2026.05.30

城西大の柴田侑
柴田 侑 Shibata Yu 城西大4年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。58回目は、城西大の柴田侑(4年)をピックアップする。
4月に5000mで13分22秒46をマークすると、5月4日の全日本大学駅伝関東地区選考会(10000m)ではチームは途中棄権となってしまったものの、日本人トップの快走(28分05秒07)を見せた。
そして、5月17日のセイコーゴールデングランプリでは3000mで従来の日本記録を塗り替える7分39秒51の日本学生最高記録を叩き出している。ブレイクを遂げた柴田のこれまでの道のりや将来的なビジョンについて聞いた。
火がつく闘争心とどよめく会場
城西大の柴田侑(4年)にとって、東京・国立競技場での初レースだった。5月17日のセイコーゴールデングランプリ3000m。4月に5000mで13分22秒46(日本人学生歴代15位)を出したこともあり、出場の機会が巡ってきた。
2万4000人を超える大観衆に囲まれ、柴田の気持ちは高ぶっていた。「トップ選手ばかりでしたが、せっかくのチャンス。あわよくば1位も不可能ではないと思っていました」。気持ちを集中させてスタートラインへ立つと、スタンド前列からひときわ大きな声援が飛んでいることに気づいた。
「ゆうーっ! 行くぞー!」。そう声を張り上げたのは、柴田の地元・愛知県豊橋市から駆けつけた中学時代の恩師だった。掛け声に気づき、柴田は腕を突き上げて応える。闘争心に火がついた。
号砲が鳴り、小柄な身体から大きなストライドと軽快なピッチを刻む。1000mの通過は2分33秒53。柴田は3、4番手にピタリとつき、流れに乗る。ハイペースで進む展開を、場内実況のアナウンサーが丁寧に伝えていく。
「ここで城西大学の柴田侑! 前に出てきました! 2000mは5分07秒56です!」。思わぬ伏兵の躍動に、会場はどよめいた。「余裕があって、速いと思わなかったので前に出ました」。1600mから2000mの1周のラップは60秒台に上がっていた。ここから、今季前半の“ベストバウト”とも言える闘いが始まる。
その後、塩尻和也(富士通)が前に出ようとするものの、一歩も前へ出させなかった。「あそこまで来たら、もう譲るわけにはいきませんでした」。後ろに井川龍人(旭化成)と森凪也(Honda)を従え、2600mを6分42秒12で通過した。
残り200m、さらにギアを上げる。しかし、残り100mを過ぎて破壊的なスパート力を持つ井川と森が本領を発揮。2人に差し切られ、柴田は3着。森が日本新となる7分38秒98で制している。
柴田も7分39秒51で従来の日本記録を更新。ラスト400mは57秒39だった。会場が新記録に沸くなか、フィニッシュ後には悔しさを露わにし、頭を抱え、拳を地面に叩きつけた。
屋外では三浦龍司(順大/現・SUBARU)の7分47秒98、屋内では佐藤圭汰(駒大/現・京都陸協)の7分42秒56の日本学生最高記録を超えている。「自分が前に出てペースが落ちなかったので、結果的には良かったかもしれないです。タイムだけで見たらですが」
こだわっていたのは、あくまで勝負だった。すべては日本選手権5000mで勝つため。これまで悩む時期も長かったが、心の支えとして大きな目標を胸に秘め続けていたことで、大学4年目にして素質が開花した。
城西大の柴田侑[/caption]
学生長距離Close-upインタビュー
柴田 侑 Shibata Yu 城西大4年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。58回目は、城西大の柴田侑(4年)をピックアップする。
4月に5000mで13分22秒46をマークすると、5月4日の全日本大学駅伝関東地区選考会(10000m)ではチームは途中棄権となってしまったものの、日本人トップの快走(28分05秒07)を見せた。
そして、5月17日のセイコーゴールデングランプリでは3000mで従来の日本記録を塗り替える7分39秒51の日本学生最高記録を叩き出している。ブレイクを遂げた柴田のこれまでの道のりや将来的なビジョンについて聞いた。
火がつく闘争心とどよめく会場
城西大の柴田侑(4年)にとって、東京・国立競技場での初レースだった。5月17日のセイコーゴールデングランプリ3000m。4月に5000mで13分22秒46(日本人学生歴代15位)を出したこともあり、出場の機会が巡ってきた。 2万4000人を超える大観衆に囲まれ、柴田の気持ちは高ぶっていた。「トップ選手ばかりでしたが、せっかくのチャンス。あわよくば1位も不可能ではないと思っていました」。気持ちを集中させてスタートラインへ立つと、スタンド前列からひときわ大きな声援が飛んでいることに気づいた。 「ゆうーっ! 行くぞー!」。そう声を張り上げたのは、柴田の地元・愛知県豊橋市から駆けつけた中学時代の恩師だった。掛け声に気づき、柴田は腕を突き上げて応える。闘争心に火がついた。 号砲が鳴り、小柄な身体から大きなストライドと軽快なピッチを刻む。1000mの通過は2分33秒53。柴田は3、4番手にピタリとつき、流れに乗る。ハイペースで進む展開を、場内実況のアナウンサーが丁寧に伝えていく。 「ここで城西大学の柴田侑! 前に出てきました! 2000mは5分07秒56です!」。思わぬ伏兵の躍動に、会場はどよめいた。「余裕があって、速いと思わなかったので前に出ました」。1600mから2000mの1周のラップは60秒台に上がっていた。ここから、今季前半の“ベストバウト”とも言える闘いが始まる。 その後、塩尻和也(富士通)が前に出ようとするものの、一歩も前へ出させなかった。「あそこまで来たら、もう譲るわけにはいきませんでした」。後ろに井川龍人(旭化成)と森凪也(Honda)を従え、2600mを6分42秒12で通過した。 残り200m、さらにギアを上げる。しかし、残り100mを過ぎて破壊的なスパート力を持つ井川と森が本領を発揮。2人に差し切られ、柴田は3着。森が日本新となる7分38秒98で制している。 柴田も7分39秒51で従来の日本記録を更新。ラスト400mは57秒39だった。会場が新記録に沸くなか、フィニッシュ後には悔しさを露わにし、頭を抱え、拳を地面に叩きつけた。 屋外では三浦龍司(順大/現・SUBARU)の7分47秒98、屋内では佐藤圭汰(駒大/現・京都陸協)の7分42秒56の日本学生最高記録を超えている。「自分が前に出てペースが落ちなかったので、結果的には良かったかもしれないです。タイムだけで見たらですが」 こだわっていたのは、あくまで勝負だった。すべては日本選手権5000mで勝つため。これまで悩む時期も長かったが、心の支えとして大きな目標を胸に秘め続けていたことで、大学4年目にして素質が開花した。高2で滋賀県高校記録を樹立
愛知・豊橋南陽中では3年時に全中で800mと1500mに出場。800mは8位入賞した。3000mのベストは8分37秒99で、2019年の全国中学ランキングでは14位。全国都道府県男子駅伝の愛知県代表にも選ばれ、2区(3km)3位と好走している。 そして、滋賀学園高へ越境入学する。一本歯下駄を使ったドリルなどで『美しいフォームを身に着けよう』という大河亨先生の指導のもと、高2の近畿大会で1500m3分51秒01をマークし、インターハイ出場。5000mも14分03秒14と滋賀県高校記録(当時)を出した。 吉岡大翔(長野・佐久長聖高/現・順大4)らトップを走る選手がいた世代。柴田は自分もトップになれると思っていたが、高3で不調に陥る。「貧血になり、体重も落ちすぎて。ジョグもできないくらい、心身ともに走れなくなりました」と吐露する。 その高3時は滋賀県大会の1500m7位で敗退。自己ベストも更新できなかった。志願した都大路1区も30分42秒で区間32位だった。だが、現在の城西大からは素質を見込まれ、高1の段階から声がかかっていたという。 大学入学後も、1、2年時は思うような走りができずにいたが、櫛部静二監督は時間をかけて柴田を育てた。大学2年の全日本大学駅伝では「急成長中の選手。経験を積ませたい」(櫛部監督)と、2区(11.1km)に抜擢している(区間11位)。 3年となった昨年度は、出雲駅伝1区(8.0km)7位、全日本大学駅伝4区(11.8km)10位でつないだ。「監督とは『長い距離で土台を作って、スピードを強化していこう』と話して決めていました」。秋以降の積み重ねで、箱根駅伝1区(21.3km)では1時間0分51秒(区間6位)と好走し、今季のトラックでの飛躍につながる要因の一つになった。 高校時代から海外のレース動画を観て、そのスピードに魅了されてきた。5月4日の全日本大学駅伝関東地区選考会10000mでは、最終4組でリチャード・エティーリ(東京国際大4)に限界までついた。ただ、28分05秒07で5着(日本人トップ)の柴田に対し、エティーリは27分37秒50で1着。トラックは世界との差が大きいと言われるが、「その大きな差がまた一つおもしろい。海外選手と走れることが、いま一番モチベーションが上がりますね」とうなずく。 雌伏の時を経て、アッと驚くレースを見せ始めた。「いずれは五輪や世界選手権に出て、海外選手たちと競い合いたいです」。今後も観る者をワクワクさせてくれそうだ。 [caption id="attachment_131366" align="alignnone" width="800"]
全日本大学駅伝関東地区選考会で日本人トップの快走を見せた柴田[/caption]
◎しばた・ゆう/2004年8月19日生まれ、愛知県豊橋市出身。南陽中→滋賀学園高→城西大。自己記録5000m13分22秒46、10000m28分05秒07、ハーフマラソン1時間6分14秒
文/荒井寛太 RECOMMENDED おすすめの記事
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