HOME 国内

2022.09.29

桐生祥秀が陸上教室などの活動再開を発表!大学2年から「潰瘍性大腸炎」発症も告白
桐生祥秀が陸上教室などの活動再開を発表!大学2年から「潰瘍性大腸炎」発症も告白

桐生祥秀(2022年日本選手権)

男子短距離の桐生祥秀(日本生命)が自身の動画サイトを更新し、陸上教室などの活動を再開することを発表した。また、今季はレースに出場しないことを改めて語った。

動画内では、休養した経緯にも言及。「これまで1週間、陸上のことを考えないということはなかった」という桐生にとって、6位にとどまった日本選手権後から約3ヵ月もの間陸上から離れた時間は、「僕にとってはものすごく長かった」と言う。

そのうえで、休むことを決断した主な理由として、2017年に日本人初の9秒台(9秒98)を出すまで「9秒台を誰が一番最初に出すか」というプレッシャーがかかり続けていたこと、そして「病気」を挙げた。

京都・洛南高3年の春に10秒01を出すまでは「陸上が楽しい」と感じていたが、その後は常に「9秒台を」求められる立場に。「10秒1台、10秒0台でため息が聞こえる」というスタジアムの雰囲気も含めて、「きつかった」と振り返る。

合わせて、大学2年時に「潰瘍性大腸炎(※)」を患ったことも明かした。当時、医師からは症状が出る一番の原因はストレスと言われたそうだが、前述の通り常に重圧にさらされる環境下にあり、「陸上をやっている中でストレスがないことはんて100%ない。俺の陸上人生、もう終わるのかな」とも思ったという。

当初は軽度の症状だったが、リオ五輪イヤーの2016年に悪化。血便はもちろんのこと、食事をしても身体に吸収できない状況に陥った。日本選手権100mで3位を確保し、初の五輪代表の座をつかむことはできたが、五輪本番が「今までで一番ひどかった」。100mが予選落ちしたことでSNS上で誹謗中傷を受け、さらにストレスがかかったそうだが、4×100mリレーで銀メダルを獲得できたことで「救われた。久々に自分の陸上を称賛してもらえた」という。

広告の下にコンテンツが続きます

「自分人生を変えてくれた出来事。あれを期に、(症状が)ましになっていったのかもしれない」

症状が収まってきたことで記録も安定し始め、2017年に9秒台を樹立するなどの成果を残した桐生。ただ、病気への対処法の1つとして陸上へのストレスをかけ過ぎないことを続けていたら、「陸上にのめり込めない」状況になっていたことに気がついた。

「試合に出ても『このぐらいの結果ならいいか』『代表に入れればノルマ達成かな』という考え方になっていた。それって上を目指す人の考え方じゃない」

心の中で「これじゃダメだ」とわかっていても、止められなかった。今年の日本選手権。自分が「陸上に興味がなくなっている」ことを真っ向から受け止め、休養を決断した。

休養期間中は、いろいろな人と話したという。「リオの(4継)メンバーと『こういうことで悩んでる』ということを初めて相談したし、いろんな人に相談した。そういうことをしたのは初めてだったけど、良かったと思っています」。

まだ、今後どうしていくかの結論は出ていない。練習の準備は始めているが、東京五輪のようにどの試合を目指していくかという具体的なものは「決まっていない」。

だが、1つの目標はある。それは、「山縣さん(亮太/セイコー)の日本記録9秒95を超える」ことだ。

「楽しい陸上って何なのかを探しながらやっていきたい。陸上ってタイムを出すこともすごく楽しい。追い風に恵まれたレースでも、記録会でも何でもいいから、あの人の記録を超えたい」

その思いは、まだ「ちょっとずつ出てきた」というレベル。「レースには来シーズンのどこかにはたぶん出ると思う」と話したが、それも心身が整えばということになるだろう。

それでも、長く抱えていた悩みを公表するという心境に至り、次への一歩を踏み出せるところまでたどりついたということは間違いない。

「待っていてください!」と締めくくった桐生祥秀が踏み出す新しい一歩を、楽しみに待ちたい。

※厚生労働省が指定する難病の1つ。大腸の粘膜に炎症が起きることによる原因不明の慢性の病気。主な症状は下痢や血便、腹痛、発熱、貧血など

男子短距離の桐生祥秀(日本生命)が自身の動画サイトを更新し、陸上教室などの活動を再開することを発表した。また、今季はレースに出場しないことを改めて語った。 動画内では、休養した経緯にも言及。「これまで1週間、陸上のことを考えないということはなかった」という桐生にとって、6位にとどまった日本選手権後から約3ヵ月もの間陸上から離れた時間は、「僕にとってはものすごく長かった」と言う。 そのうえで、休むことを決断した主な理由として、2017年に日本人初の9秒台(9秒98)を出すまで「9秒台を誰が一番最初に出すか」というプレッシャーがかかり続けていたこと、そして「病気」を挙げた。 京都・洛南高3年の春に10秒01を出すまでは「陸上が楽しい」と感じていたが、その後は常に「9秒台を」求められる立場に。「10秒1台、10秒0台でため息が聞こえる」というスタジアムの雰囲気も含めて、「きつかった」と振り返る。 合わせて、大学2年時に「潰瘍性大腸炎(※)」を患ったことも明かした。当時、医師からは症状が出る一番の原因はストレスと言われたそうだが、前述の通り常に重圧にさらされる環境下にあり、「陸上をやっている中でストレスがないことはんて100%ない。俺の陸上人生、もう終わるのかな」とも思ったという。 当初は軽度の症状だったが、リオ五輪イヤーの2016年に悪化。血便はもちろんのこと、食事をしても身体に吸収できない状況に陥った。日本選手権100mで3位を確保し、初の五輪代表の座をつかむことはできたが、五輪本番が「今までで一番ひどかった」。100mが予選落ちしたことでSNS上で誹謗中傷を受け、さらにストレスがかかったそうだが、4×100mリレーで銀メダルを獲得できたことで「救われた。久々に自分の陸上を称賛してもらえた」という。 「自分人生を変えてくれた出来事。あれを期に、(症状が)ましになっていったのかもしれない」 症状が収まってきたことで記録も安定し始め、2017年に9秒台を樹立するなどの成果を残した桐生。ただ、病気への対処法の1つとして陸上へのストレスをかけ過ぎないことを続けていたら、「陸上にのめり込めない」状況になっていたことに気がついた。 「試合に出ても『このぐらいの結果ならいいか』『代表に入れればノルマ達成かな』という考え方になっていた。それって上を目指す人の考え方じゃない」 心の中で「これじゃダメだ」とわかっていても、止められなかった。今年の日本選手権。自分が「陸上に興味がなくなっている」ことを真っ向から受け止め、休養を決断した。 休養期間中は、いろいろな人と話したという。「リオの(4継)メンバーと『こういうことで悩んでる』ということを初めて相談したし、いろんな人に相談した。そういうことをしたのは初めてだったけど、良かったと思っています」。 まだ、今後どうしていくかの結論は出ていない。練習の準備は始めているが、東京五輪のようにどの試合を目指していくかという具体的なものは「決まっていない」。 だが、1つの目標はある。それは、「山縣さん(亮太/セイコー)の日本記録9秒95を超える」ことだ。 「楽しい陸上って何なのかを探しながらやっていきたい。陸上ってタイムを出すこともすごく楽しい。追い風に恵まれたレースでも、記録会でも何でもいいから、あの人の記録を超えたい」 その思いは、まだ「ちょっとずつ出てきた」というレベル。「レースには来シーズンのどこかにはたぶん出ると思う」と話したが、それも心身が整えばということになるだろう。 それでも、長く抱えていた悩みを公表するという心境に至り、次への一歩を踏み出せるところまでたどりついたということは間違いない。 「待っていてください!」と締めくくった桐生祥秀が踏み出す新しい一歩を、楽しみに待ちたい。 ※厚生労働省が指定する難病の1つ。大腸の粘膜に炎症が起きることによる原因不明の慢性の病気。主な症状は下痢や血便、腹痛、発熱、貧血など

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.04.30

水戸招待のエントリー発表! 棒高跳に柄澤智哉、山本聖途、諸田実咲ら男女トップ集結 戸邉直人、城山正太郎も出場予定

5月5日に行われる日本グランプリシリーズ第7戦「2025水戸招待陸上」のエントリー選手が発表された。男子棒高跳には東京五輪代表の山本聖途(トヨタ自動車)、江島雅紀(富士通)や世界選手権代表経験のある柄澤智哉(東京陸協)ら […]

NEWS 【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」

2025.04.30

【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」

山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]

NEWS 【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦

2025.04.30

【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦

FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]

NEWS 5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場

2025.04.30

5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場

5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]

NEWS 26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

2025.04.30

26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top