2023.10.30
全日本、箱根でも過去最高順位を!
強い4年生の存在が強みであるがゆえに、山森は3年生の時にある不安を覚えた。「この先輩たちが来年いなくなる。自分たちの代が強くならないと……」。
しかし、なかなか結果に結びつかず、榎木和貴監督からは厳しい言葉も投げかけられた。
「走って結果を出そう!」
個性は強く、自立しているという今年の4年生。強いチームを目指し、学年ミーティングを重ねた。
山森の不安を吹き飛ばしたのは、1年生の活躍だった。春先から好調だった小池が7月に5000mで13分54秒27をマークすると、9月には今季大学1年最高タイムとなる13分34秒82と急成長。織橋巧も7月に13分52秒71をたたき出した。「2人の勢いがすごい。それにつられるようにみんな上がってきた。チームが活性化しています」と山森は後輩の活躍を頼もしく感じている。
出雲では5区の吉田響、6区の吉田凌、また日本学生ハーフ5位の小暮栄輝ら3年生も充実。下級生に奮起したかのように、前回箱根8区区間9位の桑田大輔(4年)が10月に10000m28分59秒08と故障から復帰した。志村健太、石井大揮(ともに4年)、若狭凜太郎(3年)も東京レガシーハーフで1時間3分台と好走している。
山森は他大学のエースたちをあまり意識しないという。昨年まではフィリップ・ムルワ(現・GMOインターネットグループ)、そして現在は10000m27分50秒66のカミナと、同28分05秒98のスティーブン・ムチーニ(1年)に日々の練習で食らいつけば、おのずと他大学のエースと戦える力を身につけられるからだ。「彼らがいるから、もっと上を目指せる」。静かなる闘志を燃やしながらトレーニングを重ねている。
昨年の全日本大学駅伝、2区の葛西が駒大の佐藤圭汰(現2年)と首位争いを演じ、トップでタスキリレーしたシーンに山森は胸が熱くなった。「あの葛西さんのように、後半区間の選手や後輩たちが『がんばろう』と思えるような走りをしたい」。強い先輩たちのような背中を、山森も見せたいと思っている。
全日本、箱根は大学史上最高順位を目指すことになる。榎木監督は夏合宿で「次のエースが出て来ないといけない、という状況を各選手が理解したチーム作りができている」と手応えを口にしていた。
まずは出雲で区間賞を取って存在感を示した山森。エースの座を下級生に渡すわけにはいかない。

23年出雲駅伝で過去最高の2位に躍進した創価大
◎やまもり・りゅうき/2001年8月19日生まれ、福井県鯖江市出身。鯖江中→鯖江高→創価大。自己記録5000m13分49秒59、10000m28分27秒21、ハーフ1時間3分15秒。
文/荒井寛太
出雲駅伝4区で区間賞
10月9日、出雲駅伝の第4中継所。トップを走る駒大から45秒後の2位でやってきたのが創価大の山森龍暁(4年)だった。 3区でリーキー・カミナ(3年)が5位から2位へ順位を上げ、山森が走り出したのは駒大から57秒後。4区の山森は見えない先頭を目指して走り出した。 創価大のエントリー選手でただ1人の4年生。今季は5000m13分49秒59、10000m28分27秒21、ハーフマラソン1時間3分15秒と自己新を連発し、走りで後輩へ背中を見せる立場だ。 箱根駅伝で6区区間賞を獲得した駒大・伊藤蒼唯(2年)を相手に6.2kmで12秒差を詰めて5区の吉田響(3年)へタスキリレー。自身初の区間賞を獲得した。 「1区の石丸(惇那、2年)、2区の小池(莉希、1年)、3区のリーキーが良い流れで来てくれました。その流れを崩さず5区の響へタスキを渡せました。4年生が自分しかおらず、責任を果たそうと思って走りました。最低限の仕事はできたと思います」 昨年は全日本大学駅伝のアンカー8区(19.7km)で三大駅伝初出場を果たしたものの、59分08秒で区間11位。続く今年の箱根駅伝では3区(21.4km)を走り、1時間2分58秒で区間14位。「2つの駅伝で苦戦していたので、今回の区間賞は自信になります」。 今年度の創価大の目標は「学生三大駅伝3位以上」。まず1つ目はクリアし、「全日本、箱根も区間賞争いに加わりたい」と意気込む。最終学年の集大成に向け、好スタートを切った。福田悠一、嶋津雄大、葛西潤……強い先輩たちの背中を追って成長
山森は福井県鯖江市出身。鯖江中では県大会止まりだったものの、鯖江高に進むと急成長。2年時に3000m障害で三重インターハイに出場した。そのレースでは予選12着と決勝には進めなかったが「この時のレースが一番印象に残っています」と振り返る。高3時は同じ3000m障害で県大会4位に入ったものの、北信越大会では予選落ちに終わった。 創価大の瀬上雄然前監督(現・スカウト編成部長)からの熱心な勧誘を受け、2020年4月に入学。その直前の箱根駅伝で創価大は総合9位に入り、初のシード権獲得を果たしている。 高校時代に全国大会で目立つ成績を残せなかったが、箱根のシード権獲得に貢献しようと、強い上級生たちに練習で必死に食らいついた。3学年先輩には原富慶季や福田悠一らがおり、身長174cm、体重52kgと長身で線が細かった山森は2人から筋力トレーニングも教わりながら、箱根は1年時からエントリーメンバー入りを果たしている(未出走)。 その1年時の箱根でチームは往路優勝&総合2位と大躍進。その後もチームは毎年力をつけ、2学年上の嶋津雄大(現・GMOインターネットグループ)や三上雄太(現・中国電力)、1学年上の葛西潤(現・旭化成)、横山魁哉(現・トーエネック)、緒方貴典(現・トヨタ自動車九州)など、それぞれの代が4年生としてチームの核となり、結果を残してきた。 山森もがむしゃらに上級生の背中を追いかけ続け、今年は前例に違わず最上級生として、チームの主軸として、各レースで存在感を発揮している。 [caption id="attachment_118308" align="alignnone" width="800"]
全日本、箱根でも過去最高順位を!
強い4年生の存在が強みであるがゆえに、山森は3年生の時にある不安を覚えた。「この先輩たちが来年いなくなる。自分たちの代が強くならないと……」。 しかし、なかなか結果に結びつかず、榎木和貴監督からは厳しい言葉も投げかけられた。 「走って結果を出そう!」 個性は強く、自立しているという今年の4年生。強いチームを目指し、学年ミーティングを重ねた。 山森の不安を吹き飛ばしたのは、1年生の活躍だった。春先から好調だった小池が7月に5000mで13分54秒27をマークすると、9月には今季大学1年最高タイムとなる13分34秒82と急成長。織橋巧も7月に13分52秒71をたたき出した。「2人の勢いがすごい。それにつられるようにみんな上がってきた。チームが活性化しています」と山森は後輩の活躍を頼もしく感じている。 出雲では5区の吉田響、6区の吉田凌、また日本学生ハーフ5位の小暮栄輝ら3年生も充実。下級生に奮起したかのように、前回箱根8区区間9位の桑田大輔(4年)が10月に10000m28分59秒08と故障から復帰した。志村健太、石井大揮(ともに4年)、若狭凜太郎(3年)も東京レガシーハーフで1時間3分台と好走している。 山森は他大学のエースたちをあまり意識しないという。昨年まではフィリップ・ムルワ(現・GMOインターネットグループ)、そして現在は10000m27分50秒66のカミナと、同28分05秒98のスティーブン・ムチーニ(1年)に日々の練習で食らいつけば、おのずと他大学のエースと戦える力を身につけられるからだ。「彼らがいるから、もっと上を目指せる」。静かなる闘志を燃やしながらトレーニングを重ねている。 昨年の全日本大学駅伝、2区の葛西が駒大の佐藤圭汰(現2年)と首位争いを演じ、トップでタスキリレーしたシーンに山森は胸が熱くなった。「あの葛西さんのように、後半区間の選手や後輩たちが『がんばろう』と思えるような走りをしたい」。強い先輩たちのような背中を、山森も見せたいと思っている。 全日本、箱根は大学史上最高順位を目指すことになる。榎木監督は夏合宿で「次のエースが出て来ないといけない、という状況を各選手が理解したチーム作りができている」と手応えを口にしていた。 まずは出雲で区間賞を取って存在感を示した山森。エースの座を下級生に渡すわけにはいかない。 [caption id="attachment_118309" align="alignnone" width="800"]
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