2025.04.12
◇第109回日本選手権10000m(4月12日/熊本・えがお健康スタジアム)
東京世界選手権とアジア選手権の代表選考会を兼ねた日本選手権10000mが行われ、男子は鈴木芽吹(トヨタ自動車)が27分28秒82で初優勝を飾った。
右手を高々と掲げて雨が降りしきるフィニッシュラインを駆け抜けた。「本当にうれしいですし、一番はホッとしている気持ちです」と鈴木の笑顔が弾けた。東京世界選手権の参加標準記録(27分00秒00)には届かなかったものの、歓喜の初優勝。アジア選手権代表争いにも一歩前進した。
「ずっと葛西さん(潤、旭化成)を徹底的にマークしていました」
その言葉通り、序盤から前にいる葛西をピッタリとマーク。ペースメーカーが途中でペースダウンし、吉居大和(トヨタ自動車)が前へ。すかさず葛西が出ると、その背後に鈴木がつく。その後は三つ巴の様相を呈した。
雨天などもあり「ペースは速くならないと思っていて、とにかく勝負」。残り1000mで「行くにも行けなかったですが、自分も余裕があったので行きました」と鮮烈なスパートを決めて勝負あり。
昨年は5000mで13分13秒80、10000mでも27分20秒33と秋に自己新を出していた鈴木。これまでケガに泣かされてきただけに、全日本実業団対抗駅伝以降も「あまり練習の質を上げすぎず、基礎的なことからしっかりやってきた」。その後は米国・アルバカーキで合宿を積んでも、とにかく「“継続”を意識しました」と言う。
昨年から「26分台」への思いを語っていたが、「生意気かもしれませんが、だんだんと明確な目標になってきました」と自身でも手応えをつかんでいる。
大学時代は「迷惑をかけていたので、とにかく3大駅伝で恩返しすることを考えていて、あまり世界に目を向けられていなかった」。学生のうちに日本選手権で3位になっても、それはかわらなあかった。しかし、実業団入りし、改めて田澤廉ら先輩たちと過ごす中で世界へと視線が向いた。
東京世界選手権に向けては、まずは代表入りが濃厚なアジア選手権でしっかり勝負することが第一。「これまで味わったことがない。会社の名前だけでなく、国を背負う。へたな走りはできない」と気を引き締める。
今後は3000mでセイコーゴールデングランプリにも出場予定。かねてより公言していた5000mの日本選手権出場も見込み、「2種目で世界選手権」を目指していく。
ガラスのエースから、覚醒した日本長距離界のエースへ。その物語はまだ始まったばかりだ。
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.10.15
19年ドーハ世界陸上代表・井本佳伸が現役引退「たくさんの出会い幸せ」今後は指導者の道へ
-
2025.10.15
-
2025.10.15
-
2025.10.14
-
2025.10.14
-
2025.10.13
-
2025.10.13
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.10.15
19年ドーハ世界陸上代表・井本佳伸が現役引退「たくさんの出会い幸せ」今後は指導者の道へ
男子短距離で活躍し、19年ドーハ世界選手権リレー代表(補欠)の井本佳伸(東京ガスエコモ)が現役生活に区切りをつけることを自身のSNSで発表した。 井本は京都・東輝中時代に全中で100m5位、200m4位。名門・洛南高へ進 […]
2025.10.15
100m宮本大輔が引退「最後まで走り切れた」元中学記録保持者「早熟なんて気にしなくていい」
穏やかな笑顔で静かに、地元・山口でスパイクを脱いだ。 男子100mの元中学記録保持者・宮本大輔(山口フィナンシャルグループ)が現役生活にピリオドを打った。9月の全日本実業団対抗は、地元・山口。「夏くらいには一旦、区切りを […]
2025.10.15
九州実業団駅伝エントリー 旭化成は葛西潤や相澤晃、クラフティア・赤﨑暁、三菱重工・近藤亮太ら日本代表経験者登録
来年元日の全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)の予選会を兼ねた第62回九州実業団毎日駅伝(11月3日/大分・佐伯市の佐伯中央病院陸上競技場発着)のエントリーが10月15日、同実業団連盟から発表された。 エントリーチー […]
2025.10.15
国立競技場が2026年1月から5年間新たな呼称へ! 「ナショナルスタジアムパートナー」第1号にMUFG
金融・証券などの三菱東京UFJフィナンシャルグループ(MUFG)は10月15日、東京・国立競技場の運営を担うジャパンナショナルスタジアム・エンターテイメント(JNSE)と「ナショナルスタジアムパートナー」契約を結んだと発 […]
2025.10.15
リオ五輪110mH銀メダル・オルテガが現役引退 15年に12秒94をマーク
16年リオ五輪の男子110mハードルで銀メダルを獲得したO.オルテガ(スペイン)が引退を表明した。 オルテガはキューバ出身の34歳。12年にはロンドン五輪で6位入賞を果たす。13年のモスクワ世界選手権に出場した際にキュー […]
Latest Issue
最新号

2025年11月号 (10月14日発売)
東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望