HOME 国内、世界陸上、日本代表
田中希実5000m8位入賞!「世界トップの仲間入りできた」記録、結果以上に得た確かな自信/世界陸上
田中希実5000m8位入賞!「世界トップの仲間入りできた」記録、結果以上に得た確かな自信/世界陸上

女子5000m8位の田中希実。世界の名だたるランナーたちに引けを取らない走りを見せた

◇ブダペスト世界陸上(8月19日~27日/ハンガリー・ブダペスト)8日目

ブダペスト世界陸上8日目のアフタヌーンセッションが行われ、女子5000mで田中希実(New Balance)が8位入賞。この種目の入賞は1997年アテネ五輪の弘山晴美以来、26年ぶりとなった。

14分37秒98の日本記録を樹立した予選とは、また違った“凄み”が凝縮された5000mだった。「予選のように最初から誰かがハイペースで行くかもしれないし、去年のオレゴンのように超スローペースかもしれない」。その両方を想定したが、実際には「こんなに変化に富んだ展開になるとは思わなかった」と苦笑いする。

広告の下にコンテンツが続きます

上がったと思ったら一気にスローに下がる。そうしたなか、「本当に動くのはラスト」とじっくり様子をうかがいながら、「団子になったら消耗になる」と、1500mで準決勝敗退の教訓を生かしてレースを進める。

アフリカ勢の揺さぶりにもしっかり対応すると、常に入賞ラインを見据える田中。ラスト勝負でメダル争いにはつけなかったが、磨いてきたスパートは世界に通用した。一時は6位にまで浮上。ラストかわされたことに「抜かれながら何とか……というのは東京五輪と似たシチュエーション。もっと最後まで追い上げていくようなラストの上がり方をしたかった」と言うものの、最後まで粘り切って8位入賞を死守した。

1500m準決勝敗退の後は「むなしい」気持ちばかりが募った。「5000mを走っても無駄なんじゃないか」とさえ思ったという。そんな田中に対し、父の健智コーチとも衝突し、「チームを解散する」と突き放された。「雰囲気も悪かったと思いますし、その発端は自分。自業自得を繰り返した」。

ただ、同行してくれたマネージャーやチームスタッフ、日本にいる友人に連絡しながら消化していき、「最後は父が手を差し伸べてくれた」。そこから、覚醒し、予選の日本新、そして決勝の熱走へ。

「実力を自分で信じられないことが続いていましたが、今回はそこを乗り越えての結果。本当の意味で世界トップの仲間入りができたんじゃないかなと思います。2度と忘れられない経験。本当に自分が成長するきっかけになった大会になりました」

田中の競技人生にとって、この数日間は大きなターニングポイントになりそうだ。

「パリ五輪でも2種目で狙いたいと思っているので、今度こそ2種目とも決勝に残って、自分でレースを動かしていけるような強さを持って戻ってきたい」

あれほど走ることが好きで、「昨日の自分より速くなりたい」と駆け抜けてきた田中が、昨年のオレゴン、そして今年の春は、何度も「楽しめていない」とこぼしていた。

記録も、結果も得たブダペスト。「今日はすごく楽しめました」。少しの悔しさと充実感たっぷりの表情で2023年の夏は幕を閉じた。

◇ブダペスト世界陸上(8月19日~27日/ハンガリー・ブダペスト)8日目 ブダペスト世界陸上8日目のアフタヌーンセッションが行われ、女子5000mで田中希実(New Balance)が8位入賞。この種目の入賞は1997年アテネ五輪の弘山晴美以来、26年ぶりとなった。 14分37秒98の日本記録を樹立した予選とは、また違った“凄み”が凝縮された5000mだった。「予選のように最初から誰かがハイペースで行くかもしれないし、去年のオレゴンのように超スローペースかもしれない」。その両方を想定したが、実際には「こんなに変化に富んだ展開になるとは思わなかった」と苦笑いする。 上がったと思ったら一気にスローに下がる。そうしたなか、「本当に動くのはラスト」とじっくり様子をうかがいながら、「団子になったら消耗になる」と、1500mで準決勝敗退の教訓を生かしてレースを進める。 アフリカ勢の揺さぶりにもしっかり対応すると、常に入賞ラインを見据える田中。ラスト勝負でメダル争いにはつけなかったが、磨いてきたスパートは世界に通用した。一時は6位にまで浮上。ラストかわされたことに「抜かれながら何とか……というのは東京五輪と似たシチュエーション。もっと最後まで追い上げていくようなラストの上がり方をしたかった」と言うものの、最後まで粘り切って8位入賞を死守した。 1500m準決勝敗退の後は「むなしい」気持ちばかりが募った。「5000mを走っても無駄なんじゃないか」とさえ思ったという。そんな田中に対し、父の健智コーチとも衝突し、「チームを解散する」と突き放された。「雰囲気も悪かったと思いますし、その発端は自分。自業自得を繰り返した」。 ただ、同行してくれたマネージャーやチームスタッフ、日本にいる友人に連絡しながら消化していき、「最後は父が手を差し伸べてくれた」。そこから、覚醒し、予選の日本新、そして決勝の熱走へ。 「実力を自分で信じられないことが続いていましたが、今回はそこを乗り越えての結果。本当の意味で世界トップの仲間入りができたんじゃないかなと思います。2度と忘れられない経験。本当に自分が成長するきっかけになった大会になりました」 田中の競技人生にとって、この数日間は大きなターニングポイントになりそうだ。 「パリ五輪でも2種目で狙いたいと思っているので、今度こそ2種目とも決勝に残って、自分でレースを動かしていけるような強さを持って戻ってきたい」 あれほど走ることが好きで、「昨日の自分より速くなりたい」と駆け抜けてきた田中が、昨年のオレゴン、そして今年の春は、何度も「楽しめていない」とこぼしていた。 記録も、結果も得たブダペスト。「今日はすごく楽しめました」。少しの悔しさと充実感たっぷりの表情で2023年の夏は幕を閉じた。

【動画】田中希実 日本人26年ぶりの入賞!女子5000mダイジェスト

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.11.24

女子はレムンゴルが2連覇達成 男子はサミュエルがV/全米学生クロカン

11月22日、米国ミズーリ州コロンビアで全米学生クロスカントリー選手権が行われ、女子(6km)はD.レムンゴル(アラバマ大/ケニア)が18分25秒4で連覇を飾った。 レムンゴルはケニア出身の23歳。23年秋にアラバマ大に […]

NEWS 七種競技女王・ホール NFLスター選手と婚約発表 マクローリン・レヴロンらも祝福

2025.11.24

七種競技女王・ホール NFLスター選手と婚約発表 マクローリン・レヴロンらも祝福

女子七種競技東京世界選手権金メダリストのA.ホール(米国)が婚約を自身のSNSで発表した。お相手はNFL選手でニューヨーク・ジャイアンツ所属のダリアス・スレイトンさん。「初めて出会った場所で、永遠を誓う」というテキストと […]

NEWS バットクレッティ 今季初V 男子はキプサングがツアー3勝目/WAクロカンツアー

2025.11.24

バットクレッティ 今季初V 男子はキプサングがツアー3勝目/WAクロカンツアー

11月23日、世界陸連(WA)クロスカントリーツアー・ゴールド第6戦のアタプエルカ国際クロスがスペイン・アタプエルカで行われ、女子(6.821km)はパリ五輪・東京世界選手権10000m銀メダリストのN.バットクレッティ […]

NEWS 円盤投・湯上剛輝が2大会ぶり世界一「やっと取れた」デフリンピック新の58m93

2025.11.24

円盤投・湯上剛輝が2大会ぶり世界一「やっと取れた」デフリンピック新の58m93

聴覚障害者のスポーツ国際大会、デフリンピックの陸上競技が行われ、男子円盤投の湯上剛輝(トヨタ自動車)が金メダルを獲得した。 64m48の日本記録を持ち、今年の東京世界選手権にも出場した湯上。「理想の展開としては1回目にし […]

NEWS 3区で五島莉乃と廣中璃梨佳が熱走!東京世界陸上はじめ「日本代表」たちが力走/クイーンズ駅伝

2025.11.24

3区で五島莉乃と廣中璃梨佳が熱走!東京世界陸上はじめ「日本代表」たちが力走/クイーンズ駅伝

◇第45回全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝:11月23日/宮城・松島町文化観光交流館前~弘進ゴムアスリートパーク仙台、6区間42.195km) 女子駅伝日本一を懸けた全日本実業団対抗女子駅伝が行われ、「日本代表」 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top