快晴で、気温11度と絶好のコンディション。中間点を1時間0分29秒で通過。23年にケルヴィン・キプトゥム(ケニア)が世界記録(2時間0分35秒)を樹立した際の通過タイムより19秒速かった。ただ、キプトゥムは後半のハーフを59分47秒と急激にペースアップしていたほか、主催者が発表するフィニッシュ予測タイムも30km地点までは2時間1分台を示しており、1時間台が狙えるという雰囲気ではなかった。
流れが変わったのは30km過ぎだった。ペースメーカーが外れると、サウェが初マラソンのヨミフ・ケジェルチャ(エチオピア)を引き連れてペースアップ。5kmごとのラップを13分台に引き上げ、一気に快挙へと突き進んだ。最後の2.195kmは5分51秒と、1km換算で2分40秒ペースという驚異的なスピードに到達。後半のハーフは59分01秒と、日本記録(59分27秒)をも上回るラップで駆け抜けていた。
フィニッシュ後も笑顔で、「今日は忘れらない日になる。私にとって、不可能なことは何もないということを証明できた。本当に嬉しい」とインタビューに答えたサウェ。海外メディアからは「人類の月面着陸に匹敵する歴史的快挙」と称える声が相次いだ。
今回のレースについて、サウェを指導するクラウディオ・ベラルデリ・コーチは、「昨年のベルリンでも記録を狙ったが、高温のため達成できなかった。今日は何か特別なことが起きるかもしれないと思っていた」と振り返る。
2時間切り達成の要因として、進化したシューズや科学的な栄養補給を挙げつつ、「これらによって練習の量と強度を高められたことが大きい」と分析する。
さらにサウェについては、「身体能力の高さはもちろんだが、それ以上に競技に向き合う姿勢や謙虚な人柄がマラソンに適している」と評価。過去3度のマラソンも2時間2分台を記録している安定感にも触れ、「より高速コースとされるベルリンやシカゴ、バレンシアであれば、1時間59分を切ることも可能だろう」と、さらなる記録更新への期待を示した。
また、サウェと40km過ぎまで競り合ったケジェルチャも1時間59分41秒でフィニッシュ。敗れはしたものの、かつて1マイルで世界記録を樹立し、3000mからハーフマラソンまで活躍してきたマルチランナーが、フルマラソンでも結果を残した。3位のキプリモも従来の世界記録を上回る2時間0分28秒をマーク。10000mで26分台、ハーフで57分台の自己ベストを持つ2人がマラソンでも歴史的なタイムを叩き出し、サウェとともに新時代の到来を強く印象づけるレースとなった。
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