2021.11.27
学生長距離Close-upインタビュー
石田洸介Ishida Kosuke 東洋大学1年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。13回目は、10月の出雲駅伝(4区)、11月の全日本大学駅伝(4区)といきなり連続区間賞に輝いた東洋大の石田洸介(1年)に話を聞いた。
中学時代は1500m、3000m、5000mと各種目の歴代記録を更新し、高校では5000mで高校記録を樹立。東洋大でもその力をいかんなく発揮し、逸材は早くも世界に目を向けて進化を続けている。
各世代の記録を塗り替えてきたスーパールーキー
中学、高校で各種歴代記録を塗り替えてきたスーパールーキー・石田洸介(東洋大)のエンジンがかかってきた。今季は故障もあり、トラックシーズンは不発に終わったが、駅伝シーズンで存在感を発揮。出雲(5区)と全日本(4区)で連続区間賞の快走を見せているのだ。
福岡・浅川中時代に1500m3分49秒72、3000m8分17秒84の中学記録を樹立。群馬・東農大二高では5000mで13分34秒74の高校記録(当時)を打ち立て、10000mでも28分37秒50(当時・高校歴代7位)をマークしている。
そんな燦々と輝くキャリアを持つ逸材は、この春に東洋大に入学した。その理由について石田はこう説明する。
「中学・高校と指導者に恵まれてきたからこそ、それぞれ結果を残すことができたと思っています。東洋大に進学したのは、酒井俊幸監督の『世界大会の代表になれる選手を育成したい』という思いと、自分の目標が一致したことが大きいです。自分の夢を叶えられるのはここしかないと感じました」
設楽悠太(Honda)、服部勇馬(トヨタ自動車)、相澤晃(旭化成)らOBが世界大会の代表として活躍した姿は石田にとってまぶしく見えたことだろう。歴代のエースたちの背中を追いかけるべく東洋大に入学したが、前半戦は苦しんだ。トラックで好記録を連発した昨季のダメージもあり、冬に走りを崩したのが原因だった。
「昨年12月は左右の接地バランスが格段に悪く、脚に力が入らない状態でした。気持ちだけで何とかしようと思っていたんですけど、身体がついてこなくて……。結局、12月の都大路は惨敗でした」
全国高校駅伝は1区で区間14位。高校最後のレースを終えた後は、左足底付近を痛めてジョグすらできない状態になったという。
群馬・東農大二高時代は2年時と3年時(写真)に全国高校駅伝に出場。ともにエース区間の1区を走って区間8位、14位だった
大学入学後は徐々に走り始めて、6月末の日本選手権5000mに照準を定めた。しかし、レース前の合宿で右脚を痛めた影響もあり、3000mで途中棄権している。
しばらくは脚の痛みに悩まされたが、夏合宿の後半からAチームの合宿に参加。9月下旬には、「ようやく自分のイメージする走りと動きが合致してきて、少しずついい感覚で走れてきています」と話していた。それでも高校の一番良かった時を「100%」とすれば、この時は「50%くらい」だった。
「昨年の全国高校駅伝も50%くらいでしたけど、どんどん下がっていく中の50%でした。今は上向いている過程の50%。動きさえ良くなれば、戻ってくるんじゃないかなという感覚がありますね。今度、記録会で5000mに出場するので、13分台で走れればバッチリなんじゃないかなと思います」(9月取材時の石田)
独自の感覚を口にしていた石田だが、その言葉は現実のものになっていく。
駅伝でブレイクした秋シーズン
9月29日の早大競技会5000m。石田は13分59秒99(2組3着)で復活の狼煙を上げると、学生駅伝で輝きを放った。
10月10日の出雲駅伝は5区に出場。6位でタスキを受け取ると、帝京大、青学大、國學院大、早大をかわして2位に浮上した。4人抜きの快走は区間2位以下を20秒以上も引き離す圧倒的な区間賞だった。石田の活躍もあり、主軸の宮下隼人(4年)と松山和希(2年)を欠いたチームは3位に食い込んでいる。
11月7日の全日本大学駅伝は4区に登場。9位から8位に順位を押し上げると、青学大・高橋勇輝(4年)と同タイムながら連続区間賞を獲得。ただ、「自分の役割は前を追っていくこと」と考えて最初の1kmを2分47~48秒で入ったが、なかなかペースが上がり切らなかった。「前に追いつきそうで追いつけない、苦しい展開になりました。出雲から練習も積めていたので、区間賞でも自分としては素直に喜べない結果です」と反省を口にした。
ここまでの駅伝シーズンを振り返ると、出雲では強風の中を押し切る強さを見せ、全日本では5kmを14分14秒、10kmを28分53秒ほどで通過してスピード感のある走りを披露した。だが、石田はこれに満足していない。
「駅伝3連続区間賞に向けてリーチになりますが、まだ10kmちょっとしかスタミナは持ちません。箱根に向けてはまだまだだと思っています。それに世界に出たいと思って東洋大に入学したので、来年は日本選手権で勝負したい気持ちが強いです。全日本後は5000m、10000mでタイムを狙う練習が優先順位としては上かなと思っています」
とはいえ、日本人で生まれたからには箱根駅伝への憧れも抱いている。「箱根駅伝までの過程をトラックにつなげ、できれば往路区間を走りたいですね。最終的には箱根駅伝でも記憶に残る走りをして卒業したいです」と石田は青写真を描いている。
2024年夏、大学4年で迎えることになるパリ五輪でトラック種目の出場を本気で狙っている。鉄紺のエースたちの系譜を引き継ぎ、箱根路でも積極果敢の走りを見せてくれるだろう。
◎いしだ・こうすけ/2002年8月21日生まれ。福岡県出身。浅川中→群馬・東農大二高→東洋大。自己記録5000m13分34秒72、10000m28分37秒50。中学時代に1500m3分49秒72、3000m8分17秒84、5000m14分32秒44と次々と新記録を樹立した逸材。高校時代は苦しい時期を過ごしながらも、3年時に5000mの高校記録を2度塗り替えて存在感を示した。東洋大進学後は10月の出雲駅伝5区、全日本大学駅伝4区と連続で区間賞を獲得し、箱根駅伝でも鉄紺軍団の主軸として活躍が期待される。
文/酒井政人
各世代の記録を塗り替えてきたスーパールーキー
中学、高校で各種歴代記録を塗り替えてきたスーパールーキー・石田洸介(東洋大)のエンジンがかかってきた。今季は故障もあり、トラックシーズンは不発に終わったが、駅伝シーズンで存在感を発揮。出雲(5区)と全日本(4区)で連続区間賞の快走を見せているのだ。 福岡・浅川中時代に1500m3分49秒72、3000m8分17秒84の中学記録を樹立。群馬・東農大二高では5000mで13分34秒74の高校記録(当時)を打ち立て、10000mでも28分37秒50(当時・高校歴代7位)をマークしている。 そんな燦々と輝くキャリアを持つ逸材は、この春に東洋大に入学した。その理由について石田はこう説明する。 「中学・高校と指導者に恵まれてきたからこそ、それぞれ結果を残すことができたと思っています。東洋大に進学したのは、酒井俊幸監督の『世界大会の代表になれる選手を育成したい』という思いと、自分の目標が一致したことが大きいです。自分の夢を叶えられるのはここしかないと感じました」 設楽悠太(Honda)、服部勇馬(トヨタ自動車)、相澤晃(旭化成)らOBが世界大会の代表として活躍した姿は石田にとってまぶしく見えたことだろう。歴代のエースたちの背中を追いかけるべく東洋大に入学したが、前半戦は苦しんだ。トラックで好記録を連発した昨季のダメージもあり、冬に走りを崩したのが原因だった。 「昨年12月は左右の接地バランスが格段に悪く、脚に力が入らない状態でした。気持ちだけで何とかしようと思っていたんですけど、身体がついてこなくて……。結局、12月の都大路は惨敗でした」 全国高校駅伝は1区で区間14位。高校最後のレースを終えた後は、左足底付近を痛めてジョグすらできない状態になったという。 群馬・東農大二高時代は2年時と3年時(写真)に全国高校駅伝に出場。ともにエース区間の1区を走って区間8位、14位だった 大学入学後は徐々に走り始めて、6月末の日本選手権5000mに照準を定めた。しかし、レース前の合宿で右脚を痛めた影響もあり、3000mで途中棄権している。 しばらくは脚の痛みに悩まされたが、夏合宿の後半からAチームの合宿に参加。9月下旬には、「ようやく自分のイメージする走りと動きが合致してきて、少しずついい感覚で走れてきています」と話していた。それでも高校の一番良かった時を「100%」とすれば、この時は「50%くらい」だった。 「昨年の全国高校駅伝も50%くらいでしたけど、どんどん下がっていく中の50%でした。今は上向いている過程の50%。動きさえ良くなれば、戻ってくるんじゃないかなという感覚がありますね。今度、記録会で5000mに出場するので、13分台で走れればバッチリなんじゃないかなと思います」(9月取材時の石田) 独自の感覚を口にしていた石田だが、その言葉は現実のものになっていく。駅伝でブレイクした秋シーズン
9月29日の早大競技会5000m。石田は13分59秒99(2組3着)で復活の狼煙を上げると、学生駅伝で輝きを放った。 10月10日の出雲駅伝は5区に出場。6位でタスキを受け取ると、帝京大、青学大、國學院大、早大をかわして2位に浮上した。4人抜きの快走は区間2位以下を20秒以上も引き離す圧倒的な区間賞だった。石田の活躍もあり、主軸の宮下隼人(4年)と松山和希(2年)を欠いたチームは3位に食い込んでいる。 11月7日の全日本大学駅伝は4区に登場。9位から8位に順位を押し上げると、青学大・高橋勇輝(4年)と同タイムながら連続区間賞を獲得。ただ、「自分の役割は前を追っていくこと」と考えて最初の1kmを2分47~48秒で入ったが、なかなかペースが上がり切らなかった。「前に追いつきそうで追いつけない、苦しい展開になりました。出雲から練習も積めていたので、区間賞でも自分としては素直に喜べない結果です」と反省を口にした。 ここまでの駅伝シーズンを振り返ると、出雲では強風の中を押し切る強さを見せ、全日本では5kmを14分14秒、10kmを28分53秒ほどで通過してスピード感のある走りを披露した。だが、石田はこれに満足していない。 「駅伝3連続区間賞に向けてリーチになりますが、まだ10kmちょっとしかスタミナは持ちません。箱根に向けてはまだまだだと思っています。それに世界に出たいと思って東洋大に入学したので、来年は日本選手権で勝負したい気持ちが強いです。全日本後は5000m、10000mでタイムを狙う練習が優先順位としては上かなと思っています」 とはいえ、日本人で生まれたからには箱根駅伝への憧れも抱いている。「箱根駅伝までの過程をトラックにつなげ、できれば往路区間を走りたいですね。最終的には箱根駅伝でも記憶に残る走りをして卒業したいです」と石田は青写真を描いている。 2024年夏、大学4年で迎えることになるパリ五輪でトラック種目の出場を本気で狙っている。鉄紺のエースたちの系譜を引き継ぎ、箱根路でも積極果敢の走りを見せてくれるだろう。 ◎いしだ・こうすけ/2002年8月21日生まれ。福岡県出身。浅川中→群馬・東農大二高→東洋大。自己記録5000m13分34秒72、10000m28分37秒50。中学時代に1500m3分49秒72、3000m8分17秒84、5000m14分32秒44と次々と新記録を樹立した逸材。高校時代は苦しい時期を過ごしながらも、3年時に5000mの高校記録を2度塗り替えて存在感を示した。東洋大進学後は10月の出雲駅伝5区、全日本大学駅伝4区と連続で区間賞を獲得し、箱根駅伝でも鉄紺軍団の主軸として活躍が期待される。 文/酒井政人
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