◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)10日目
オレゴン世界陸上10日目のイブニングセッションに行われた男子棒高跳決勝。アルマンド・デュプランティス(スウェーデン)が自身の世界記録を1cm上回る6m21を2回目にクリアし、大会の有終の美を飾った。
上位7人が5m87をクリアするハイレベルの中でも、デュプランティスが異次元の跳躍を見せ続ける。5m87を1回失敗した以外は、5m70、5m94、6m00をすべて1回で成功。ここ優勝を決めると、大会新の6m06すら軽々とクリアした。
3月の世界室内選手権で作った世界記録を1cm上回る6m21にバーを上げる。1回目は失敗。その間に大会最終種目としてプログラムされていた4×400mリレー決勝が行われ、地元・米国の男女優勝を飾った。スタンドの盛り上がりは最高潮に達する。
そして、デュプランティスが今大会最後の試技者となった。3月の世界室内でも同じシチュエーションとなり、見事に世界新を作って会場を熱狂の渦に巻き込んでいる。その再現なるか。
スタジアム中の視線を一身に浴び、助走をスタート。ポールを突っ込み、高々とオレゴンの空に舞い上がった身体は、バーの上に鮮やかに越えていった。
大歓声に包まれながら、デュプランティスはトラックで宙返りを見せるなど歓喜を爆発させた。これまで4度成し遂げてきた世界新ジャンプはいずれも室内。屋外で待望の世界記録樹立を、世界陸上という大舞台で成し遂げた。
スウェーデン国籍だが、生まれも育ちも米国で、ルイジアナ州立大出身。今も指導を受ける元棒高跳選手の父の手ほどきで3歳から跳び始めると、10歳から年齢別世界記録をことごとく塗り替え、「天才ボウルター」と呼ばれてきた。
17年ロンドン世界陸上では17歳ながら決勝に進み、入賞にあと一歩の9位。18年に史上最年少で6mをクリアすると、19年ドーハ世界陸上では19歳にして銀メダルを獲得した。20年2月の室内競技会で初めての世界新となる6m17に成功すると、1週間後には6m18とさらに記録を更新。昨年の東京五輪で金メダルに輝き、名実ともに「世界一」に君臨した。
長く世界記録保持者としてその名を刻み、世界陸上6連覇などのキャリアを誇ったセルゲイ・ブブカは「鳥人」と称された。その名を引き継ぐだけでなく、はるかに超える次元で飛び続けるデュプランティスはこの日、現陸上界「世界最高のアスリート」となった。
■男子棒高跳上位成績
1位 アルマンド・デュプランティス(スウェーデン) 6m21=世界新
2位 クリストファー・ニルセン(米国) 5m94
3位 アーネスト・ジョン・オビエナ(フィリピン) 5m94=アジア新
4位 チアゴ・ブラズ・ダ・シルヴァ(ブラジル) 5m87
5位 オレグ・ツェルニケル(ドイツ) 5m87
5位 ルノー・ラヴィレニ(フランス) 5m87
7位 ボカンダ・リタ・ベーレ(ドイツ) 5m87
8位 エルス・サスマ(トルコ) 5m80
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