HOME ニュース、国内

2022.01.29

「あきらめる気持ちがなかったので続けてこられた」短距離女王・福島千里が現役を引退、今後は「子供たちを笑顔に」
「あきらめる気持ちがなかったので続けてこられた」短距離女王・福島千里が現役を引退、今後は「子供たちを笑顔に」


笑顔で現役引退を発表した福島千里(セイコー提供)

 

広告の下にコンテンツが続きます

遠かった日本女子短距離の「世界」との距離を、一気に縮めた偉大なスプリンター、福島千里(セイコー)が現役引退を決断した。

1月29日、オンラインで開かれた「セイコースマイルアンバサダー(スポーツ担当)」就任会見でスパイクを脱ぐことを発表した福島は、「小学校4年から陸上を始めて23年。これまで支えてくださった方々、両親をはじめ名前を上げればきりがないですが、関わってくれた方々に感謝の気持ちでいっぱい」と率直な思いを語った。

福島が成し遂げてきた偉業は、枚挙にいとまがない。

五輪には2008年北京大会で日本女子56年ぶり出場を果たすと、12年ロンドン、16年リオと3大会連続で代表に。世界選手権は09年ベルリンから4大会連続で出場し、11年テグでは100m、200mともに準決勝進出を果たした。

世界を目指して走り続けた福島にとっても、長いキャリアで最も思い出深いレースはやはり世界大会で、北京五輪と、同じ地で開催された15年の世界選手権を挙げた。

「一番印象に残っているのは北京五輪で、私の原点。そして、数年走ってきて、2015年の世界選手権も同じ北京。積み重ねてきた練習も含めて、予選は世界と戦えた(世界大会日本人最高の11秒23で3着通過)。目指してきた走りができたレース。そこも印象に残っている」

日本選手権は11年~16年に6年連続で100m、200m2冠を獲得するなど、両種目ともに優勝回数は8回。これはいずれも史上最多だ。

記録面でも、100mは08年に当時日本タイの11秒36をマークしたのを皮切りに、11秒21(10年)まで短縮。200mは09年に23秒14を出した後、16年の22秒88が現在も日本記録として残る。日本人女子で11秒3を切った選手、23秒を切った選手はいずれも福島ただ1人だ。

絶頂時には鮮やかなスタートダッシュから他を圧倒し、フィニッシュまで軸のまったくぶれない美しいフォームで走り切るレースが印象的だった。世界に目を向け、世界に少しでも近くづくために、常に自分に厳しい姿勢を持ち続けてきた。ここ数年はケガが相次ぎ、本来の走りを見せることができなくなっていたが、それでもスタートラインに立った福島の姿は輝いていた。

ただ、目標にしてきた東京五輪出場がかなわなかったこと。加えて「ケガのリスクがすごく多くて、目指しているところに対して『やりたい練習』よりも、『やれる練習』を選択したというところが正直なところ」と、目標と自身の現在地とのギャップが、引退へと気持ちが向かうきっかけとなった。

最終的には、9月の全日本実業団対抗選手権を終えて決断した。その前に、「もちろん最後にするという可能性はあった」そうだが、「最後、全日本実業団というものに対して、しっかり練習を積んでいきたということが私の中であった。引退を決めたらさみしいという気持ちがあふれてしまって練習にならない。勝負に徹したいと思った」。最後の最後まで自分らしさを貫いた競技人生だった。

自身のキャリアを振り返ると、「十分に『やり切ったか?』と言われればわからないが、私としてはやり切った、がんばれるところはがんばってきたかなという気持ちがある。達成感はそこまでないが、解放感が少しある」と言う。そして、支えてくれた周囲への感謝の言葉を続けた。

「小学校の頃から夢だった五輪に出場することができ、たくさんの方々のお陰でいろんなことを経験することができた。それは私の財産です。ここ数年はすごく苦しいシーズンがあった。でも、環境を変えて、東京を目指してさまざまな挑戦をさせてもらえた。コーチ、トレーナーさん含めて、私の挑戦を支えてくれたことが、大きな原動力。続けるために環境を変えたり、続けるために新しいことに挑戦したりと、何とかして速く走るためにがんばってこられた。目標が達成されるまでは、あきらめる気持ちがなかったので、ずっと続けてこられたと思う」

同日に、セイコーホールディングス株式会社代表取締役会長兼グループCEO兼グループCCOの服部真二氏から「セイコースマイルアンバサダー(スポーツ担当)」に任命された。これからは、同社が全国展開を予定している「セイコーわくわくスポーツ教室」で陸上教室の講師として、子供たちに走ることの楽しさを伝えていく。

服部氏から「これからは歯を食いしばらず、笑って走って、子供たちを明るくしてほしい」と言われると、「笑って走っていいなんて、現役中は一切なかった。走ることの楽しさ、喜びを伝えていければいいなと思います」と笑顔で語った。

また、福島に続く後輩たちに、「私自身が経験してきた、体験してきた感覚だったりプロセスを、たくさんの選手の伝えていけるような機会があれば、挑戦していきたい」と言う。

「長く陸上競技をやらせてもらったが、楽しいことももちろんあるし、苦しいと思う瞬間もあると思う。でも、続けてないとわからないものがある。とにかくあきらめないでいろんなことに挑戦したり、工夫したりを続けてほしい。今後、たくさんの選手を応援したいし、がんばってほしいという気持ちでいっぱいです」

日本スプリントの女王は笑顔で、次の目標に向けて新たなスタートを切った。

◎プロフィール
1988年6月27日生まれ、33歳。北海道・糠内中→帯広南商高→北海道ハイテクAC→セイコー
●自己ベスト
100m 11秒21(2010年)=日本記録
200m 22秒89(2016年)=日本記録
●日本記録樹立
100m 11秒36(08年/タイ)→11秒28(09年)→11秒24(同)→11秒21(10年)
200m 23秒14(09年)→23秒00(同)→22秒89(10年)→22秒88(16年)
●国際大会成績
05年 世界ユース100m準決・200m準決
06年 世界ジュニア100m準決
08年 五輪100m1次予選
09年 世界選手権100m2次予選・200m予選、アジア選手権100m①
10年 アジア大会100m①・200m①
11年 世界選手権100m準決勝・200m準決勝、アジア選手権200m①
12年 五輪100m予選・200m予選、世界室内60m準決
13年 世界選手権200m予選、アジア選手権100m②・200m④
14年 アジア大会100m②・200m③
15年 世界選手権100m準決勝・200m予選、アジア選手権100m①
16年 五輪100m欠場・200m予選
18年 アジア大会100m予選・200m棄権
19年 アジア選手権100m準決勝

 

福島千里 引退特設サイト

【 福島選手感動をありがとう 】 福島千里選手 現役引退スペシャルムービー」

笑顔で現役引退を発表した福島千里(セイコー提供)   遠かった日本女子短距離の「世界」との距離を、一気に縮めた偉大なスプリンター、福島千里(セイコー)が現役引退を決断した。 1月29日、オンラインで開かれた「セイコースマイルアンバサダー(スポーツ担当)」就任会見でスパイクを脱ぐことを発表した福島は、「小学校4年から陸上を始めて23年。これまで支えてくださった方々、両親をはじめ名前を上げればきりがないですが、関わってくれた方々に感謝の気持ちでいっぱい」と率直な思いを語った。 福島が成し遂げてきた偉業は、枚挙にいとまがない。 五輪には2008年北京大会で日本女子56年ぶり出場を果たすと、12年ロンドン、16年リオと3大会連続で代表に。世界選手権は09年ベルリンから4大会連続で出場し、11年テグでは100m、200mともに準決勝進出を果たした。 世界を目指して走り続けた福島にとっても、長いキャリアで最も思い出深いレースはやはり世界大会で、北京五輪と、同じ地で開催された15年の世界選手権を挙げた。 「一番印象に残っているのは北京五輪で、私の原点。そして、数年走ってきて、2015年の世界選手権も同じ北京。積み重ねてきた練習も含めて、予選は世界と戦えた(世界大会日本人最高の11秒23で3着通過)。目指してきた走りができたレース。そこも印象に残っている」 日本選手権は11年~16年に6年連続で100m、200m2冠を獲得するなど、両種目ともに優勝回数は8回。これはいずれも史上最多だ。 記録面でも、100mは08年に当時日本タイの11秒36をマークしたのを皮切りに、11秒21(10年)まで短縮。200mは09年に23秒14を出した後、16年の22秒88が現在も日本記録として残る。日本人女子で11秒3を切った選手、23秒を切った選手はいずれも福島ただ1人だ。 絶頂時には鮮やかなスタートダッシュから他を圧倒し、フィニッシュまで軸のまったくぶれない美しいフォームで走り切るレースが印象的だった。世界に目を向け、世界に少しでも近くづくために、常に自分に厳しい姿勢を持ち続けてきた。ここ数年はケガが相次ぎ、本来の走りを見せることができなくなっていたが、それでもスタートラインに立った福島の姿は輝いていた。 ただ、目標にしてきた東京五輪出場がかなわなかったこと。加えて「ケガのリスクがすごく多くて、目指しているところに対して『やりたい練習』よりも、『やれる練習』を選択したというところが正直なところ」と、目標と自身の現在地とのギャップが、引退へと気持ちが向かうきっかけとなった。 最終的には、9月の全日本実業団対抗選手権を終えて決断した。その前に、「もちろん最後にするという可能性はあった」そうだが、「最後、全日本実業団というものに対して、しっかり練習を積んでいきたということが私の中であった。引退を決めたらさみしいという気持ちがあふれてしまって練習にならない。勝負に徹したいと思った」。最後の最後まで自分らしさを貫いた競技人生だった。 自身のキャリアを振り返ると、「十分に『やり切ったか?』と言われればわからないが、私としてはやり切った、がんばれるところはがんばってきたかなという気持ちがある。達成感はそこまでないが、解放感が少しある」と言う。そして、支えてくれた周囲への感謝の言葉を続けた。 「小学校の頃から夢だった五輪に出場することができ、たくさんの方々のお陰でいろんなことを経験することができた。それは私の財産です。ここ数年はすごく苦しいシーズンがあった。でも、環境を変えて、東京を目指してさまざまな挑戦をさせてもらえた。コーチ、トレーナーさん含めて、私の挑戦を支えてくれたことが、大きな原動力。続けるために環境を変えたり、続けるために新しいことに挑戦したりと、何とかして速く走るためにがんばってこられた。目標が達成されるまでは、あきらめる気持ちがなかったので、ずっと続けてこられたと思う」 同日に、セイコーホールディングス株式会社代表取締役会長兼グループCEO兼グループCCOの服部真二氏から「セイコースマイルアンバサダー(スポーツ担当)」に任命された。これからは、同社が全国展開を予定している「セイコーわくわくスポーツ教室」で陸上教室の講師として、子供たちに走ることの楽しさを伝えていく。 服部氏から「これからは歯を食いしばらず、笑って走って、子供たちを明るくしてほしい」と言われると、「笑って走っていいなんて、現役中は一切なかった。走ることの楽しさ、喜びを伝えていければいいなと思います」と笑顔で語った。 また、福島に続く後輩たちに、「私自身が経験してきた、体験してきた感覚だったりプロセスを、たくさんの選手の伝えていけるような機会があれば、挑戦していきたい」と言う。 「長く陸上競技をやらせてもらったが、楽しいことももちろんあるし、苦しいと思う瞬間もあると思う。でも、続けてないとわからないものがある。とにかくあきらめないでいろんなことに挑戦したり、工夫したりを続けてほしい。今後、たくさんの選手を応援したいし、がんばってほしいという気持ちでいっぱいです」 日本スプリントの女王は笑顔で、次の目標に向けて新たなスタートを切った。 ◎プロフィール 1988年6月27日生まれ、33歳。北海道・糠内中→帯広南商高→北海道ハイテクAC→セイコー ●自己ベスト 100m 11秒21(2010年)=日本記録 200m 22秒89(2016年)=日本記録 ●日本記録樹立 100m 11秒36(08年/タイ)→11秒28(09年)→11秒24(同)→11秒21(10年) 200m 23秒14(09年)→23秒00(同)→22秒89(10年)→22秒88(16年) ●国際大会成績 05年 世界ユース100m準決・200m準決 06年 世界ジュニア100m準決 08年 五輪100m1次予選 09年 世界選手権100m2次予選・200m予選、アジア選手権100m① 10年 アジア大会100m①・200m① 11年 世界選手権100m準決勝・200m準決勝、アジア選手権200m① 12年 五輪100m予選・200m予選、世界室内60m準決 13年 世界選手権200m予選、アジア選手権100m②・200m④ 14年 アジア大会100m②・200m③ 15年 世界選手権100m準決勝・200m予選、アジア選手権100m① 16年 五輪100m欠場・200m予選 18年 アジア大会100m予選・200m棄権 19年 アジア選手権100m準決勝   福島千里 引退特設サイト 【 福島選手感動をありがとう 】 福島千里選手 現役引退スペシャルムービー」

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

         

Latest articles 最新の記事

2026.03.25

宮崎の地で高校トップ選手約270人が4泊5日の合宿! 初日はあいにくの雨にも「このメンバーで切磋琢磨したい」

2025年度の日本陸連U-19強化研修合宿・全国高体連陸上競技専門部強化合宿が3月25日、宮崎・ひなた宮崎県総合運動公園を中心に4泊5日の日程で始まった。 合宿には約270人の選手と約180人の引率指導者が参加。開講式で […]

NEWS アジア大会マラソン代表に吉田祐也、山下一貴、佐藤早也伽、矢田みくにが内定! 強力布陣でアジア勢迎える

2026.03.25

アジア大会マラソン代表に吉田祐也、山下一貴、佐藤早也伽、矢田みくにが内定! 強力布陣でアジア勢迎える

日本陸連は3月25日、名古屋アジア大会のマラソン代表内定選手を発表し、男子は吉田祐也(GMOインターネットグループ)と山下一貴(三菱重工)、女子は佐藤早也伽(積水化学)と矢田みくに(エディオン)が内定した。 アジア大会の […]

NEWS 柏原竜二氏が3月末で富士通を退社 「少し、休みながらマイペースに頑張ります」

2026.03.25

柏原竜二氏が3月末で富士通を退社 「少し、休みながらマイペースに頑張ります」

箱根駅伝で09年から山上りの5区で4年連続区間賞を獲得するなど、長距離で活躍した柏原竜二氏が、3月24日に自身のSNSを更新し、3月31日をもって所属していた富士通を退社すると発表した。 柏原氏は1989年生まれの36歳 […]

NEWS ハーフマラソンのエントリー発表! 1部は中大・佐藤大介、順大・玉目陸らが登録 2部は國學院大・野田顕臣が出場予定/関東IC

2026.03.24

ハーフマラソンのエントリー発表! 1部は中大・佐藤大介、順大・玉目陸らが登録 2部は國學院大・野田顕臣が出場予定/関東IC

関東学連は3月24日、第105回関東インカレの男子ハーフマラソンのエントリー選手を発表した。 関東インカレのハーフマラソンは暑熱対策の一環として、今大会から4月に実施されている焼津みなとマラソン・大学対抗ペアマラソンとの […]

NEWS 今井正人氏がトヨタ自動車九州のヘッドコーチに就任

2026.03.24

今井正人氏がトヨタ自動車九州のヘッドコーチに就任

北京世界選手権マラソン代表で、現在は順大の長距離コーチを務める今井正人氏が、4月1日付でトヨタ自動車九州のヘッドコーチに就任することがわかった。 今井氏は1984年4月生まれの41歳。福島・原町高ではインターハイ5000 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年4月号 (3月13日発売)

2026年4月号 (3月13日発売)

別冊付録 記録年鑑 2025

東京マラソン、大阪マラソン、名古屋ウィメンズマラソン

page top