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2022.12.23

箱根駅伝Stories/順大の頼れるキャプテン西澤侑真「復路のキーマン」として16年ぶり頂点へ
箱根駅伝Stories/順大の頼れるキャプテン西澤侑真「復路のキーマン」として16年ぶり頂点へ

順大を牽引する駅伝主将の西澤侑真

同期と思い描いてきた学生三大駅伝優勝

同期には今年の関東インカレ1部10000m覇者の伊豫田達弥や、ロード力抜群の四釜峻佑ら実力者がそろう。

1年目に箱根駅伝を経験したのは西澤だけだったが、翌年には伊豫田、野村優作も出場。そして15年ぶりのトップ3入りとなる準優勝を飾った前回は、四釜、平駿介も加わって、10区間中5人を占める学年となった。

「この学年は個性もあって、意識が高いメンバーがそろっていて、お互いに成長することができました。1年の頃から駅伝で勝ちたいというのはずっと話してきて、そこに近づけるようにやってこれたと思います」

さらに1学年下には、3000m障害の日本記録保持者で東京五輪7位の三浦龍司や1年時から学生駅伝フル出場中の石井一希もいる。上記7人を中心に今季は「学生駅伝3冠」を目標に取り組んできた。

順大の中軸を担う3、4年生7人(中央が西澤)

自身は体幹強化に着手。「今までは疲れてくると腰が落ちてしまったので、そこの克服を意識してきました」と西澤は言う。その成果もあり、今季はレース終盤で大きく崩れることが少なくなり、周囲からも「身体のブレがなくなったと言われるようになりました」と手応えをつかんでいた。

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だが出雲では、5区で強い向かい風にリズムを作れず区間7位と失速。チームも5位に終わった。

「自分が一番足を引っ張ってしまいました。9月にシドニーハーフマラソン(1時間6分15秒)で優勝した後に少し体調を崩していまい、当日は向かい風にも負けてしまいました」

その反省から、出雲後は悪条件にも負けないため、取り組んできた体幹強化をより重点的に行った。三大駅伝初戦で「3冠」の夢が潰え、「このままではまずい」と主将として意識だけでなく、行動でチームを変えようと動いた。

続く全日本でもチームは4位にとどまったが、西澤自身は6区で区間2位ながら従来の区間記録を上回る快走で5位から2位まで押し上げる走りを見せた。

出雲、全日本と連勝した駒大や、箱根では絶対的な強さを見せる青学大との差を感じつつも、「まだ状態は上がり切っていないですけど、出雲、全日本と戦って、チームの雰囲気は少しずつ良くなっています」と手応えを感じている。

次のページ 復路の勝負区間で準備

箱根駅伝Stories 新春の風物詩・箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。12月19日から区間エントリーが発表される29日まで、全校の特集記事を掲載していく。 順大の4年生世代は3年時からチームの中軸を担う5人の選手がいる。西澤侑真、伊豫田達弥、野村優作、四釜峻佑、平駿介。長門俊介駅伝監督から「令和のカルテット」と称されるほど信頼を寄せられている。なかでも1年時から箱根路で好走し続けているのが駅伝主将の西澤だ。4年目の箱根路、キャプテンとしてどんな走りを見せるのか。

箱根ランナーの兄を追って順大へ

今季の順大を牽引する力のある4年生世代。そこで最初に頭角を現したのが西澤侑真だった。1年生でただ一人箱根出走を果たし、8区区間9位と健闘した。 その後も箱根では2年時に8区区間10位、そして前回は7区区間7位と、復路で堅実な走りを見せてきた。 だが、本人は「これまでの3年間は期待してもらっている走りができていない」と感じている。 陸上を始めたのは静岡県・冨塚中から。中学3年時には全中3000mにも出場している。 箱根を意識したのはその頃から。6つ年上の兄・卓弥が順大で走る姿を見て、「同じ舞台に立ちたい」という気持ちは強くなっていった。 「箱根駅伝自体は小さい頃から祖父の実家で見ていました。本格的に走りたいなと思うようになったのは、兄が箱根を走った時に、実際に現地まで観戦に行った時です。大観衆の中で走る姿は『カッコいいな』と素直に感じて、自分も走りたいなと思うようになりました」 その後、静岡県の強豪校・浜松日体高を経て、兄と同じ順大のユニフォームを着ることに。「箱根は4年間全部走ってやるという気持ちでしたし、自分がチームを引っ張っていこうという気持ちもありました」と当時を振り返る。 次のページ 同期と思い描いてきた学生三大駅伝優勝

同期と思い描いてきた学生三大駅伝優勝

同期には今年の関東インカレ1部10000m覇者の伊豫田達弥や、ロード力抜群の四釜峻佑ら実力者がそろう。 1年目に箱根駅伝を経験したのは西澤だけだったが、翌年には伊豫田、野村優作も出場。そして15年ぶりのトップ3入りとなる準優勝を飾った前回は、四釜、平駿介も加わって、10区間中5人を占める学年となった。 「この学年は個性もあって、意識が高いメンバーがそろっていて、お互いに成長することができました。1年の頃から駅伝で勝ちたいというのはずっと話してきて、そこに近づけるようにやってこれたと思います」 さらに1学年下には、3000m障害の日本記録保持者で東京五輪7位の三浦龍司や1年時から学生駅伝フル出場中の石井一希もいる。上記7人を中心に今季は「学生駅伝3冠」を目標に取り組んできた。 [caption id="attachment_89478" align="alignnone" width="800"] 順大の中軸を担う3、4年生7人(中央が西澤)[/caption] 自身は体幹強化に着手。「今までは疲れてくると腰が落ちてしまったので、そこの克服を意識してきました」と西澤は言う。その成果もあり、今季はレース終盤で大きく崩れることが少なくなり、周囲からも「身体のブレがなくなったと言われるようになりました」と手応えをつかんでいた。 だが出雲では、5区で強い向かい風にリズムを作れず区間7位と失速。チームも5位に終わった。 「自分が一番足を引っ張ってしまいました。9月にシドニーハーフマラソン(1時間6分15秒)で優勝した後に少し体調を崩していまい、当日は向かい風にも負けてしまいました」 その反省から、出雲後は悪条件にも負けないため、取り組んできた体幹強化をより重点的に行った。三大駅伝初戦で「3冠」の夢が潰え、「このままではまずい」と主将として意識だけでなく、行動でチームを変えようと動いた。 続く全日本でもチームは4位にとどまったが、西澤自身は6区で区間2位ながら従来の区間記録を上回る快走で5位から2位まで押し上げる走りを見せた。 出雲、全日本と連勝した駒大や、箱根では絶対的な強さを見せる青学大との差を感じつつも、「まだ状態は上がり切っていないですけど、出雲、全日本と戦って、チームの雰囲気は少しずつ良くなっています」と手応えを感じている。 次のページ 復路の勝負区間で準備

復路の勝負区間で準備

残されたチャンスは箱根だけとなった。ここまでは思うようなレースはできていないが、「大砲のようなタイムを稼げる選手はいないですが、誰かが走れば『自分も』と活気づいてくるチームです。自分たちの足元をしっかり見て、1区間ずつ確実に走りたい」と意気込む。 チームには前回準優勝時のメンバーが7人、往路に関しては力のある選手が全員残り、大きくオーダーを変えてくることはないだろう。一方の復路は、前回往路を5位で終えた長門監督が、復路の勝負ポイントを早めと読み、予定していた9区から急遽7区に西澤を起用するなど、復路におけるその信頼度は高まっている。 そして今回、その重要度がさらに増すことを西澤自身もしっかり理解している。 「自分が起用されるのは、おそらく復路の勝負区間だと思います。できればフィニッシュテープを切りたいですけど、どこでも任された役割を果たすだけ。自分の区間まで勝負できる位置で来てくれればと思っています」 入学時から思い描いてきた「主将としてチームを引っ張り、箱根で優勝すること」。 夢を実現する大一番が迫っている。 [caption id="attachment_89477" align="alignnone" width="800"] 2022年全日本大学駅伝では6区区間新(区間2位)と好走[/caption] にしざわ・ゆうま/2000年9月19日生まれ。静岡県浜松市出身。175cm・56kg。静岡・富塚中→浜松日体高。5000m14分08秒26、10000m28分45秒39、ハーフ1時間2分35秒 文/田中 葵

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