2023.12.25
“魂のタスキ”を16人に託して主務に専念
希望に燃えて入学した十文字だが、貧血もあって、1、2年目は伸び悩んだ。その中で女子実業団チームのランニングコーチになる話が浮上。酒井俊幸監督から「走るだけでなく裏方業務もできないといけない」と3年時の5月からマネージャーと兼任で競技に取り組むようになり、競技力が向上していく。
「マネージャーとして選手を観察することになって、自分の状態を客観的に見られるようになりました。それが競技力の向上につながっているなと感じています」
マネージャーを兼務しながら昨季は10月に10000mで自己ベスト(29分13秒51)を更新。箱根駅伝のエントリーメンバー16人にも名を連ねた。今季は主務となり、マネージャーを束ねる立場として多忙を極めるなかでも、夢舞台の出場を目指してきた。
「選手として使える時間は少ないですけど、何かのために、チームのために頑張れることは競技面でもプラスに働いていると思います。大変な時もありますけど、マイナスに感じたことはありません。主務になったからこそ、ここまでやってこられたかなと感じています」
主務の仕事をしながら、他の選手と同じ練習メニューをこなして、6月には5000mで14分14秒87の自己新をマーク。同月の男鹿駅伝では6区を区間2位と好走した。11月の全日本大学駅伝はエントリーメンバーの16人に選ばれている。
11月中旬の取材では、「客観的に見て、自分は16人ギリギリのところにいます。最後まであきらめないで頑張りたい。10区を走りたいという気持ちがあるので、出走を目指して、チームに貢献できるようにしたいです」と話していた。
しかし、「1時間4分台では走りたい」という11月26日の小江戸川越ハーフマラソンで1時間7分21秒に終わり、酒井監督から主務に専念するよう告げられた。
2024年1月2、3日は運営管理車に乗って、酒井監督のサポートを務める予定。鉄紺のタスキをつなぐことはできなかったが、十文字の“夢”は終わっていない。
「出雲は8位、全日本は14位と振るいませんでしたが、4年生は個々の力を持っている学年です。その力を発揮できれば、もっと上の結果がついてくる。自分たちに足りていないのは自信かなと感じています。監督を信じてやっていけば間違いなく結果につながると思っています」
“魂のタスキ”をエントリーされた16人に託した十文字。今度は選手たちが主務の期待に応える番だ。
チーム全員が鉄紺の誇りを胸に正月決戦に向かっていく。
文/酒井政人
服部勇馬にあこがれた中学時代
12月11日に行われた箱根駅伝チームエントリー記者発表会。東洋大の十文字優一(4年)にとっては忘れられない日になることだろう。 主務としてマイクを握ると、「『鉄紺の再建』をチームのテーマとして1年間練習に取り組んできました。歴代の先輩方が紡いでくれた伝統を継承し、最後まで諦めない走りを目指します」と力強く宣言したのだ。 この言葉は駅伝選手としての“決別”の意味もあった。 十文字は小学5年時に地域のランニングクラブに入会。中学は陸上部がなかったため、バレーボール部に所属しながら、クラブチームで走り続けた。その頃から「東洋大で箱根駅伝を走りたい!」という夢を抱いていたという。 「服部勇馬さん(現・トヨタ自動車)が花の2区を走ったシーンを観て、カッコいいな、と思ったんです」 岩手・専大北上高時代はエースとして活躍したが、全国高校駅伝には届かなかった。唯一、出場を果たした全国大会が3年時の都道府県駅伝。しかし、1区で区間42位と沈み、「高校時代は思ったような結果を残せませんでした。特に都道府県駅伝は悔しくて、1区で負けた選手に勝ちたい、と思ったんです」 高校卒業後は憧れていた東洋大に進学する。当時の5000mベストは14分34秒51で、同期の中では11番目だった。 「進学先の希望は東洋大1本でした。行けないなら一般就職しようと思っていたくらいです。鉄紺のウェアに感動しましたし、カッコいいなと思いましたね。着るからには結果を出さないといけない責任も感じました」“魂のタスキ”を16人に託して主務に専念
希望に燃えて入学した十文字だが、貧血もあって、1、2年目は伸び悩んだ。その中で女子実業団チームのランニングコーチになる話が浮上。酒井俊幸監督から「走るだけでなく裏方業務もできないといけない」と3年時の5月からマネージャーと兼任で競技に取り組むようになり、競技力が向上していく。 「マネージャーとして選手を観察することになって、自分の状態を客観的に見られるようになりました。それが競技力の向上につながっているなと感じています」 マネージャーを兼務しながら昨季は10月に10000mで自己ベスト(29分13秒51)を更新。箱根駅伝のエントリーメンバー16人にも名を連ねた。今季は主務となり、マネージャーを束ねる立場として多忙を極めるなかでも、夢舞台の出場を目指してきた。 「選手として使える時間は少ないですけど、何かのために、チームのために頑張れることは競技面でもプラスに働いていると思います。大変な時もありますけど、マイナスに感じたことはありません。主務になったからこそ、ここまでやってこられたかなと感じています」 主務の仕事をしながら、他の選手と同じ練習メニューをこなして、6月には5000mで14分14秒87の自己新をマーク。同月の男鹿駅伝では6区を区間2位と好走した。11月の全日本大学駅伝はエントリーメンバーの16人に選ばれている。 11月中旬の取材では、「客観的に見て、自分は16人ギリギリのところにいます。最後まであきらめないで頑張りたい。10区を走りたいという気持ちがあるので、出走を目指して、チームに貢献できるようにしたいです」と話していた。 しかし、「1時間4分台では走りたい」という11月26日の小江戸川越ハーフマラソンで1時間7分21秒に終わり、酒井監督から主務に専念するよう告げられた。 2024年1月2、3日は運営管理車に乗って、酒井監督のサポートを務める予定。鉄紺のタスキをつなぐことはできなかったが、十文字の“夢”は終わっていない。 「出雲は8位、全日本は14位と振るいませんでしたが、4年生は個々の力を持っている学年です。その力を発揮できれば、もっと上の結果がついてくる。自分たちに足りていないのは自信かなと感じています。監督を信じてやっていけば間違いなく結果につながると思っています」 “魂のタスキ”をエントリーされた16人に託した十文字。今度は選手たちが主務の期待に応える番だ。 チーム全員が鉄紺の誇りを胸に正月決戦に向かっていく。 [caption id="attachment_124467" align="alignnone" width="800"]
最後まで選手として箱根駅伝出走を目指した十文字優一[/caption]
文/酒井政人 RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.12.07
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.12.11
タイの19歳ブーンソンが100m9秒94!!!日本記録上回るアジア歴代3位、U20世界選手権2大会ファイナル
【動画】タイの19歳ブーンソンが衝撃の9秒94!!!走りをチェック! 2レーンがブーンソン
2025.12.11
青学大・原晋監督が最大のライバルに駒大 「勝つ知識、ノウハウを兼ね備える」 箱根V3へ不安材料は「経験者が少ない」
第102回箱根駅伝で3連覇を狙う青学大が、都内の青山キャンパスで壮行会を開き、原晋監督やエントリー選手たちが登壇した。 壮行会後に記者会見が行われ、一番のライバル校を問われた原監督は「一番はやはり駒澤大学です。ここ11年 […]
2025.12.11
箱根駅伝V3へ青学大が壮行会 主将・黒田朝日「新たな歴史を作る舞台」 2年連続区間賞・塩出翔太「良い報告ができるように」
第102回箱根駅伝で3連覇を狙う青学大が、都内の青山キャンパスで壮行会を開き、原晋監督やエントリー選手たちが登壇した。 お昼休みで多くの学生や教職員が集まるなか、原監督は「シーズン当初は新体制となり、学生たちには『勝つ確 […]
2025.12.10
【箱根駅伝エントリー】登録選手336人が決定 最多出身高は13年ぶりの駅伝名門校! 都道府県別では埼玉が2年連続トップ
箱根駅伝エントリー選手の出身高校別人数 13人 佐久長聖(長野) 小池莉希(創価大3)、吉岡大翔(順大3)、遠藤大成(青学大2)、山口竣平(早大2)、永原颯磨(順大2)、野崎健太朗(順大2)、遠藤優裕(神奈川大2)、吉岡 […]
Latest Issue
最新号
2025年12月号 (11月14日発売)
EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選
Follow-up Tokyo 2025