2025.02.15
第101回箱根駅伝で力走した選手たちがいる。勝利の栄光で日の目を見た選手以外にもそれぞれの思いを胸に秘め、必死でタスキをつないだ。毎年行われる箱根路でも「第101回」は一度のみ。そんな“最後”の舞台を駆け抜けた選手たちの奮闘を紹介する。
最初で最後の舞台で見せ場
2年ぶりに結成された関東学生連合。1区の片川祐大(亜細亜大4)が序盤に2位集団から抜け出し、見せ場を作った。
1区は中大の吉居駿恭(3年)がスタート直後から飛び出す展開。追いかける選手は誰もいない。そこで第2集団を引っ張ったのが片川だった。
「集団としてハイペースである程度追わないと、どんどん離れていくと思っていました。やっぱり有力校、優勝を狙うチームは前に出たがらないと思ったので、自分がレースをハイペースに持ち込もうかなと思って前に出たんです」
最初は抜け出すつもりはなく、集団で追いかけるつもりだった。しかし、3.5km付近でついてきたのは専大の新井友裕(3年)だけ。その新井も次第に離れていった。
だが、沿道の声で足音がかき消されていたため、片川はその事実に気づかない。5km手前の右折するタイミングで先頭を譲ろうと後ろを振り向く。すると、背後には誰もおらず、そこで初めて単独走をしていることに気がついた。
「そこからはガムシャラに逃げていました」と覚悟を決めて、2番手死守に全力を尽くした。
単独走になってもペースを大きく落とすことなく、淡々と走り続ける。蒲田の時点で2位位集団と42秒差。このまま逃げ切れるかと思われたが、終盤に入って2位集団のペースが一気に上がる。
残り700m付近で2位集団に追いつかれると、反応することができずに後退。最終的には17位相当でタスキをつないだ。
「やり切れたのは間違いないです。1区の役目としては先頭から差をつけられないことだったので、悪くはなかったですけど、着差で17番だったので、『あとちょっと早かったら何位だったのにな』という欲が出てきました。悔しさもありましたけど、『もっといけたよな』というのはありました」
力を出し切りながらも悔いも残った最初で最後の箱根。ただ、一人で走ったからこそ得られたものもあったと片川は語る。
最初で最後の舞台で見せ場
2年ぶりに結成された関東学生連合。1区の片川祐大(亜細亜大4)が序盤に2位集団から抜け出し、見せ場を作った。 1区は中大の吉居駿恭(3年)がスタート直後から飛び出す展開。追いかける選手は誰もいない。そこで第2集団を引っ張ったのが片川だった。 「集団としてハイペースである程度追わないと、どんどん離れていくと思っていました。やっぱり有力校、優勝を狙うチームは前に出たがらないと思ったので、自分がレースをハイペースに持ち込もうかなと思って前に出たんです」 最初は抜け出すつもりはなく、集団で追いかけるつもりだった。しかし、3.5km付近でついてきたのは専大の新井友裕(3年)だけ。その新井も次第に離れていった。 だが、沿道の声で足音がかき消されていたため、片川はその事実に気づかない。5km手前の右折するタイミングで先頭を譲ろうと後ろを振り向く。すると、背後には誰もおらず、そこで初めて単独走をしていることに気がついた。 「そこからはガムシャラに逃げていました」と覚悟を決めて、2番手死守に全力を尽くした。 単独走になってもペースを大きく落とすことなく、淡々と走り続ける。蒲田の時点で2位位集団と42秒差。このまま逃げ切れるかと思われたが、終盤に入って2位集団のペースが一気に上がる。 残り700m付近で2位集団に追いつかれると、反応することができずに後退。最終的には17位相当でタスキをつないだ。 「やり切れたのは間違いないです。1区の役目としては先頭から差をつけられないことだったので、悪くはなかったですけど、着差で17番だったので、『あとちょっと早かったら何位だったのにな』という欲が出てきました。悔しさもありましたけど、『もっといけたよな』というのはありました」 力を出し切りながらも悔いも残った最初で最後の箱根。ただ、一人で走ったからこそ得られたものもあったと片川は語る。他大学のファンの声援を感じた
「一人じゃなかったら応援してもらえないと思うんですよ。やっぱり、青学、駒澤、國學院とか、そういうところを一番見たがる観戦者が多いと思うので。学生連合はオープン参加なので、応援してもらえるのは本当に限られた人だけだったと思っていました」 一人で走っていた分、他大学のファンの声援も片川に向けられた。単独走になったのは偶然とはいえ、勇気を持って飛び出したからこそ、感じることができた喜びである。 「一人で飛び出した時に、青学や駒澤のタオルを持っている人でも学生連合の応援してくれたりとか、そういうのがあったので、飛び出して良かったなと思いました。一人だったら絶対に応援はないんだろうなと思っていたので、それは本当にうれしかったです」 片川は兵庫県川辺郡猪名川町出身。猪名川中で陸上を始め、高校は兵庫の名門・報徳学園に進んだ。しかし、高校3年になるまでは5000mで15分を切れず、「陸上で大学に行くことは無理だろうな」と思っていたという。 そんななか、3年生の時に新型コロナウイルスが流行。緊急事態宣言が出て一人で練習している間に力をつけ、12月には14分26秒95まで記録を伸ばした。 関東の大学で競技を続けることを決意し、指定校推薦で亜細亜大に進学。大学の同期は入寮するにあたっては当時の佐藤信之監督に直接電話をして許可を得たという。 覚悟を持って進学した片川は大学4年間で急成長。ハーフマラソン(1時間2分6秒)、20km(58分48秒)の亜細亜大記録、5000m(13分41秒72)と10000m(28分11秒20)の亜細亜大日本人最高記録を立て続けに更新するまでになった。 昨年10月の予選会では個人79位に入り、初めての関東学生連合入り。当初は補欠登録だったが、当日変更で1区に入り、一度切りの箱根駅伝を走り切った。 卒業後は旭化成で競技を続ける。今年のニューイヤー駅伝を制した名門チームで揉まれ、さらなる飛躍を期す。 [caption id="attachment_127554" align="alignnone" width="800"]
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