2024.12.25
出雲、全日本は長距離区間で粘りを
「1区しかできないと、監督も起用しにくいと思います。“自分の幅を広げたい“新しいところを見せたい”という意味を込めて、後半の単独走になる区間をあえて志願しました」
そのとおりに、福田は出雲では最長区間の6区を任された。5区で9位まで順位を落としたが、福田は区間8位で8位に上げてフィニッシュテープを切った。続く全日本は、17.6kmある7区で出番が回ってきた。チームはレース中盤で順位を落としていたが、6区の楠岡由浩(2年)が区間4位と好走。その勢いを受けて、福田はシード権圏内の8位に押し上げる活躍を見せた(区間8位)。
「どちらも前を追う展開になりました。特に全日本はシード権ギリギリのラインで、タスキを受けました。最初突っ込んで入って、後半粘るというレースが必要で、2つの駅伝ではそれが試されました。そういうレースができたことは大きな手応えになりました」
自身の役割を果たし、箱根に向けても好感触を得ることができた。一方で、他の強豪校のエースとの力の差を痛感したのも事実だ。
「全日本から箱根までの2ヵ月間で、まだまだやるべきことがあると実感しました。山中(博生、4年)がエースに成長し、『山中に任せればいいか』という考えになってしまいがちです。山中に任せきりではなくて、同等か、勝てるだけの力をつけて、試合で発揮しないといけません」。絶対的エースで主将の山中を生かすためにも、箱根では自らもエース級の走りを見せる覚悟だ。
そして、福田は例年は全日本の後に記録会に出場していたが、今季はレースを回避して、箱根に備えている。「毎年ここで調子を崩してしまったので、記録会でタイムを狙うのではなく、疲労を抜くことを第一に考えて、落ち着いて練習を積むという選択を取りました」と話す。
「箱根は距離が長くなるので、疲労を抜いた後にもう一度脚作りをしたり、練習量を増やしたりと、自分でできることをやってきました。出雲と全日本以上の走りができるようにがんばっています」と明かした。
全日本後の日体大長距離競技会などではチームメイトに好記録が相次いだ。箱根出走が確定していない状況だけに、チーム内の競争が激化。焦りがあったのも事実だ。
だが、福田はそんな状況をも前向きに捉えている。「逆に、そのおかげで、全日本が終わってからも、気を緩めることなく“まだまだ自分も危ないんだな”という自覚を持って練習にしっかり取り組むことができました。『あいつがあれぐらいで走れるなら、自分も』と思うこともできましたし」。気持ちを強く保ち続けた。
福田にとって箱根駅伝は、一度は諦めた夢。強豪の広島・世羅高出身だが、高校時代はケガばかりでなかなか結果を残せず、競技には見切りをつけるつもりだった。実際、卒業後には自衛隊への就職が決まっていた。ところが、進路が決まると結果が出始めた。5000mの自己ベストを14分26秒まで伸ばした。そして、密かにあこがれていた帝京大から声がかかり、競技を続けることを決めた。
過去3年間は箱根駅伝に縁がなかったが、今度はそのチャンスを逃すつもりはない。
「悔いなく終えたいというのはもちろんですが、最初で最後の箱根駅伝を走るからには、チームが勝って、個人でも勝って、良い結果で終えたい。『終わりよければ全て良し』。その言葉通りになるような結果で、箱根を終えたいなって思っています」
チーム目標は過去最高順位(4位)の更新。集大成のレースで、福田は4年分の思いを箱根路に解き放つ。
ふくだ・しょう/2002年6月9日生まれ。広島県三原市出身。広島・本郷中→広島・世羅高。5000m14分07秒96、10000m28分56秒88、ハーフ1時間2分03秒
文/和田悟志
「今年は箱根駅伝を一番重視」
確実に手が届くところにあり、しっかりとつかみ取ったはずなのに、するりとこぼれ落ちていった。それが帝京大の福田翔(4年)にとっての、これまでの箱根駅伝だった。 ハーフマラソンの帝京大記録(1時間2分03秒)保持者ながら、箱根駅伝を走ることなく福田は最終学年を迎えている。 「今年は箱根駅伝に向けて、4年間の中では一番自信を持って準備ができているところです。例年がひどすぎるんですけどね(笑)」。最初で最後となる箱根路には、万全な準備で臨むつもりだ。 2023年シーズン、福田は目覚ましい活躍を見せた。まずはシーズンに入る前の2月に丸亀ハーフで帝京大タイ記録をマーク。夏合宿前に右足首を捻挫したが、箱根予選会は不出場予定だったにもかかわらず、急ピッチで仕上げてチームトップの21位で走った。直前に新型コロナに見舞われたチームのピンチを、見事に救ってみせた。 さらに、全日本大学駅伝では1区を任され、区間9位ながらトップと11秒差でつなぎ、スターターの役割を果たした。福田が口火を切り、勢いに乗ったチームは序盤を上位で進めた。「この2つの大会で、自分がやってきたことをしっかり出すことができて、主力としての自覚を持つことができました」。 箱根駅伝でも活躍が期待され、福田自身も会心の走りを披露するつもりだった。しかし、箱根の直前に調子を落とし、前年に続き、またしても10人の出走メンバーには入ることができなかった。 そして、大学ラストイヤーを迎えた。「今年は箱根駅伝を一番重視していきたいと思っています」。そう意気込んだものの、2月の青梅マラソン後にケガをし、翌月の日本学生ハーフを回避。5月の関東インカレにも出場することができなかった。 「関東インカレは間に合わせようと思えば間に合ったのですが、全日本選考会もあったので、そっちに合わせました」。その全日本選考会でようやく復帰し、2年連続で1組を任され11着で走り切る。チームの本大会出場に貢献した。 夏合宿もしっかりとこなし、例年以上に“戦える”という手応えをつかみ、駅伝シーズンを迎えた。 福田は、昨季の全日本で見せたように、箱根駅伝でも1区を希望している。だが、出雲駅伝の前に中野孝行監督に「出雲ではどこを走りたい?」と聞かれた時には、1区の他に「6区(アンカー)をやってみたい」という意思を伝えた。出雲、全日本は長距離区間で粘りを
「1区しかできないと、監督も起用しにくいと思います。“自分の幅を広げたい“新しいところを見せたい”という意味を込めて、後半の単独走になる区間をあえて志願しました」 そのとおりに、福田は出雲では最長区間の6区を任された。5区で9位まで順位を落としたが、福田は区間8位で8位に上げてフィニッシュテープを切った。続く全日本は、17.6kmある7区で出番が回ってきた。チームはレース中盤で順位を落としていたが、6区の楠岡由浩(2年)が区間4位と好走。その勢いを受けて、福田はシード権圏内の8位に押し上げる活躍を見せた(区間8位)。 「どちらも前を追う展開になりました。特に全日本はシード権ギリギリのラインで、タスキを受けました。最初突っ込んで入って、後半粘るというレースが必要で、2つの駅伝ではそれが試されました。そういうレースができたことは大きな手応えになりました」 自身の役割を果たし、箱根に向けても好感触を得ることができた。一方で、他の強豪校のエースとの力の差を痛感したのも事実だ。 「全日本から箱根までの2ヵ月間で、まだまだやるべきことがあると実感しました。山中(博生、4年)がエースに成長し、『山中に任せればいいか』という考えになってしまいがちです。山中に任せきりではなくて、同等か、勝てるだけの力をつけて、試合で発揮しないといけません」。絶対的エースで主将の山中を生かすためにも、箱根では自らもエース級の走りを見せる覚悟だ。 そして、福田は例年は全日本の後に記録会に出場していたが、今季はレースを回避して、箱根に備えている。「毎年ここで調子を崩してしまったので、記録会でタイムを狙うのではなく、疲労を抜くことを第一に考えて、落ち着いて練習を積むという選択を取りました」と話す。 「箱根は距離が長くなるので、疲労を抜いた後にもう一度脚作りをしたり、練習量を増やしたりと、自分でできることをやってきました。出雲と全日本以上の走りができるようにがんばっています」と明かした。 全日本後の日体大長距離競技会などではチームメイトに好記録が相次いだ。箱根出走が確定していない状況だけに、チーム内の競争が激化。焦りがあったのも事実だ。 だが、福田はそんな状況をも前向きに捉えている。「逆に、そのおかげで、全日本が終わってからも、気を緩めることなく“まだまだ自分も危ないんだな”という自覚を持って練習にしっかり取り組むことができました。『あいつがあれぐらいで走れるなら、自分も』と思うこともできましたし」。気持ちを強く保ち続けた。 福田にとって箱根駅伝は、一度は諦めた夢。強豪の広島・世羅高出身だが、高校時代はケガばかりでなかなか結果を残せず、競技には見切りをつけるつもりだった。実際、卒業後には自衛隊への就職が決まっていた。ところが、進路が決まると結果が出始めた。5000mの自己ベストを14分26秒まで伸ばした。そして、密かにあこがれていた帝京大から声がかかり、競技を続けることを決めた。 過去3年間は箱根駅伝に縁がなかったが、今度はそのチャンスを逃すつもりはない。 「悔いなく終えたいというのはもちろんですが、最初で最後の箱根駅伝を走るからには、チームが勝って、個人でも勝って、良い結果で終えたい。『終わりよければ全て良し』。その言葉通りになるような結果で、箱根を終えたいなって思っています」 チーム目標は過去最高順位(4位)の更新。集大成のレースで、福田は4年分の思いを箱根路に解き放つ。 [caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"]
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.10.21
東京世界陸上サブトラックからの選手輸送「遅延ゼロ」分単位で計画「円滑に進められた」
2025.10.21
東京世界陸上の成功を報告「観客の熱狂が選手の力引き出した」入場者数過去最多約62万人
-
2025.10.21
2025.10.18
【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/個人成績(2025年10月18日)
2025.10.18
【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/チーム総合(2025年10月18日)
-
2025.10.18
2025.10.18
【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/個人成績(2025年10月18日)
-
2025.10.18
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.10.21
【プレゼント】保温性に優れたZAMSTの「アームスリーブWARM EDITION」/11月号
世界と戦うトップアスリートも愛用するサポート・ケア製品ブランド「ZAMST(ザムスト)」を展開する日本シグマックス株式会社。 同社から発売中の寒い時期でも快適にスポーツを行うことができるよう保温性に優れ、手首から上腕にか […]
2025.10.21
東京世界陸上サブトラックからの選手輸送「遅延ゼロ」分単位で計画「円滑に進められた」
公益財団法人東京2025世界陸上財団は10月21日、第31回理事会を開き、大会の開催結果について報告したあと、報道陣への記者ブリーフィングを開いた。 9月13日から21日まで、東京・国立競技場をメイン会場に開かれた世界選 […]
2025.10.21
東京世界陸上の成功を報告「観客の熱狂が選手の力引き出した」入場者数過去最多約62万人
公益財団法人東京2025世界陸上財団は10月21日、第31回理事会を開き、大会の開催結果について報告した。 9月13日から21日まで、東京・国立競技場をメイン会場に開かれた世界選手権。参加選手数は193の国と地域・難民選 […]
2025.10.21
箱根駅伝「関東学生連合チーム」選出は総合順位つかずとも選出 予選会中継時情報の訂正と謝罪
一般社団法人関東学生陸上競技連盟は10月20日、日本テレビで放送された第102回箱根駅伝予選会の中継において、関東学生連合チームの選出方法についての解説で誤りがあったといして訂正を発表した。 関東学生連合チームは箱根駅伝 […]
2025.10.20
デュプランティス、フルラーニ、オールマンらが候補に!年間最優秀選手フィールド部門のノミネート男女各5名が発表
ワールド・アスリート・オブ・ザ・イヤーのフィールド候補選手 男子 アルマンド・デュプランティス(スウェーデン) 棒高跳 世界選手権優勝、世界記録4度更新、ダイヤモンドリーグ優勝 マッティア・フルラーニ(イタリア) 走幅跳 […]
Latest Issue
最新号

2025年11月号 (10月14日発売)
東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望