2025.08.03
◇富士北麓ワールドトライアル2025(8月3日/山梨・富士北麓公園「富士山の銘水スタジアム」)
富士北麓ワールドトライアルが行われ、男子100m予選2組で桐生祥秀(日本生命)が自身2度目の9秒台となる9秒99(+1.3)をマークした。東京世界選手権の参加標準記録(10秒00)突破を果たし、代表入りに大きく前進した。
桐生にとっては、8年ぶりの9秒台。だが、当時と今とで、その価値の違いは出した本人が一番理解している。2017年の日本インカレで出した9秒98は、「日本人初の9秒台」という偉業として刻まれている。
だが、今回の9秒台については自ら「(東京世界選手権の)参加標準記録を突破したという意味でしかない」ときっぱり。厚底・高反発シューズの開発が進んだ影響もあり、記録水準が世界的にアップした今は、「もう、誰が9秒台を出すかというフェーズではない」と語る。
そこには、7月26日の広島インターハイで、自身の高校記録10秒01を12年ぶりに塗り替える10秒00を叩き出した清水空跳(星稜2石川)への“思い”が垣間見える。
「記録は誰かに破られるもの。もう破られたのかという驚きはあったけど、タイム以上の価値を僕も、清水君もどんどん出していければいいと思います」
日本における「9秒台」の価値とは何か。桐生はこう続ける。
「僕が最初に9秒台を出したのを小学生の時に見ました、ということが増えてきました。今日、9秒台を生で観た子供たちやファンの方々はその“熱”を感じて、記録以上に記憶に残ると思う。清水君のインターハイの記録も同じで、ファンが感じた気持ちというのはタイムで比較できないぐらいに残ると思います」
だからこそ、清水には「誰かと比べるのではなく、桐生祥秀ができることと、清水君ができることは違ってくるので、お互いに切磋琢磨しながらやっていきたいなと思います」と言葉を送った。
桐生が京都・洛南高3年だった4月末の織田記念で10秒01を叩き出したあと、自身の知らないところでその走りをさまざま人たちに評されたことが、「嫌だった」という経験がある。そのため、「ほとんどしゃべったことがない」清水に対して、記録樹立直後に自信のSNSで「清水君おめでとう! 高校記録が破られました」と祝福したものの、メディアにコメントを出すことはしていない。
「今はSNSがあるから、清水君もたぶんいっぱい来ていると思うんですよ。そんなことにとらわれず、世界には9秒台はたくさんいるので、そういうところを見据えていってほしい。僕が感じていたことと、今の清水君ではまた違うと思いますが」
インターハイの清水の快走で、桐生をはじめシニア勢が刺激を受けたことは間違いないだろう。今度は、桐生が清水に、さらには日本中のスプリンターたちに大きなインパクトを、そして子供たちに夢を与えた。ここから日本のスプリントは、世界と“戦う”フェーズへと入っていくに違いない。
【動画】8年ぶり9秒台!男子100m桐生祥秀のレースをチェック!
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