2025.04.17
今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。
これまで数々のスーパースター、名勝負が生まれた世界陸上の各大会の様子を紹介する『世界陸上プレイバック』。1993年にシュツットガルト(ドイツ)で行われた第4回大会を振り返る。
男子マイルリレーで米国が異次元の世界新
前回大会までは4年に1度の開催だったが今大会からオリンピック前後の奇数年での2年に1度の開催に変更された。開催地はドイツのシュツットガルト。この大会から女子三段跳が追加され、44種目(男子24種目・女子20種目)が実施された。
驚異的な世界新記録が誕生したのは男子4×400mリレー。米国が現在も世界記録として残る2分54秒29で2位以下に5秒以上の差をつける圧勝劇だった。
米国には当時の400m世界歴代1位から3位の、ブッチ・レイノルズ(43秒29)、クインシー・ワッツ(43秒50)、マイケル・ジョンソン(43秒65)がおり、前年のバルセロナ五輪では1走のアンドリュー・ヴァルモンを加えたメンバーで、当時の世界記録となる2分55秒74で金メダルを獲得していた。
今大会は1走にヴァルモン、2走にワッツ、3走にレイノルズ、4走にジョンソンと豪華メンバーで臨んだ。ジョンソンは今大会の400mを制している。
1走のヴァルモンが先頭でバトンを渡すと、2走のワッツからは独走態勢。オープンレーンに入った時点で、既に大差がついていた。
後続も何とか追い上げようとするが、それを尻目に米国はリードを広げていく。ワッツが43秒59、レイノルズが43秒23という圧倒的なスプリットタイムを刻んだ。
4走のジョンソンは42秒94で走破。2位以下が激しく争うなか、米国だけが異次元のレースを展開した。
昨年のパリ五輪でパフォーマンス世界歴代2位の2分54秒43で金メダルを獲得した米国。今年の東京大会で世界新記録が出るかどうかに注目だ。
米国は4×100mリレーでも準決勝で37秒40の世界タイ記録をマーク。決勝でも37秒48をマークして、男子リレー種目で2冠を達成した。
男子110mハードルではコリン・ジャクソン(英国)が12秒91で金メダルを獲得。従来の世界記録を0.01秒更新した。
当時12秒97の自己記録を持っていたジャクソンは好スタートで序盤からリードを奪うと、中盤から独走。他を寄せつけない強さで世界の頂点に立った。
ジャクソンは翌年に室内60mハードルで7秒30の世界新記録を樹立。93年8月から95年2月までの間に44連勝を達成するなど、この大会を機に黄金時代を築いた。
女子でハイレベルなレースが展開されたのが400mハードル。52秒74で金メダルのサリー・ガネル(英国)と52秒79で銀メダルのサンドラ・ファーマー・パトリック(米国)が従来の世界記録(52秒94)を上回った。
バルセロナ五輪ではガネルが金メダル、パトリックが銀メダルを獲得。今回も二人の一騎打ちとなった。前半でリードを奪ったのはパトリック。後半に入ってガネルが追い上げ、ホームストレートでほぼ並走状態となった。
10台目を跳んだ時点ではわずかにパトリックがリードしていたが、最後の40mでガネルが力を振り絞る。最後まで勝負の行方がわからない接戦となり、わずかにガネルが先にフィニッシュ。息詰まる接戦を制し、0.05秒差で銀メダルに終わった前回大会のリベンジを果たした。
今大会から新設された女子三段跳ではアンナ・ビリュコワ(ロシア)が15m09の世界新記録で制覇。女子選手として初めて15m台を記録した。
大会前の自己記録は14m68と目立つものではなく、同じロシアで14m97の世界記録を持つヨランダ・チェンが本命視されていた。
しかし、チェンが伸び悩むのに対して、ビリュコワは1回目に14m62でトップ立つと、2回目に14m77と記録を伸ばす。そして、5回目に15m09の大跳躍で金メダルを手中に収めた。
日本勢は女子マラソン・浅利が金
日本からは男子31選手、女子11選手が出場。金メダル1つ、銅メダル1つを含む3人が入賞している。女子マラソンでは浅利純子(ダイハツ)が日本の女子選手としては初の金メダリストになった。
女子マラソンには浅利、安部友恵(旭化成)、松野明美(ニコニコドー)が出場。3人は25kmまで先頭集団でレースを進めていたが、松野がまずは脱落する。
32km付近でマヌエラ・マシャド(ポルトガル)が仕掛け、2位が浅利、3位が安部という展開に。単独走でも粘り強く前を追いかけた浅利は36kmの下り坂でマシャドを逆転した。
その後は金メダルに向けて独走態勢を築く。安部も2位に落ちたマシャドを懸命に追いかけた。
最後まで力強い走りを見せた浅利は2時間30分03秒で優勝。マシャドが2時間30分54秒で続き、その7秒後に安部が3着でフィニッシュした。松野は2時間38分04秒で11位。同一種目で日本勢が複数メダルを獲得するのはこれが初の快挙となった。

女子マラソンで金メダルに輝いた浅利純子
男子マラソンでは打越忠夫(雪印)が後半に順位を上げて5位入賞。この種目では2大会連続で日本から入賞者を生み出した。
ロード種目の健闘が目立った一方で、トラック&フィールドでは入賞に届かず。男子10000mの福島正(富士通)と女子10000mの吉田直美(リクルート)の15位が最高成績だった。
男子マイルリレーで米国が異次元の世界新
前回大会までは4年に1度の開催だったが今大会からオリンピック前後の奇数年での2年に1度の開催に変更された。開催地はドイツのシュツットガルト。この大会から女子三段跳が追加され、44種目(男子24種目・女子20種目)が実施された。 驚異的な世界新記録が誕生したのは男子4×400mリレー。米国が現在も世界記録として残る2分54秒29で2位以下に5秒以上の差をつける圧勝劇だった。 米国には当時の400m世界歴代1位から3位の、ブッチ・レイノルズ(43秒29)、クインシー・ワッツ(43秒50)、マイケル・ジョンソン(43秒65)がおり、前年のバルセロナ五輪では1走のアンドリュー・ヴァルモンを加えたメンバーで、当時の世界記録となる2分55秒74で金メダルを獲得していた。 今大会は1走にヴァルモン、2走にワッツ、3走にレイノルズ、4走にジョンソンと豪華メンバーで臨んだ。ジョンソンは今大会の400mを制している。 1走のヴァルモンが先頭でバトンを渡すと、2走のワッツからは独走態勢。オープンレーンに入った時点で、既に大差がついていた。 後続も何とか追い上げようとするが、それを尻目に米国はリードを広げていく。ワッツが43秒59、レイノルズが43秒23という圧倒的なスプリットタイムを刻んだ。 4走のジョンソンは42秒94で走破。2位以下が激しく争うなか、米国だけが異次元のレースを展開した。 昨年のパリ五輪でパフォーマンス世界歴代2位の2分54秒43で金メダルを獲得した米国。今年の東京大会で世界新記録が出るかどうかに注目だ。 米国は4×100mリレーでも準決勝で37秒40の世界タイ記録をマーク。決勝でも37秒48をマークして、男子リレー種目で2冠を達成した。 男子110mハードルではコリン・ジャクソン(英国)が12秒91で金メダルを獲得。従来の世界記録を0.01秒更新した。 当時12秒97の自己記録を持っていたジャクソンは好スタートで序盤からリードを奪うと、中盤から独走。他を寄せつけない強さで世界の頂点に立った。 ジャクソンは翌年に室内60mハードルで7秒30の世界新記録を樹立。93年8月から95年2月までの間に44連勝を達成するなど、この大会を機に黄金時代を築いた。 女子でハイレベルなレースが展開されたのが400mハードル。52秒74で金メダルのサリー・ガネル(英国)と52秒79で銀メダルのサンドラ・ファーマー・パトリック(米国)が従来の世界記録(52秒94)を上回った。 バルセロナ五輪ではガネルが金メダル、パトリックが銀メダルを獲得。今回も二人の一騎打ちとなった。前半でリードを奪ったのはパトリック。後半に入ってガネルが追い上げ、ホームストレートでほぼ並走状態となった。 10台目を跳んだ時点ではわずかにパトリックがリードしていたが、最後の40mでガネルが力を振り絞る。最後まで勝負の行方がわからない接戦となり、わずかにガネルが先にフィニッシュ。息詰まる接戦を制し、0.05秒差で銀メダルに終わった前回大会のリベンジを果たした。 今大会から新設された女子三段跳ではアンナ・ビリュコワ(ロシア)が15m09の世界新記録で制覇。女子選手として初めて15m台を記録した。 大会前の自己記録は14m68と目立つものではなく、同じロシアで14m97の世界記録を持つヨランダ・チェンが本命視されていた。 しかし、チェンが伸び悩むのに対して、ビリュコワは1回目に14m62でトップ立つと、2回目に14m77と記録を伸ばす。そして、5回目に15m09の大跳躍で金メダルを手中に収めた。日本勢は女子マラソン・浅利が金
日本からは男子31選手、女子11選手が出場。金メダル1つ、銅メダル1つを含む3人が入賞している。女子マラソンでは浅利純子(ダイハツ)が日本の女子選手としては初の金メダリストになった。 女子マラソンには浅利、安部友恵(旭化成)、松野明美(ニコニコドー)が出場。3人は25kmまで先頭集団でレースを進めていたが、松野がまずは脱落する。 32km付近でマヌエラ・マシャド(ポルトガル)が仕掛け、2位が浅利、3位が安部という展開に。単独走でも粘り強く前を追いかけた浅利は36kmの下り坂でマシャドを逆転した。 その後は金メダルに向けて独走態勢を築く。安部も2位に落ちたマシャドを懸命に追いかけた。 最後まで力強い走りを見せた浅利は2時間30分03秒で優勝。マシャドが2時間30分54秒で続き、その7秒後に安部が3着でフィニッシュした。松野は2時間38分04秒で11位。同一種目で日本勢が複数メダルを獲得するのはこれが初の快挙となった。 [caption id="attachment_166929" align="alignnone" width="800"]
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