2025.02.18
男子100mで9秒95の日本記録を持つ山縣亮太(セイコー)がオンラインで会見を開き、2025年シーズンに向けた意気込みを語った。
昨年5月に日本選手権以降の試合出場を見送ることを表明した山縣。4月29日の織田記念以降は実戦から遠ざかっており、これにより4大会連続五輪出場はついえた。
原因は右脚の違和感で、「右脚のふくらはぎからハムストリングスにかけてのしびれや突っ張り」で、日常生活でも「足裏などにチクチクした痛みが出る」状況だったという。
脚の違和感の一因となっていたのが坐骨神経痛。その原因は明確にはならなかったが、「憶測なのですが、臀部やハムストリングスの張りが強くなって、骨盤が前傾すると脚に気持ち悪い感じがありました」と説明する。
9月いっぱいまでは「いろいろな治療法を試しつつ、まとまった期間を休んでどんな反応が出るか試したかった」と、トレーニングは一切しなかった。それでも、翌年(今年9月)に控える東京世界選手権を見据えた時に「逆算してそろそろ動かないと」と、10月からトレーニングを再開。ジョグや「心肺機能を戻す」ところからスタートさせたという。
休養期間、『引退』という選択肢も「可能性としては頭にあった」と明かす。「脚が痛いまま走っても仕方ない」。ただ、治療を探る中で、「なんとなく方針にあたりもついて、時間がかかるかもしれないがトレーニングをやっていこう」と前向きに。
「5ヵ月も休むと走りたくなってきたんです」と笑い、再開してからは「ケガをした要因やどういう走りをしたいのか考えていくと、だんだんとモチベーションが上がってきました」。
今も「ウエイトトレーニングなど高負荷をすると違和感は出る」。ただ、新たな理学療法士などスタッフの顔ぶれも少し変化。心拍数を日々計測し、「一つの指標にしている」。今は「テーマは“腹八分目”」と、まずは質の高いトレーニングを継続するように意識している。
1年前も「五輪シーズンに後悔したくないという思いから、精神的に追い込めてしまった」。それも一つの反省材料。疲労や身体のバランスの崩れが出た時は「ニュートラルに戻す」作業を繰り返している。
体重や筋肉量はそこまで減少していないそうだが、見た目もシャープに。特に「肩周りなど上半身が落ちた」と自身も感じているが、「もしかしたら出力や少し落ちるかもしれないが、動きやすくなっている」とも。2020年以降、膝を故障したことから「股関節をダイナミックに」使う意識を持ってきたが、それに加えて「上半身との連動」がテーマ。原点回帰で腕振りにも意識を向けている。
年末からウエイトトレーニングを再開し、年明けの石垣島合宿からはスパイクも履くようになった。スピード水準も「走るトレーニングは100%できています」。ウエイトトレーニングもイメージの「8割くらい」まで戻っているそうだ。
ケガをしたことも含め、「取り組みに後悔はない」。山縣はこれまでも「1年、1年、トライアンドエラー。答え合わせをして過ごしてきた」。決してマイナスに捉えず、「経験を蓄積して走りにつながっていくもの。経験を糧にして自己ベストを出したい」と、どんな逆境もプラスに変えて前進してきた。
東京世界選手権が大きなターゲット。実は、これまで五輪3大会に出場しているが、世界選手権の出場は2013年モスクワ大会のみ。「自分でも不思議なんですが、縁がなくて。そろそろ出たいですね」と苦笑い。
国立競技場は「あまり良い走りができていない」。21年東京五輪は万全な状態ともいかず、4×100mリレーもバトンがつながらず途中棄権に終わっている。「良い思い出に上書きしたい」と明るい表情を見せた。
今週末の2025 Japan Athlete Games in Osaki(鹿児島)で、60mと100mにエントリー。実に10ヵ月ぶりの実戦となる。「調子が良いのかどうかは試合でないとわかりませんが、大きなケガなく順調にできています。緊張感もありますが、冬にやってきたこと試せるという楽しみもあります」。その後は豪州で2レースを踏み、4月29日の織田記念などをスケジュールに組み込んでいる。
「大きな目標をどうしても立ててしまいますが、順序がある。まずは日本選手権、世界選手権に出られるレベルに戻すこと。10秒0台の水準に戻して、その先にもう一度9秒台。チャレンジャーの立場で臨む」
6月で33歳。「今、自分の中にあるのは2025年のシーズンに集中して、出し切ること」と山縣。「一生懸命取り組む中で走りのインスピレーションだったり、こんな技術で走りたいと思えればその先のことは考えたい」と笑みを浮かべたが、ある種の“集大成”として迎えるつもりでいる覚悟がにじんでいた。
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