HOME バックナンバー
オレゴン世界選手権Interview 廣中璃梨佳 見据える場所までの道筋が見えた2度目の世界。
オレゴン世界選手権Interview 廣中璃梨佳 見据える場所までの道筋が見えた2度目の世界。

廣中璃梨佳(22年オレゴン世界選手権)

昨年の東京五輪に続いて、廣中璃梨佳(日本郵政グループ)は女子5000mと10000mの2種目で初の世界選手権代表入りを果たした。「自己ベスト更新」を目指したオレゴンでは、日本記録(14分52秒84)を持つ5000mこそ15分02秒03の予選敗退に終わったが、10000mで狙い通りの自己新となる30分39秒71(日本歴代2位)をマークした。12位で五輪に続いての入賞は果たせなかったが、大きな収穫を得たレースに。思うように走れない時期を乗り越えて立った大舞台。世界と戦えば戦うほど、もっと上へという思いは強くなる。
構成/向永拓史

初の高地合宿を経てオレゴン入り

前半シーズンを終え、廣中が走ったのは日本選手権と世界選手権だけ。レースを絞ったのではなく、春先から調子が上がらず走れなかった。シーズンイン間近の貧血が影響し、5月の日本選手権10000mはぶっつけ本番に。大きな不安を抱えながらも代表権をもぎ取った。

「元々、貧血は持っていて特に夏場はなりやすいんです。少しずつ克服できていたのですが、2020年はすごく苦しんでいました。だから、東京五輪は延期になったことで出られるようになったんです。管理栄養士さんにアドバイスをもらいながら少しずつ工夫して改善してきました。

ただ、再び今年の3月末から4月にかけて、なかなか思うように走れない日々が続きました。朝の集団走でもきつくなって、すぐに息が上がる。検査をすると貧血が発覚しました。というのも、例年2、3月は脚を痛めることが多いのですが、この冬は結構走り込めたんです。その反動だったのかなと思っています。3月までは走り込めていたので、筋力を落とさないようにバイクトレーニングで体力面を維持していました。

トラックに向けてスピードに移行する練習が積めずに、もどかしさも不安も大きかったです。5月の10000mは『自分を信じて走るだけ』と思って臨みました。まずは3位以内にしっかり入ろうということで、5000mまでは溜めて、残りの5000mでしっかり走ってラストに備える。優勝を勝ち取れたのは本当にうれしかったです」

広告の下にコンテンツが続きます

続く6月の日本選手権5000mまでは順調に練習も消化。ただ、コンディションとは「違った不安」があったという。2位に入って2種目で代表入りを決めたが、レース後の涙が印象的だった。

「髙橋(昌彦)監督とも話して、こっちもまずは3位以内に入って切符を取るのが一番だという考えでした。ただ、自分の中では2連覇や、自分らしいレースをしたいという気持ちが強かったんです。それを意識し過ぎるあまり硬くなってしまいました。レース前には一昨年の日本選手権(20年12月※田中希実と一騎打ちに敗れて東京代表即内定ならず)の悔しさを思い出して不安になりました。いろいろな葛藤があって、最終刺激でもレース中でも身体の反応として硬さが出ていたと思います」

何とか代表入りを決めた廣中は、世界選手権に向けて米国ボルダーへ飛んだ。高地合宿は初めてのこと。不安よりも「楽しみ」でいっぱいだったという。

「試合の遠征だけでなく、合宿から海外に行くのが楽しみでした。新しい場所に行くのもワクワク感があります。日程は6月下旬から7月中旬までで、そのまま世界選手権に向かいました。着いたその日と、翌日は酸素が入ってこない感覚がありました。ジョグをするだけでも頭が〝きゅ~っ〟となる感じ。でも、どんどんと慣れていきました。

ボルダーにはいろいろなコースがあるのですが、車で10分ほど行ったところの土のコースを14㎞ほど走ったり、山に向かっていく小川沿いのコースを往復したり、トラック練習は中学校の400mグラウンドを使わせてもらいました。一度だけ、さらにボルダーから1000mほど上がった標高2700 ~ 2800mの場所まで行ってポイント練習をしました。雲が本当に近くにあるんです。そこではさらに空気が薄くて酸素がなかなか入ってこない。かなりきつくてダメージがあるのですが、反面、高地では身体が軽く感じるのでスピードも出ます。ビルドアップ走などは日本にいる時よりもむしろ質の高い練習ができました」

この続きは2022年9月14日発売の『月刊陸上競技10月号』をご覧ください。

 

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する
定期購読はこちらから

昨年の東京五輪に続いて、廣中璃梨佳(日本郵政グループ)は女子5000mと10000mの2種目で初の世界選手権代表入りを果たした。「自己ベスト更新」を目指したオレゴンでは、日本記録(14分52秒84)を持つ5000mこそ15分02秒03の予選敗退に終わったが、10000mで狙い通りの自己新となる30分39秒71(日本歴代2位)をマークした。12位で五輪に続いての入賞は果たせなかったが、大きな収穫を得たレースに。思うように走れない時期を乗り越えて立った大舞台。世界と戦えば戦うほど、もっと上へという思いは強くなる。 構成/向永拓史

初の高地合宿を経てオレゴン入り

前半シーズンを終え、廣中が走ったのは日本選手権と世界選手権だけ。レースを絞ったのではなく、春先から調子が上がらず走れなかった。シーズンイン間近の貧血が影響し、5月の日本選手権10000mはぶっつけ本番に。大きな不安を抱えながらも代表権をもぎ取った。 「元々、貧血は持っていて特に夏場はなりやすいんです。少しずつ克服できていたのですが、2020年はすごく苦しんでいました。だから、東京五輪は延期になったことで出られるようになったんです。管理栄養士さんにアドバイスをもらいながら少しずつ工夫して改善してきました。 ただ、再び今年の3月末から4月にかけて、なかなか思うように走れない日々が続きました。朝の集団走でもきつくなって、すぐに息が上がる。検査をすると貧血が発覚しました。というのも、例年2、3月は脚を痛めることが多いのですが、この冬は結構走り込めたんです。その反動だったのかなと思っています。3月までは走り込めていたので、筋力を落とさないようにバイクトレーニングで体力面を維持していました。 トラックに向けてスピードに移行する練習が積めずに、もどかしさも不安も大きかったです。5月の10000mは『自分を信じて走るだけ』と思って臨みました。まずは3位以内にしっかり入ろうということで、5000mまでは溜めて、残りの5000mでしっかり走ってラストに備える。優勝を勝ち取れたのは本当にうれしかったです」 続く6月の日本選手権5000mまでは順調に練習も消化。ただ、コンディションとは「違った不安」があったという。2位に入って2種目で代表入りを決めたが、レース後の涙が印象的だった。 「髙橋(昌彦)監督とも話して、こっちもまずは3位以内に入って切符を取るのが一番だという考えでした。ただ、自分の中では2連覇や、自分らしいレースをしたいという気持ちが強かったんです。それを意識し過ぎるあまり硬くなってしまいました。レース前には一昨年の日本選手権(20年12月※田中希実と一騎打ちに敗れて東京代表即内定ならず)の悔しさを思い出して不安になりました。いろいろな葛藤があって、最終刺激でもレース中でも身体の反応として硬さが出ていたと思います」 何とか代表入りを決めた廣中は、世界選手権に向けて米国ボルダーへ飛んだ。高地合宿は初めてのこと。不安よりも「楽しみ」でいっぱいだったという。 「試合の遠征だけでなく、合宿から海外に行くのが楽しみでした。新しい場所に行くのもワクワク感があります。日程は6月下旬から7月中旬までで、そのまま世界選手権に向かいました。着いたその日と、翌日は酸素が入ってこない感覚がありました。ジョグをするだけでも頭が〝きゅ~っ〟となる感じ。でも、どんどんと慣れていきました。 ボルダーにはいろいろなコースがあるのですが、車で10分ほど行ったところの土のコースを14㎞ほど走ったり、山に向かっていく小川沿いのコースを往復したり、トラック練習は中学校の400mグラウンドを使わせてもらいました。一度だけ、さらにボルダーから1000mほど上がった標高2700 ~ 2800mの場所まで行ってポイント練習をしました。雲が本当に近くにあるんです。そこではさらに空気が薄くて酸素がなかなか入ってこない。かなりきつくてダメージがあるのですが、反面、高地では身体が軽く感じるのでスピードも出ます。ビルドアップ走などは日本にいる時よりもむしろ質の高い練習ができました」 この続きは2022年9月14日発売の『月刊陸上競技10月号』をご覧ください。  
※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する 定期購読はこちらから

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.07.15

28年ロス五輪の競技日程が決定! T&Fは7月15日~24日 競歩は27日、マラソンは29日と30日に実施

2028年に開催されるロサンゼルス五輪の組織委員会は、大会開幕まで3年となった7月14日、各競技の詳細な日程を発表した。 陸上競技については、すでに昨年6月の段階で、1972年ミュンヘン大会以降は大会後半に行われてきた従 […]

NEWS 1万mに國學院大・野中恒亨、中大・濵口大和、創価大・織橋巧、東洋大・松井海斗ら各校主軸激突/関東学連記録挑戦競技会

2025.07.15

1万mに國學院大・野中恒亨、中大・濵口大和、創価大・織橋巧、東洋大・松井海斗ら各校主軸激突/関東学連記録挑戦競技会

関東学生網走夏季記録挑戦競技会(7月20日/北海道・網走市営陸上競技場)のスタートリストが7月15日、同連盟の公式サイトで発表された。 5組で行われる男子10000mは、最終5組に各大学の主力選手が名を連ねた。國學院大か […]

NEWS 【男子棒高跳】大森蒼以(KPVC・中3埼玉) 5m00=中学歴代2位

2025.07.15

【男子棒高跳】大森蒼以(KPVC・中3埼玉) 5m00=中学歴代2位

7月5日に埼玉県越谷市で開催されたアスリートリンゲージフェスティバルの男子棒高跳で中学3年生の大森蒼以(KPVC・埼玉)が中学歴代2位の5m00をマークした。 大森は2011年3月生まれの14歳。5月には4m90を跳んで […]

NEWS DLロンドン女子5000mに田中希実がエントリー! 男子100mで再びライルズ VS テボゴ アレクナ、マフチフ、ボルらも参戦

2025.07.14

DLロンドン女子5000mに田中希実がエントリー! 男子100mで再びライルズ VS テボゴ アレクナ、マフチフ、ボルらも参戦

7月14日、ダイヤモンドリーグ(DL)第11戦のロンドン大会(英国/7月19日)のエントリーリストが発表され、女子5000mに田中希実(New Balance)が登録された。 田中はこれが今季のDL2戦目。7月上旬の日本 […]

NEWS 男子走幅跳・城山正太郎が優勝 400m佐藤風雅は45秒50の4位 世界陸上出場目指し、日本選手が欧米の競技会に出場/WAコンチネンタルツアー

2025.07.14

男子走幅跳・城山正太郎が優勝 400m佐藤風雅は45秒50の4位 世界陸上出場目指し、日本選手が欧米の競技会に出場/WAコンチネンタルツアー

7月13日に欧米各地で世界陸連(WA)コンチネンタルツアーの競技会が行われ、9月の東京世界選手権の出場を目指す日本人選手たちが奮闘した。 カナダで開催されたWAコンチネンタルツアー・シルバーのエドモントン招待では、男子走 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年8月号 (7月14日発売)

2025年8月号 (7月14日発売)

詳報!日本選手権
IH地区大会

page top