HOME 学生長距離

2024.12.23

箱根駅伝Stories/関東学生連合・古川大晃 自身3度目の選出で初の出走へ「夢の舞台を最高のかたちで」
箱根駅伝Stories/関東学生連合・古川大晃 自身3度目の選出で初の出走へ「夢の舞台を最高のかたちで」

自身3度目の関東学生連合チームに選ばれ、初の出走を目指す古川大晃(東大院)

新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。

研究やレースと併行して練習会に

29歳となった古川大晃(東大院D4)が、自身3度目の関東学生連合チームに選出された。悲願の箱根路出走を目指している。

2021年4月。古川は九州から上京した。同年5月、初めての関東インカレ(3部)で5000mと10000mに出場。10000mでは現在の自己ベストとなる29分08秒79をマークした。

広告の下にコンテンツが続きます

このレースを見ていた第81回大会に関東学連選抜で8区10位の松本翔さんが、古川に「一緒に練習しないか?」と連絡を取った。松本さんは古川と同じ九州の出身。宮崎・小林高から東大に入り、第60回大会に大学として出場以来、21年ぶりに東大生として箱根路を走った。

松本さんは現在「Team M×K」という市民ランナー向けチームを主宰し、都内で練習会や記録会を開催。練習会ではA~Eと走力別にグループ分けし、フルマラソン2時間20分を切るレベルのランナーがペースメイクする。また、ペーサー同士も練習を重ね、松本さんを含め仕事をしながら記録向上を目指している。

古川は直接連絡をくれた松本さんに恐縮しつつ、「走りながらアルバイトもでき、大学の本練習に加えて距離も稼げる」。この4年間研究やレースの合間で、練習会のペーサーを務めてきた。参加者たちには人柄とともに好評だ。

「市民ランナーの方々は仕事の傍ら、本当に好きで練習に来ています。中にはかなりの距離を踏まれている方も。その姿勢が良いですよね」。自らが競技を続けるモチベーションにもつながり、陸上競技者をテーマとしている自身の博士論文の実践の場の一つとしても、学びのある機会になってきたという。

熊本県八代市生まれ。子どもの頃から長距離走が得意。箱根駅伝はお正月の家族団らんの場で、「あの舞台で走りたい」と思うのは自然な流れだった。

熊本・八代高時代の5000mベストは県総体で出した15分05秒41。「何としてでも箱根駅伝に出られる大学に行きたかったです」と振り返る。学費や寮費を補助する関東の大学からの勧誘もあったが、家族や先生との激論のすえ、一浪して地元の熊本大に進む。

熊本大、そして九大院時代に出場した九州学生駅伝対校選手権(島原駅伝)では、上り区間の4区(9.38km)で5年連続区間賞。同区間は、箱根5区の宮ノ下付近の最大斜度に近い激坂が続く難コースだ。九大院時代はトラックでも5000m14分04秒08、10000m29分22秒33まで記録を短縮している。

新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。

研究やレースと併行して練習会に

29歳となった古川大晃(東大院D4)が、自身3度目の関東学生連合チームに選出された。悲願の箱根路出走を目指している。 2021年4月。古川は九州から上京した。同年5月、初めての関東インカレ(3部)で5000mと10000mに出場。10000mでは現在の自己ベストとなる29分08秒79をマークした。 このレースを見ていた第81回大会に関東学連選抜で8区10位の松本翔さんが、古川に「一緒に練習しないか?」と連絡を取った。松本さんは古川と同じ九州の出身。宮崎・小林高から東大に入り、第60回大会に大学として出場以来、21年ぶりに東大生として箱根路を走った。 松本さんは現在「Team M×K」という市民ランナー向けチームを主宰し、都内で練習会や記録会を開催。練習会ではA~Eと走力別にグループ分けし、フルマラソン2時間20分を切るレベルのランナーがペースメイクする。また、ペーサー同士も練習を重ね、松本さんを含め仕事をしながら記録向上を目指している。 古川は直接連絡をくれた松本さんに恐縮しつつ、「走りながらアルバイトもでき、大学の本練習に加えて距離も稼げる」。この4年間研究やレースの合間で、練習会のペーサーを務めてきた。参加者たちには人柄とともに好評だ。 「市民ランナーの方々は仕事の傍ら、本当に好きで練習に来ています。中にはかなりの距離を踏まれている方も。その姿勢が良いですよね」。自らが競技を続けるモチベーションにもつながり、陸上競技者をテーマとしている自身の博士論文の実践の場の一つとしても、学びのある機会になってきたという。 熊本県八代市生まれ。子どもの頃から長距離走が得意。箱根駅伝はお正月の家族団らんの場で、「あの舞台で走りたい」と思うのは自然な流れだった。 熊本・八代高時代の5000mベストは県総体で出した15分05秒41。「何としてでも箱根駅伝に出られる大学に行きたかったです」と振り返る。学費や寮費を補助する関東の大学からの勧誘もあったが、家族や先生との激論のすえ、一浪して地元の熊本大に進む。 熊本大、そして九大院時代に出場した九州学生駅伝対校選手権(島原駅伝)では、上り区間の4区(9.38km)で5年連続区間賞。同区間は、箱根5区の宮ノ下付近の最大斜度に近い激坂が続く難コースだ。九大院時代はトラックでも5000m14分04秒08、10000m29分22秒33まで記録を短縮している。

感じた箱根駅伝の「熾烈さ」

東大院の博士課程に進んだ後は箱根駅伝予選会で好走し、1年時と2年時に関東学生連合チームに選ばれた。 出走こそならなかったが、帯同して感じたのは箱根駅伝の「熾烈さ」だった。「予選会で上位の選手が集まり、10000m28分台を持っていても、実際に走ると区間下位に沈んでしまっていました」。連合チームの厳しさに打ちひしがれた。 加えて3年時の100回大会では記念大会ということもあり、連合チームが編成されなかった。連合チームの在り方について、関東学連に働きかけもした。心が折れかかったときに、救われるきっかけとなったのが秋吉拓真(東大3)の存在だ。 兵庫県出身の秋吉も箱根駅伝出場へ、パッションは熱かった。古川はこれまで自分より速いタイムを持つ部員が高校時代から含めていなかったが、昨年秋に秋吉が5000m、10000m、ハーフマラソンとも古川のタイムを抜いた。「自分も負けていられません」。 博士課程で4年目を過ごし、挑んだ今年の予選会で3度目の連合チーム入り。5番手のタイムで、出場に大きく前進した。小指徹監督(東農大監督)からは「最年長でリーダーシップを発揮してほしい」と主将に指名された。 11月の10000m記録挑戦競技会後、「10位相当。悪くても15位相当」としていた目標について、古川は小指監督から練り直しを求められた。出した答えは「8位相当」だ。 「学生連合チームは、16校分の関係者が応援しています。タスキの重みを感じながら、成績を最大化させることがチームの存在意義につながります」。過去2度メンバー入りしたことで感じた本戦の高い壁……。目標の上方修正は本気度の表れだ。 来年度からは京都の大学で博士研究員になる予定だ。「東京での4年間、多くの出会いがあり、いろんなところに練習のモチベーションとなる源泉がありました」。高校生の時から出たかった箱根駅伝。「偉大な大会。不思議な縁で、何となく強く望んでいたら、いつの間にか巡り巡ってきました。夢の舞台を最高のかたちで終われるよう、いい走りが本番できたらなと思います」。 学生生活“10年目”のチャレンジが、いよいよクライマックスを迎える。 [caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"] ともに出走を目指す秋吉拓真(東大)と古川大晃[/caption] ふるかわ・ひろあき/1995年10月9日生まれ。熊本県八代市出身。熊本・八代六中→熊本・八代高→熊本大→九大院。5000m14分03秒20、10000m29分08秒79、ハーフ1時間4分10秒 文/荒井寛太

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.11.15

仙台育英高・長森結愛が3000m高1歴代2位の9分04秒77! 米澤奈々香 4年ぶり自己新の5000m15分26秒64/日体大長距離競技会

11月15日、神奈川横浜市の日体大健志台陸上競技場で第324回日体大長距離競技会兼第18回NITTAIDAII Challenge Gamesが行われ、NCG女子3000mでは高校1年生の長森結愛(仙台育英高・宮城)が留 […]

NEWS 好調の楠岡由浩が1万m27分52秒09 帝京大初27分台! 高1のビリスが27分33秒99のU18世界歴代5位/日体大長距離競技会

2025.11.15

好調の楠岡由浩が1万m27分52秒09 帝京大初27分台! 高1のビリスが27分33秒99のU18世界歴代5位/日体大長距離競技会

11月15日、神奈川横浜市の日体大健志台陸上競技場で第324回日体大長距離競技会兼第18回NITTAIDAII Challenge Gamesが行われ、NCG男子10000mでは楠岡由浩(帝京大)が27分52秒09の自己 […]

NEWS 男子は宮崎日大が大会初V 飯塚が初全国 女子は神村学園がV9!北九州市立、鹿児島も都大路決める/全九州高校駅伝

2025.11.15

男子は宮崎日大が大会初V 飯塚が初全国 女子は神村学園がV9!北九州市立、鹿児島も都大路決める/全九州高校駅伝

全九州高校駅伝が11月15日、福岡県嘉麻市の嘉穂総合運動公園周辺コースで開催され、男子(7区間42.195km)は宮崎日大(宮崎)が2時間6分02秒で初優勝を飾った。女子(5区間21.0975km)は神村学園(鹿児島)が […]

NEWS レジェンド・金丸祐三さん、塚原直貴さんが参加! サニブラウンとともに陸上教室講師として/RIKUJOフェスティバル

2025.11.15

レジェンド・金丸祐三さん、塚原直貴さんが参加! サニブラウンとともに陸上教室講師として/RIKUJOフェスティバル

11月15日、日本陸連はRIKUJOフェスティバル(11月29日/東京・国立競技場)で実施する「RIKUJOスクール(子ども向け陸上教室)」の講師に、東京世界選手権代表のサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)とともに、 […]

NEWS 関大が56年ぶりV! 6区・嶋田匠海の区間新で逆転 2位関学大、3位大経大 オープン参加の青学大も好走/丹後大学駅伝

2025.11.15

関大が56年ぶりV! 6区・嶋田匠海の区間新で逆転 2位関学大、3位大経大 オープン参加の青学大も好走/丹後大学駅伝

◇丹後大学駅伝/第87回関西学生駅伝(11月15日/京都・宮津市民体育館~京丹後はごろも競技場着8区間74.7km) 11月15日、関西学生駅伝が行われ、関大が3時間45分55秒で56年ぶり12回目の優勝を飾った。 関大 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top