◇東京世界陸上(9月13日~21日/国立競技場)2日目
東京世界陸上2日目のイブニングセッションが行われ、男子10000mに出場した鈴木芽吹(トヨタ自動車)は29分33秒60の20位でフィニッシュした。
レース後の鈴木は「まずはこの国立であれだけの歓声を浴びて走れたことはすごく幸せでしたし、この舞台に立てたことは自分自身も褒めたいと思います」と、今大会の多くの日本人選手が口にしているように自国開催の世界陸上で戦えた喜びを吐き出した。
「雰囲気や周りの選手のオーラに飲まれたるすることは全くなく、自分でも程よい緊張感を楽しみながら、マインド的にも良い状態で迎えられました」
しかし、レース自体は世界最高峰の大会だからこその、国内レースではまずお目にかかることのない非常に難易度の高いものだった。
最初の400mが74秒、1000m3分15秒の超スローペース。3000m手前ではパリ五輪代表の葛西潤(旭化成)と集団を引っ張った。
鈴木は「僕は前に出る予定はなかったのですが、自国開催で会場もすごく盛り上がっていて、このまま何もしないで下がっていくより、たくさん来て下さっている方にも良いところを見せようと思いました。ちょっとだけですけど、前に出たりする積極性を出せたのは良かったです」と振り返る。
葛西と鈴木が世界の強豪をリードする間、スタンドからの地鳴りのような大歓声が2人を後押しした。
ただ、ここからが“世界のレース”だった。5000~6000mにかけて何度かの首位交代だけでなく、急激なペースアップがあったかと思えば、6600mあたりで再び大きくペースダウン。鈴木も「5000mまでは余裕があったのですが、そこから(ペースの)上げ下げがある中できつくなってしまった」と語ったように、駆け引きとも言える猛者たちの独特のギアチェンジにより徐々に体力を奪われることになった。
鈴木からすると、7000m過ぎにトップに躍り出た葛西のような果敢さを持てず、8000mからのケニアやエチオピアといったアフリカ勢にも対応できなかった。
「今日は葛西さん(22位)には順位では勝ちましたが、葛西さんとの勝負と考えたら完全な僕の負け。世界との差も見ていただいた通りで、本当に悔しいです」
今大会、ランキング上位者の辞退など運にも恵まれて出場を果たした鈴木は、「結果を出したい以上に、走ることで何かを感じたり、何かを得たりというのを1つでも多く持って帰る」ことをテーマにしていた。そして、実際に学ぶべき点は多かった。
「この経験を自分の中に落とし込んで練習やレースに生かせるかが大事。走ってみて結果を残したいという欲が出てきているので、しっかり練習を積んで結果も積んで、また北京世界陸上やロサンゼルス五輪のスタートラインに立って挑戦したいです」
10000mレースの奥深さを実感した鈴木は、また次なる戦いへと視線を向けた。
文/小野哲史
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