2025.12.19
新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。
全日本では4人抜きの力走
3年ぶりに11月の全日本大学駅伝に戻ってきた中央学大は、関東勢最下位の15位と苦しんだ。
2週間前にトップ通過を果たした箱根駅伝予選会を戦っており、調整面で難しさがあった点は否めない。だが、掲げた目標は8位以内のシード権獲得。同じ箱根予選会組の順大がそれをやってのけたのだから、「仕方ない」と簡単に済ませるわけにはいかないだろう。
川崎勇二監督も「ピークを予選会に100%持っていきましたので、厳しいことは重々わかっていました。それでも、もう少し戦えるとは思っていたので残念ですね」と結果を受け止めた。
厳しい現実を突きつけられた伊勢路で光明があったとすれば、各校の主力級が集まる11.9kmの3区を区間10位でまとめた市川大世(3年)だ。
「監督とも相談して、34分05秒が目標でした。結果として34分02秒で走れましたが、区間順位はもう少し上を目指していたので、そういう意味では他大学とはまだ力の差があると感じました」。市川は決して満足していないものの、エース・近田陽路(4年)から16位でタスキを受けてから4人を抜き、12位まで順位を押し上げた。
市川にとっても、好きな駅伝で「楽しく走れた」のは収穫だった。「もらった順位が思ったよりも下位で、レース的には厳しいと思いましたが、沿道の応援もすごくよく見えました。1人だったので、自分のリズムで気持ち良く走れました」
山梨・田富中で、陸上は「なんとなく始めた」。長距離部員が少なかったため、駅伝はサッカー部や野球部から助っ人を借りてタスキをつなぐしかなかったが、「仲間と協力し合って走る駅伝が本当に楽しかったです」と振り返る。
巨摩高に進むと、「一気に記録も伸び始め、自分のレベルが上がっていくにつれて、陸上の楽しさも感じていきました」。インターハイや全国高校駅伝など、大舞台に立つ機会はなかった。だが、やはり思い出の残っているのは「3年間頑張り合った仲間と駅伝でタスキをつなげた」こと。「人間としてもすごく成長できた3年間でした」と振り返る。
2年前の春に中央学大に進んだ当時、川崎監督によれば「1年生の中でも真ん中より下ぐらいのレベル」。同期では5000mで14分05秒50を持つ稲見峻、14分15秒80の前原颯斗が抜けており、市川は「2人に追いつけるように頑張って行こう」と、大学生活をスタートさせた。
ただ、入学前から抱えていたケガを含め、1年目は故障が多かった。「夏合宿あたりからチームに合流し始めて、そこから箱根予選会と本戦でメンバー入りはできました。しかし、走ることはなく、またケガをしてしまうという感じで、故障を何回も繰り返していました」。走れず、苦しい時期が続いていた。
全日本では4人抜きの力走
3年ぶりに11月の全日本大学駅伝に戻ってきた中央学大は、関東勢最下位の15位と苦しんだ。 2週間前にトップ通過を果たした箱根駅伝予選会を戦っており、調整面で難しさがあった点は否めない。だが、掲げた目標は8位以内のシード権獲得。同じ箱根予選会組の順大がそれをやってのけたのだから、「仕方ない」と簡単に済ませるわけにはいかないだろう。 川崎勇二監督も「ピークを予選会に100%持っていきましたので、厳しいことは重々わかっていました。それでも、もう少し戦えるとは思っていたので残念ですね」と結果を受け止めた。 厳しい現実を突きつけられた伊勢路で光明があったとすれば、各校の主力級が集まる11.9kmの3区を区間10位でまとめた市川大世(3年)だ。 「監督とも相談して、34分05秒が目標でした。結果として34分02秒で走れましたが、区間順位はもう少し上を目指していたので、そういう意味では他大学とはまだ力の差があると感じました」。市川は決して満足していないものの、エース・近田陽路(4年)から16位でタスキを受けてから4人を抜き、12位まで順位を押し上げた。 市川にとっても、好きな駅伝で「楽しく走れた」のは収穫だった。「もらった順位が思ったよりも下位で、レース的には厳しいと思いましたが、沿道の応援もすごくよく見えました。1人だったので、自分のリズムで気持ち良く走れました」 山梨・田富中で、陸上は「なんとなく始めた」。長距離部員が少なかったため、駅伝はサッカー部や野球部から助っ人を借りてタスキをつなぐしかなかったが、「仲間と協力し合って走る駅伝が本当に楽しかったです」と振り返る。 巨摩高に進むと、「一気に記録も伸び始め、自分のレベルが上がっていくにつれて、陸上の楽しさも感じていきました」。インターハイや全国高校駅伝など、大舞台に立つ機会はなかった。だが、やはり思い出の残っているのは「3年間頑張り合った仲間と駅伝でタスキをつなげた」こと。「人間としてもすごく成長できた3年間でした」と振り返る。 2年前の春に中央学大に進んだ当時、川崎監督によれば「1年生の中でも真ん中より下ぐらいのレベル」。同期では5000mで14分05秒50を持つ稲見峻、14分15秒80の前原颯斗が抜けており、市川は「2人に追いつけるように頑張って行こう」と、大学生活をスタートさせた。 ただ、入学前から抱えていたケガを含め、1年目は故障が多かった。「夏合宿あたりからチームに合流し始めて、そこから箱根予選会と本戦でメンバー入りはできました。しかし、走ることはなく、またケガをしてしまうという感じで、故障を何回も繰り返していました」。走れず、苦しい時期が続いていた。前回の悔しさ糧に自己ベスト連発
チーム内で存在感を高めたのは、2年目の駅伝シーズンに入ってからだった。箱根予選会でチーム4番手を占めると、11月にはそれまで30分台だった10000mで自己記録を一気に28分51秒49まで短縮。さらに翌週は上尾ハーフマラソンを1時間2分32秒で走破する。 そして、ついに前回の箱根で出走のチャンスをつかみ取る。しかも4人の4年生に囲まれるかたちで往路の3区に抜擢。「自信がなかったわけではないのですが、箱根駅伝の雰囲気や周りの選手に圧倒されてしまいました。全然自分の力を出し切れなかったです」と区間18位で、順位を7位から11位に落とすほろ苦いデビューとなった。 「箱根駅伝でリベンジしたい」。その一心で始動した2025年は、「がむしゃらに走っていたジョグを考えるようになったことと、食事と補強は見直しました」と今まで以上に競技に向き合ってきた。その成果が2月の日本学生ハーフでの1時間1分43秒や、3月の5000mでの13分52秒84、4月の10000mでの28分38秒31といった自己ベスト連発につながった。 5月の全日本選考会でも最終4組で奮闘し、10月の箱根予選会は1時間2分16秒のチーム2番手(個人18位)でフィニッシュ。全日本は3年ぶりの本大会行き、予選会は18年ぶりとなるトップ通過に大きく貢献し、主将の近田に次ぐ存在まで成長を遂げた。 [caption id="attachment_193653" align="alignnone" width="800"]
箱根予選会ではチーム内2位でフィニッシュし、トップ通過に貢献[/caption]
「今年は1年通して故障なく練習ができているので、どのレースも自信を持ってスタートラインに立てています」と語り、川崎監督も「キャプテンの近田と一緒でよく練習します。結局は練習している子が長い距離では結果を残せるんです」と絶大な信頼を寄せる。
チームが7年ぶりのシード権獲得を目標に掲げる来年の箱根路では、前回辛酸をなめた3区を希望している。
「1時間2分は切っていきたいです。シード権を取るには、近田さんと自分の前半でいかにリードできるかがカギになってきます。最低でも区間ひとケタ順位、できれば区間5位以内を目指して積極的な走りをしていきたいです」
市川のモットーでもある「駅伝で楽しく走る」。これを箱根路でも表現できれば、結果は自ずとついてくる。
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