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2026.02.27

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【学生長距離Close-upインタビュー】箱根駅伝1区区間新相当の筑波大・川﨑颯 「もう一段強くなる1年にしたい」

覚醒した箱根駅伝予選会

川﨑が覚醒を見せたのは10月の箱根予選会だった。昭和記念公園内に入る14km手前で日本人トップ集団から果敢に飛び出し、見ていた観客や関係者らを驚かせた。

1時間2分20秒で個人19位(日本人10位)。「感覚的には80パーセントぐらいの仕上がりでした。それでも、いざ蓋を開けてみれば100パーセントを超えるような力が発揮できました」と振り返る。

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その後、箱根1区に向けても戦略的に準備した。ハイペースを想定し、まずは11月16日の日体大長距離競技会5000mで13分42秒99をマーク。筑波大記録を更新している。2週間後の29日には10000mで28分32秒10の自己新。自信を持って本番を迎えられた。

大阪府枚方市出身。長尾西中では3000m9分07秒13、東海大仰星高では5000m14分49秒46が自己ベストだ。同じ枚方市出身の中大・白川陽大(4年)と練習する機会もあったというものの、インターハイ経験者の白川とは対照的に全国の舞台とは無縁だった。

高2の春に筑波大を第一志望に設定。理系で元々は工学や街作りに興味があったものの、「箱根駅伝に出たい気持ちが大きく、自分が納得するかたちで競技を進められたら」と、高3春に体育専門学群へ志望先を変更。不合格なら関西の私大に入る予定ながらも合格し、国立大で箱根路に挑む権利を手に入れた。

筑波大に入ると着実に成長し始める。平山大雅(現・コニカミノルタ)、金子佑太朗(4年)、小山洋生(同)らの存在は大きかった。「負けず嫌いなので、ガツガツ食らいついていって勝ちに行く気持ちがある中で、強い先輩がいるのは本当にありがたいことでした」と実感を込める。

なぜ、川﨑は大学3年目で覚醒したのか。「これがトリガーというものはわかりません」という。一方で、「小山先輩と練習を積めたことは大きかったと思うのですが、食事や睡眠など生活の基礎を見直して、できることをやり続けた結果かもしれません」と分析した。

関東学生連合チームも貴重な機会となった。「小説の『俺たちの箱根駅伝』(池井戸潤著)を読むと、(連合は)まとまりがないのかなという印象でしたが、全然そんなことはありませんでした」。特に駿河台大・古橋希翁(3年)からは運動生理学に基づく練習設計を聞き、東大・秋吉拓真(4年)は大学院進学や競技継続について相談に乗ってくれたという。

新体制では駅伝主将に就任。2020年の第96回大会以来の本戦出場を目指すものの、「一人ひとりが同じ方向にベクトルを向け、大きな目標に向かっていく集団を作りたいです」と闘志があふれる。

4月の金栗記念5000mで日本選手権参加標準記録(13分36秒00)の突破をまずは目標に置く。2月の日本学生ハーフでは1時間0分53秒の5位。「大きい大会で勝った経験がなく、あと一歩で負けてしまうことが多いです。勝ち切るレースをしてもう一段強くなる1年にしたい」と力を込める。

無名集団による逆襲のシナリオを、川﨑は筑波大の先頭に立ち描き始めている。

箱根駅伝1区で区間新記録・区間3位に相当する快走を見せた川﨑

◎かわさき・そう/2004年12月20日生まれ、大阪府枚方市出身。長尾西中→東海大仰星高→筑波大。自己記録5000m13分42秒99、10000m28分32秒10、ハーフマラソン1時間0分53秒

文/荒井寛太

[caption id="attachment_131366" align="alignnone" width="800"] 筑波大の川﨑颯[/caption] 学生長距離Close-upインタビュー 川﨑 颯 Kawasaki So 筑波大3年 「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。55回目は、筑波大の川﨑颯(3年)をピックアップする。 昨年10月の箱根駅伝予選会では個人19位。11月に5000mで13分42秒99の大学記録をマークすると、1月の箱根駅伝では1区を担って区間新記録・区間3位に相当する1時間0分38秒で走破した。 2月の日本学生ハーフマラソン選手権でも1時間0分53秒で5位に食い込む快走を見せている。新たなシーズンへの目標や今後のキャリア展望などを聞いた。

沿道の声にガッツポーズ

第102回箱根駅伝1区、筑波大・川﨑颯(3年)は区間新記録・区間3位相当となる1時間0分38秒の快走を見せ、関東学生連合チームに勢いを与えた。 スタート直前、川﨑はポーンポーンと軽やかにジャンプとその場ダッシュを繰り返し、4足持っているという愛用のレースシューズの感触を確かめた。「幼い頃からのあこがれの舞台だったので、楽しみな気持ちが大きかったです。緊張もなかったというのが正直な感想です」と振り返る。 そして号砲が鳴り、大観衆の前を出発。50m先の日比谷通りへは最後方で左折した。「タスキが思ったよりもうまい感じに結べていなくて、気になって少しいじっていたら後ろからのスタートになってしまいました」。それは平常心で落ち着いていた証でもある。 中大・藤田大智(3年)が序盤からハイペースで飛ばし、5km通過は14分04秒。川﨑は20mほど後ろの第2集団で推移する。「明らかにペースが速かったので、後ろの集団でしっかり前を追っていこうと考えて走っていました」と話し、「8km付近の新八ツ山橋あたりで追いつく想定で、焦らずにレースを進めることができました」と淡々と走っていた。 川﨑の読み通り、8km過ぎで集団が一つになると、自らペースメイクに転じる。10km通過は28分23秒。「自分で引っ張るほうが動きの感覚が良かったので、そのまま押していこうと走っていました」。13.5kmで東洋大・松井海斗(2年)が意表を突いて飛び出すなか、15km過ぎに川﨑率いる集団が追撃を始める。 「プラン通りでした。18kmの六郷橋に向け、上りは得意なのでそこから勝ち切る準備をしようと考えていました」。16.3kmで松井を捉えると、先頭に立つ。狙っていたのは区間賞相当。その瞬間、地元・大阪から駆けつけた両親と姉からの声援が沿道から飛んだという。左腕を横に掲げ、ガッツポーズでそれに応えた。 「自分はあまり沿道にガッツポーズをするのは好きではないのですが、せっかく遠くから見に来てくれているし、身体が勝手に反応しました。『六郷橋手前で応援するよ』と聞いていたので、両親の声はすぐに気づきました」 しかし、その直後に國學院大・青木瑠郁(4年)が満を持してロングスパート。「振り返ってみれば、青木選手についていく挑戦をしても良かったという後悔はあります」と吐露した。 それでも、レース中はきつさを感じており、「後ろの集団で競り合って、ある程度その中でも上位で勝ち切れたという点はすごくいい経験になりました」とうなずく。 大阪から駆けつけた家族はレース後、「すごく良いものを見させてもらったよ」と声をかけてくれた。その言葉が、川﨑の胸には深く染みた。

覚醒した箱根駅伝予選会

川﨑が覚醒を見せたのは10月の箱根予選会だった。昭和記念公園内に入る14km手前で日本人トップ集団から果敢に飛び出し、見ていた観客や関係者らを驚かせた。 1時間2分20秒で個人19位(日本人10位)。「感覚的には80パーセントぐらいの仕上がりでした。それでも、いざ蓋を開けてみれば100パーセントを超えるような力が発揮できました」と振り返る。 その後、箱根1区に向けても戦略的に準備した。ハイペースを想定し、まずは11月16日の日体大長距離競技会5000mで13分42秒99をマーク。筑波大記録を更新している。2週間後の29日には10000mで28分32秒10の自己新。自信を持って本番を迎えられた。 大阪府枚方市出身。長尾西中では3000m9分07秒13、東海大仰星高では5000m14分49秒46が自己ベストだ。同じ枚方市出身の中大・白川陽大(4年)と練習する機会もあったというものの、インターハイ経験者の白川とは対照的に全国の舞台とは無縁だった。 高2の春に筑波大を第一志望に設定。理系で元々は工学や街作りに興味があったものの、「箱根駅伝に出たい気持ちが大きく、自分が納得するかたちで競技を進められたら」と、高3春に体育専門学群へ志望先を変更。不合格なら関西の私大に入る予定ながらも合格し、国立大で箱根路に挑む権利を手に入れた。 筑波大に入ると着実に成長し始める。平山大雅(現・コニカミノルタ)、金子佑太朗(4年)、小山洋生(同)らの存在は大きかった。「負けず嫌いなので、ガツガツ食らいついていって勝ちに行く気持ちがある中で、強い先輩がいるのは本当にありがたいことでした」と実感を込める。 なぜ、川﨑は大学3年目で覚醒したのか。「これがトリガーというものはわかりません」という。一方で、「小山先輩と練習を積めたことは大きかったと思うのですが、食事や睡眠など生活の基礎を見直して、できることをやり続けた結果かもしれません」と分析した。 関東学生連合チームも貴重な機会となった。「小説の『俺たちの箱根駅伝』(池井戸潤著)を読むと、(連合は)まとまりがないのかなという印象でしたが、全然そんなことはありませんでした」。特に駿河台大・古橋希翁(3年)からは運動生理学に基づく練習設計を聞き、東大・秋吉拓真(4年)は大学院進学や競技継続について相談に乗ってくれたという。 新体制では駅伝主将に就任。2020年の第96回大会以来の本戦出場を目指すものの、「一人ひとりが同じ方向にベクトルを向け、大きな目標に向かっていく集団を作りたいです」と闘志があふれる。 4月の金栗記念5000mで日本選手権参加標準記録(13分36秒00)の突破をまずは目標に置く。2月の日本学生ハーフでは1時間0分53秒の5位。「大きい大会で勝った経験がなく、あと一歩で負けてしまうことが多いです。勝ち切るレースをしてもう一段強くなる1年にしたい」と力を込める。 無名集団による逆襲のシナリオを、川﨑は筑波大の先頭に立ち描き始めている。 [caption id="attachment_131366" align="alignnone" width="800"] 箱根駅伝1区で区間新記録・区間3位に相当する快走を見せた川﨑[/caption] ◎かわさき・そう/2004年12月20日生まれ、大阪府枚方市出身。長尾西中→東海大仰星高→筑波大。自己記録5000m13分42秒99、10000m28分32秒10、ハーフマラソン1時間0分53秒 文/荒井寛太

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